エンジニアに「キャリア安全性」はあるのか:仕事が「つまんない」ままでいいの?(110)(3/3 ページ)
働き方が変わろうとしているいま、「将来も、きっと大丈夫だ」と思えていますか?
3つの資本の現状を把握する
アイデアとして浮かんだのは、「まず、自身の状況を把握する」こと。これならすぐにできるかもしれません。
金融資本(お金)、人的資本(スキル)、社会資本(人とのつながり)、それぞれのレベルゲージの最大を10として「現状、それぞれがどれぐらいのレベルか」を数値化してみるのはどうでしょうか?
僕の3つの資本のレベルゲージは、現在は金融資本が7、人的資本は8、社会資本は7という感じです。
お金はもう少し収入を増やしたいかな。スキルは「もっと増やしたい!」とはそれほど思わないけれど、現在のスキルをもっと生かしたり、周囲の人のために役立てたりしたいとは思っています。その結果として、成長したい。人とのつながりは、これからも拡がるといいな……と思っています。
ちなみに、会社員だったプログラマー時代はこんな感じでした(あくまでも当時の自己認識です)。金融資本が6、人的資本は9、社会資本は1です。
お金はあるに越したことはないけれど、会社員だったために自分の意志だけでは変えられません。プログラミングのスキルだけは過度に自信がありました。人とのつながりは、会社の同僚ぐらいしかありませんでした。なので、このレベル感です。
ただ、現在の経験値をもって当時のレベル感を客観的に見直してみると、金融資本が6、人的資本は5、社会資本は1という感じ。確かにエンジニアとしての技術力はあったのかもしれませんが、高かったのは技術力だけ。それ以外は「全くなかったな」と思います。
このように、金融資本、人的資本、社会資本を数値化してみると、現在の自身の状況が分かり「どこを増やすべきか」が把握できるかもしれません。
また、僕自身の会社員時代がそうでしたが、自分で認識している評価と他者から見える評価は違うかもしれません。周囲に仲のいい人や異業種の人などがいたら、お互いに評価し合ってみるのも、いいかもしれませんね。
スキルを増やす他に、何ができるのか?
人的資本(スキル)は自分の努力で増やすことができたとして、次に、何を増やせばいいのでしょうか?
私は、社会資本(人とのつながり)を増やしていくことが大切なのではないかと思っています。金融資本(お金)は、周囲から信頼され、「ありがとう」と言われる機会が増えると自然に増えていくので。
ただ、「社会資本を増やす」と言うのは簡単ですが、これが難しいんですよね。勉強会や異業種交流会に行くのもいいですが、だからといって、そう簡単に人脈は作れるものではありませんし。
でも、まぁ……自分から発信したり、いろいろな場に出掛けたりしていくしかないのかな。
例えば僕の場合だと、いまポットキャスト(音声)と文字で自分の考えを毎日発信しています。これは、自分の考えに共感してくださる方とつながりたいからです。毎日のことなので、正直、楽ではありません。でも、人とつながる努力はしています。
あと、2023年は意識的に、いろいろな人に会いに行きました。SNSで人と出会いやすくなったとはいえ、「何だかんだいって、大切なのは人とのご縁だよな」と思って。
その結果、「人とのつながりが増えたか」といわれたら、そうでもないかもしれませんが、動いていないときよりも少しは増えたかな? と思います。
個人でできることには限界がある
エンジニアのキャリア安全性と3つの資本についてお話ししてきました。
あれこれお話ししてきましたが、最近よく思うのは「キャリア安全性って、個人に委ねるだけでいいのかな?」ということ。
というのも、一昔前と違って右肩上がりの時代ではないし、少子高齢化をはじめ、社会が今後どうなっていくのかよく分かりません。また、人生100年時代といわれ、いままでよりも長く生き、働く時代になってきたいま、働き方のロールモデルが、いままでのような「学生、社会人、老後」という働き方、生き方だけでいいのかな? 働き方が大きく変わっているのに、個人のキャリアに対して企業はもっと関わらなくていいのかな? と思うわけです。
なぜならば、働く人々が「将来、自分は大丈夫なのだろうか?」と不安を抱えた状態ではパフォーマンスが上がらないし、「これからも、きっと大丈夫だ」と思えない環境では長く働けない。つまり、離職してしまうからです。
ベテラン世代はベテラン世代なりに、いままでより長く働く前提で何かしらの準備を始める必要があるし、中堅、若手世代も、将来に向けて新たな働き方の形を模索していく必要がある。
これからのキャリアは「個人の問題だけではなく、企業の課題なのではないか?」とも、思います。
筆者プロフィール
しごとのみらい理事長 竹内義晴
「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティーの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。
著書「Z世代・さとり世代の上司になったら読む本 引っ張ってもついてこない時代の「個性」に寄り添うマネジメント(翔泳社)」「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。
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