「AIスキルのない人材は採用しない」が6割 MicrosoftとLinkedInが共同レポートを公開:企業はAIツールを活用する非技術系人材に注目
MicrosoftとLinkedInは、職場におけるAIの活用状況をまとめた共同レポート「2024 Work Trend Index Annual Report」を発表した。
MicrosoftとLinkedInは2024年5月8日(米国時間)、職場におけるAI(人工知能)の活用状況をまとめたレポート「2024 Work Trend Index Annual Report」を発表した。
同レポートは、31カ国の3万1000人とFortune 500企業を対象に、LinkedInの労働、採用トレンドや「Microsoft 365」の生産性データを調査、分析したものだ。
調査結果のハイライトは以下の通り。
4人に3人がAIを活用 AIを職場に内緒で導入する人も
AIは予想外の規模で職場に浸透している。ナレッジワーカーの75%が仕事でAIを利用している。そのうち46%が、AIの利用を始めたのは6カ月以内だと回答した。
AIを活用する従業員は、AI導入の効果として「時間の節約(90%)」「最も重要な仕事への集中(85%)」「創造性の向上(84%)」「仕事の楽しさの向上(83%)」を挙げている。
一方、上層部からの指導や許可を求めず、従業員は自らの責任でAIツールを持ち込んでいた。
- AIユーザーの78%が独自にAIツールを職場に持ち込んでいる(BYOAI:Bring Your Own AI)。中小企業の場合、より見られる傾向にある(80%)
- BYOAIは、Z世代だけでなく全ての世代に共通している
- AIを仕事で使う人の52%が、最も重要なタスクにAIを使用していると認めるのをためらっている
- 職場でAIを使用する人の53%が、重要な業務にAIを使用することで、自分が代替可能な人材だと思われることを懸念している
リーダーはAI導入に同意も、ROIを示さなければならないプレッシャーに直面
AIの利用が急速に進む中、AIを「極めてよく知っている」と答えたリーダーたちは、タイプライターからPCに移行したのと同様の変革がもたらされるとみている。
今後5年以内に、リーダーの41%はAIを活用してビジネスプロセスを根本から再設計することになると考えている。自身の役割として考えているのは、「AIボットのチームの編成(38%)」「訓練(42%)」「AIの倫理的な使用の確保(47%)」だという。
リーダーの79%は競争力を維持するために自社へのAI導入が不可欠だと同意する一方、すぐにROI(投資対効果)を示さなければならないというプレッシャーに直面しており、以下の点において懸念を抱いている。
- AI導入による生産性の向上の定量化(59%)
- 自社にAIを導入するビジョンと計画の欠如(60%)
生成AIツールを活用する非技術系人材に注目
リーダーは既にAI技術者の獲得に乗り出している。過去8年間でAI技術者の採用数は323%増加している。企業は「ChatGPT」や「Microsoft Copilot」などの生成AIツールを使用するスキルを持つ非技術系人材に注目している。
- AIスキルのない人材は雇用しない(66%)
- AIスキルを持たない経験豊富な候補者よりも、AIスキルを持ちながら経験の浅い候補者の採用を希望する(71%)
- AIによって、キャリアの浅い若手人材にも大きな責任を与えられるようになる(77%)
だが、AIスキルを持つ人材を社内で育成する面では遅れている。
- 米国企業の経営幹部の45%が、従業員向けのAIツールや製品に投資していない
- AIを業務に活用している人のうち、会社からAIのトレーニングを受けた従業員は39%だった
- 生成AIに関するトレーニングを提供する予定の企業は25%で、トレーニング不足は深刻化している
専門職に就く人は、職場の指導やトレーニングを待つのではなく、自らスキルアップしている。
- 就職市場で競争力を維持するために、AIスキルが必要だと考えている(76%)
- AIスキルによって昇進が早まると考えている(69%)
- AIスキルによって仕事の機会が広がると考えている(79%)
過去6カ月間でAIスキル育成のための「LinkedIn Learning」コースを利用する非技術系専門職(プロジクトマネジャー、建築家、専務アシスタントなど)は60%増加しており、ChatGPTやCopilotなどのAIスキルをプロフィールに追加するLinkedInユーザーは世界中で142%増加している。リストの上位にはライター、デザイナー、マーケターが含まれる。
AIを活用するユーザーは4種類に分類 AIパワーユーザーがいる企業の特徴
調査の結果、4種類のAIユーザーがいることも明らかになった。
- 懐疑派:AIを理解しているものの、ほとんど利用しない
- 初心者:AIに多少慣れている程度で、利用するのは月に2〜3回
- 中級者:AIの知識は限られており、利用するのは週に1回程度
- パワーユーザー:AIに精通しており、少なくとも週に数回使用する
AIパワーユーザーは、AIを次のように評価している。
- 膨大な作業負荷が管理しやすくなる(92%)
- 創造性が向上する(92%)
- 最も重要な仕事に集中できるようになる(93%)
- モチベーションが高まる(91%)
- より仕事が楽しくなる(91%)
AIパワーユーザーが働く企業は次のような独自の特性がある。
上級リーダーが積極的に関与
職場で生成AIを使用することの重要性を、CEOから聞く可能性が61%高く、部門のリーダーから聞く可能性が40%高く、上司の上司から聞く可能性も42%高かった。
企業文化が変化に対応
AIがどのように仕事を変えることができるかを検討するよう経営陣から依頼される可能性が53%高く、自社がイノベーションを奨励していると答える可能性は18%高かった。
カスタマイズされたトレーニングを提供
AIパワーユーザーは、自社に仮想学習プログラムがあると答える可能性が37%高かった。「プロンプトの書き方(37%)」「自分の役割や職務におけるAIの使い方(35%)」「ライティングやデータ分析など特定のユースケース(32%)」に関するトレーニングを受ける可能性も高かった。
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