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何でスキル不足のエンジニアをアサインしたからって訴えられるんですか「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(112)(2/3 ページ)

顧客企業のプロジェクトのために下請け企業が用意したのは、プログラミングのいろはも知らないエンジニア。結局、契約期間途中で退場することになったが、責任は誰が取るべきなのか――。

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基本的なコマンドも知らないエンジニアに顧客もあきれ……

 下請け企業が「スキルが足りないとクレームを付けられたので、メンバーを引き上げた」が、「契約を解除したのは元請け企業の方だ」と主張している点が、私には少し不思議に思える。

 判決文にその辺りは詳しく書かれていないが、下請け企業が元請け企業に申し入れを行ったメールには「貴殿のメールの文面や電話のやりとりから、非常に失礼かと思われますので、御社にお世話になっている要員は5月末にて全員撤退させていただきます」といった言葉も見られる。

 恐らく両者の間にはかなり厳しい応酬があったと思われる。そしてその中で、下請け企業が「これは事実上の解除通知だ」と感じる言葉もあったのかもしれない。ただ、この点は判決で取り上げられることもなく、本記事の主要な論点ではないので、あくまで想像に留めておく。

 顧客企業のメンバーがクレームを入れたというAのスキルとはどのようなものだったのだろうか。判決文には以下の文言がある。

Aさんの現場でのパフォーマンスが著しく低く、プロジェクト推進の障害になっている。具体的には、「Git」や「Rails」(Ruby on Rails)のコマンドが分からず他メンバーにヘルプを求めることで、他メンバーの工数を浪費している。(中略)コマンドレベルから教える筋合いはない。

「まさかその質問をする!?」と、周りのメンバーは度肝を抜かれており、他のタスクを振るのが正直怖いです。

同じ単価で入っている別メンバーBさんとAさんでタスク分量を「6:4」で割り振りました。Bさんはその日中に終わっていますが、Aさんは翌日までかかっております。

 「GitやRailsのコマンド」について@ITの読者に説明の必要はないだろう。どちらも今どきのITエンジニアに求める技術としてはごく平易で、顧客企業が当然期待してもいいスキルである。

 上記のクレームを元請け企業経由で聞いた下請け企業は、Aのスキル向上に努めたようだ。実際、Aには多少のスキルアップはあったようだ。しかし顧客企業は納得せず、契約解除を元請け企業に申し出た。元請け企業は契約解除を避けるために努力していたが、そのさなかに下請け企業が撤退してしまったということのようだ。

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