マネジメントも大切だけど、プログラミングを完全に手放すことはきっとない:Go AbekawaのGo Global!〜韓さんFrom韓国(後)(1/2 ページ)
グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。前回に引き続き、アイディスでゲーム開発のプログラミングとマネジメントを担う、韓相恩(ハン・サンウン)さんにお話を伺う。新人にまず伝えるのは「ゲーム以外の趣味を持って」だという。その真意とは。
国境を越えて活躍するエンジニアにお話を伺う「Go Global!」シリーズ。今回もアイディスでゲーム開発に携わる韓相恩(ハン・サンウン)さんにお話を伺った。これまで1年単位で新しいゲームを作ってきたハンさんは、アイディスで1つのゲームに長く関わることになった。そこで見えてきた「大変さ」と「楽しさ」とは。
聞き手は、AppleやDisneyなどの外資系企業でマーケティングを担当し、グローバルでのビジネス展開に深い知見を持つ阿部川“Go”久広。
米国ではパズルゲームの課金率が高い?
阿部川 “Go”久広(以降、阿部川) 現在、アイディスでどんなお仕事をされているのですか。
韓相恩(ハン・サンウン 以下、ハンさん) これまで幾つかのプロジェクトや会社でゲーム開発に携わってきましたが、現職ではモバイル向けゲームに戻ってきています。それまでは「開発して、リリースしたら別のプロジェクトに移って」の繰り返しが多かったのですが、アイディスでは運用にも関わるようになりました。毎月のアップデートやイベント対応の他、携わったゲーム『ラストクラウディア』の海外版も開発しています。
阿部川 今は一段落という感じなのでしょうか。
ハンさん そうですね、2023年に韓国語版と中国語(繁体字)版の運営がアイディスに移管されたので、それで一段落しました。今後は全言語統合を進めていく予定です。
阿部川 ラストクラウディア以外でリリースした、あるいはリリース予定のゲームを教えてもらえますか。
ハンさん 『Critter Crew』というパズルゲームを先週リリースしました。モバイルゲーム全体で見ると、ゲームをしている人の11%はパズルゲームを遊んでいるそうです。これは結構な割合で、課金率も高い傾向があります。特に盛り上がっているのは米国ですね。課金も多く、ゲームをあまりしない人も興味を持ちやすく、かなり伸びています。
モバイルゲームが盛り上がっているのは日本くらいと勝手に想像していましたが、米国でも人気なのですね。パズルゲームの課金率が高いのも面白い話です。確かにパズルだと後1手あればクリアできるのに! ということがありますからね。お財布のひもも緩みやすいのかもしれません。
阿部川 今まであまりゲームをしていない人に広がるのは企業としてはうれしいですね。制作にはどれくらいかかったんですか。
ハンさん 想定よりは伸びました。上から難しいオーダーがあって開発部は対応に苦労しましたが、頑張ったかいがありましたね。
やっぱりゲームを作るのは楽しい
阿部川 ゲーム業界でもそういった営業と開発とのせめぎ合いといいますか、マーケティング的なやりとりがあるのですね。
ハンさん それは必ずと言っていいほどありますよ。開発が進んで形になってくると、いろいろと意見も出てきます。「じゃあこれも入れるか、入れないか」といった話が出るとリリースが多少伸びるのはやむを得ないですね。
阿部川 サブリーダーやリーダーの立場になると、そういった開発以外で考えることも増えるでしょう?
ハンさん 確かにそういった要素はありますね。プログラマーのときは任された部分を不具合なく仕上げていれば問題なかったのですが、今はそれ以外でやらなければならないことが増えてきた印象です。
阿部川 ハンさんは今も、自分でプログラミングすることはあるのですか。
ハンさん はい。やることは増えても、プログラミングを完全に手放すことはないと思います。
阿部川 とはいえ、徐々にマネジメントの比重が多くなってくる気がするのですが、今後のキャリアとしてはどういった方向に進みたいと考えていますか。
ハンさん 現時点では管理よりエンジニアとして残りたい気持ちが強いですね。やっぱりゲームを作るのは楽しいし、今後モバイル以外の新しいゲームプラットフォームが出るかもしれないので、そうした新しいものにも関わってみたいですね。マネジメントも嫌いではないですけど、何か違うなという感じはします。
阿部川 なるほど。難しい問題ですが、私はバランスだと思います。ある時にはものすごくマネジメントの力が必要になることがあると思います。一方で、それを実現するには、エンジニアリングやプログラミングの知識がないといけませんから。
今、気になっているゲームのジャンルなどはありますか。
ハンさん そうですね、MMO(Massively Multiplayer Online)のゲームに携わってみたいですね。大規模のマルチプレイに興味があります。
阿部川 私はゲームにはあまり詳しくないのですが、それって世界中の何百人、何百万人がプレイするのですか。
ハンさん 何百万は無理かもしれない(苦笑)。今まで1対1のマルチプレイゲームは関わったことがあるのですが、それよりも大きい規模、例えばSwitchのゲーム『スプラトゥーン』は4対4でやるゲームですけれど、それよりもずっと多い100人でやるマルチプレイゲームとかを作りたいですね。世界的にもマルチプレイゲームは流行していますし。子どもの時にプレイした記憶が今でもあるので、そうした共通の話題にできるゲームを提供したいです。
阿部川 1人の体験ではなく、みんなの体験にするということですね。素晴らしいと思います。
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