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次世代「Windows Admin Center」は“ゲートウェイがモダン化”、その進化の中身は?Microsoft Azure最新機能フォローアップ(212)

Microsoftは、ゲートウェイをモダン化した「Windows Admin Center(WAC) バージョン2311」のパブリックプレビューを開始しました。WAC バージョン2311は2023年12月12日に一般提供が開始されたばかりですが、今回の“WAC バージョン2311 パブリックプレビュー”とはどこが違うのでしょうか。

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Microsoft Azure最新機能フォローアップ

ゲートウェイのプラットフォームをモダン化した新たなパブリックプレビュー

 前回紹介したように、Microsoftは2023年12月12日(米国時間、以下同)に「Windows Admin Center(WAC) バージョン2311」の一般提供を開始しました。

 今回パブリックプレビューとして提供が開始されたWACは、また“別のWAC バージョン2311”になります。これは、WAC バージョン2311正式版が提供される1カ月前の2023年11月16日にリリースされた「WAC バージョン2311 パブリックプレビュー」とも異なります。

 新たに提供開始された“WAC バージョン2311 パブリックプレビュー”は、WAC バージョン2311正式版の全機能を備えていますが、ゲートウェイがこれまでの「.NET Framework 4.6.2」(「Windows 10」の初期バージョンと「Windows Server 2016」に同梱《どうこん》されたバージョン)から、「.NET」(旧称、.NET Core)にアップグレードされています。

 WAC バージョン2311正式版は、フロントエンドUI(ユーザーインタフェース)と拡張機能が「Angular」(WAC バージョン2311は「Angular 15」)上に構築されており、バックエンドである.NET Framework 4.6.2(「ASP.NET」および「Project Katana」)ベースのゲートウェイと対話します。

 新しい“WAC バージョン2311 パブリックプレビュー”は、ゲートウェイが.NETにアップグレードされ、「ASP.NET Core」アプリケーションで推奨および既定のWebサーバ「ASP.NET Core Kestrel Webサーバ」上に構築されており、「HTTP/2(Hypertext Transfer Protocol version 2)」をサポートします。

 この変更は、応答性の向上や将来的なWACのクロスプラットフォームサポートに向けたものです。また、WAC バージョン2311正式版が全てのタスクを1つのプロセスで実行するのに対して、モダン化されたゲートウェイはマイクロサービスアーキテクチャを活用し、柔軟性、拡張性、回復性が向上しています。

 “WAC バージョン2311 パブリックプレビュー”は、WAC バージョン2311正式版と同じOS上で共存できるため、既存の運用環境を壊すことなく、パブリックプレビューを評価できます(画面1)。

画面1
画面1 WAC バージョン2311正式版(画面奥)と“WAC バージョン2311 パブリックプレビュー”(画面手前)は共存可能

改善されたWACのインストール

 WAC バージョン2311正式版は、Windows Server 2016以降には別のコンピュータから接続可能な「ゲートウェイモード」として、Windows 10や「Windows 11」にはローカルからの接続専用の「デスクトップモード」としてインストール可能です。

 一方、“WAC バージョン2311 パブリックプレビュー”は、「高速リモートセットアップ」「高速ローカルセットアップ」「カスタムセットアップ」を選択可能になりました。そのため、Windows 10/11にインストールした場合でも、リモートからWACに接続して管理できるように構成(従来のゲートウェイモード)できます(画面2)。

画面2
画面2 Windows 11に“WAC バージョン2311 パブリックプレビュー”をインストールする場合、Windows Serverの「ゲートウェイモード」と 同様の動作をするようにインストールできる

 また、「カスタムセットアップ」を選択すると、ログイン認証(HTMLフォームまたはWindows認証)、ネットワークアクセス(ローカルのみ、またはリモートアクセス許可)、ポート番号、証明書、FQDN(Fully Qualified Domain Name)、「WinRM(Windows Remote Management)」の信頼されたホスト、WinRM over HTTPS、自動更新、診断データのオプションを細かく指定できます。

 なお、筆者が“WAC バージョン2311 パブリックプレビュー”をダウンロードしたとき、ダウンロードされたファイル名はWindowsインストーラーパッケージ形式(MSI)の「PublicPreviewWindowsAdminCenterVersion2311.msi」でしたが、このパッケージを実行しても、有効なWindowsインストーラーパッケージではないというエラーが表示されました。このエラーは、ファイルの拡張子を「.msi」から「.exe」に変更することで回避できました(画面3)。

画面3
画面3 ダウンロードした「PublicPreviewWindowsAdminCenterVersion2311.msi」を実行してもインストールはエラーとなる。拡張子を「.exe」に変更することでエラーを回避可能

 現在は、ファイル名が「WindowsAdminCenterModernizedGWPublicPreview.exe」に変更されており、この問題は発生しません。“WAC バージョン2311 パブリックプレビュー”は、「Windows Admin Center(v2)Preview」としてインストールされます。アンインストールは、「プログラムのアンインストールまたは変更」(appwiz.cpl)から可能です。

WACの「設定」の変更

 従来のゲートウェイモードとデスクトップモードの区別がなくなった“WAC バージョン2311 パブリックプレビュー”の「設定」には、インストールモードに関係なく(従来のデスクトップモード相当の構成でも)、「アクセス」ブレードと「共有接続」ブレードが利用できるようになりました(画面4)。

画面4
画面4 Windows 11にインストールされたデスクトップモードのWAC バージョン2311正式版(画面奥)と、“WAC バージョン2311 パブリックプレビュー”(画面手前)の「設定」の違い

 また、「WAC バージョン2306」からWAC自身が備える「アプリ内自動更新」機能が削除されましたが、WAC バージョン2311正式版にはまだ「設定」の「更新」ブレードが残っています。“WAC バージョン2311 パブリックプレビュー”は「更新」ブレードが削除されました。

WAC バージョン2311正式版に関する補足、Azureログインエラーの解消について

 WAC バージョン2311正式版については前回紹介しましたが、1つ補足があります。WAC バージョン2306で「Azureアカウント」(「Microsoft Entra ID」アカウント)でサインインするように構成してあった場合、WAC バージョン2311正式版にアップグレードすると、「Azureログイン」がエラーになるという既知の問題があります(画面5)。

画面5
画面5 WAC バージョン2306からWAC バージョン2311正式版にアップグレードすると、Azureログインでエラーになる

 この問題は、認証を実行する方法がWAC バージョン2311正式版で変更されたことによる既知の影響です。エラー通知にある「SPAエラーのヘルプ」(以下のドキュメント)に従い、「Microsoft Entra管理センター」でWAC バージョン2311正式版のインストールに対応するアプリケーションの登録を構成することで、エラーを回避できます。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2024(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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