スキルシート詐欺が起こるメカニズムとエンジニアが取れる対処法:NO MOREスキル詐称(1/4 ページ)
本当は持っていないスキルや経験を“盛って”しまうスキルシート詐欺。未経験や微経験エンジニアを襲う犯罪行為は、なぜなくならないのでしょうか。
複雑怪奇なIT“業界”を解説する本連載。これまで、IT業界にまん延する多重下請け構造と偽装請負、多重下請け構造が起こる仕組み、「案件ガチャ」が起こるメカニズム、SI業界のエンジニアが陥りがちな「3つの地獄」など、IT業界の理不尽な現実を取り上げてきました。
今回は、少し前に話題になった「SI業界のスキルシート詐欺」の実態と、詐欺が横行するメカニズムを解説します。
エンジニアになるためには、前科者にならなければならない……のか
人手不足だからと未経験者や微経験者をSI業界に引きずり込み、漏れなく経歴詐称者にするスキルシート詐欺事件が後を絶ちません。
ここでは未経験=「プログラミングスクール卒で、プロジェクト経験ゼロのエンジニア」、微経験=「運用やテスターなどの経験のみで、開発の経験が積めていないエンジニア」と定義します。スキルシート詐欺は、この未経験者や微経験エンジニア、いわゆるエンジニアの卵をプロジェクトにねじ込むときに発生します。
なぜねじ込むのかというと、プロジェクトに参画できるのは基本即戦力のみ。未経験者や微経験者は、正直に経験やスキルを伝えるとプロジェクト参画が難しいからです。
2021年現在、SI業界には約97万人のエンジニアがいるといわれています。われわれの体感では、そのうち約4割が未経験や微経験です。エンジニアの約7割が業界1年目という説もあります。
エンジニアの卵を採用するのは、おおむねSI業界の下請け企業です。下請け企業は不景気になると真っ先に切り捨てられるため、「10万円値引きしますからお願いします」とエンジニアをダンピングしたり、卵をねじ込もうとスキルシート詐欺に手を染めたりするのだと予想します。
申し遅れました。私、「情報戦略テクノロジー」の稲葉と申します。SI業界の変革をテーマに掲げている企業の広報担当として、「案件ガチャはなぜ起きる」「SI業界のエンジニアが陥りがちな3つの地獄」など、警鐘を鳴らすような記事を書いています。今回は仲間の木城とスキルシート詐欺を解説します。
詐欺が起こるメカニズムだけではなく、攻略法も整理しました。これからエンジニアを目指す方、エンジニアとして成長していきたい方の参考になれば幸いです。
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