事業部門は知らない「エンジニアの常識」 ノーコード開発ツール導入前に伝えるべきこととは:ノーコード開発、これだけは押さえて(5)(1/3 ページ)
ノーコード開発ツールの基礎と、ツール活用に必要な要素について解説する本連載。第5回はノーコード開発ツールの導入後に注目し、開発や運用において重要なポイントについて紹介する。
ノーコード開発ツールの基礎と、ツール活用に必要な要素について解説する本連載。第5回は、ノーコード開発ツール導入後の課題について触れる。ツールを導入する目的や利用する範囲によって課題は異なるが、今回は筆者の経験上、特に重要だと思ったものに絞って紹介する。
なお、本稿で触れるのはコーディングを全くしないノーコード開発ツール、もしくは「ノーコード寄りのローコード開発ツール」とする。また、「事業部門のDX(デジタルトランスフォーメーション)人材化」についても取り上げるため、ノーコード開発ツールの開発権限は、情報システム部門ではなく事業部門にあるものとする。
ノーコード開発ツール導入の成功要因とは?
ノーコード開発ツール導入における成功とは何か。それはプログラミングスキルのない事業部門による「業務のデジタル化が進むこと」と、DX実現に必要な「デジタルマインドの育成」「従業員の変革人材化」だ。それらを実現するには「ファーストサクセス」が最も重要だと筆者は考える。ここでの“ファーストサクセス”とは「初めての業務デジタル化が成功し、『デジタルを活用することで業務課題を解決できそうだ』という手応えを感じている状態」と定義する。
ノーコード開発ツールを用いて業務をデジタル化することは、事業部門にとってチャレンジングなミッションだ。大抵の場合、ツールの導入は通常業務と掛け持ちになる。問題意識から、自主的に事業部門がノーコード開発ツールの導入を検討している場合はなおさらだ。もし、そこで失敗してしまうとITに苦手意識を持つ「ITアレルギー」となることは簡単に想像できる。しかも、担当者だけでなくその周囲も含めてITへの期待感が低くなり、その後の社内のデジタル化推進を阻害する要因にもなり得る。一方で、うまくいけば社内でのITに対する期待感が高まり、「自分たちでもできそうだ」という空気が醸成され、社内全体で業務のデジタル化が加速する。
情報システム部門にとっても、事業部門が「IT人材化」するので、自分たちはより高度なデジタル活用に注力できるというメリットがある。社内のDX推進にもつながるのでノーコード開発ツールを導入するなら、情報システム部門としてもファーストサクセスは必ず実現させたい目標といえるだろう。
ファーストサクセス実現のためには?
ファーストサクセスの話をする上で重要なのが、アプリケーション(以下、アプリ)構築の基本的な進め方についてだ。エンジニアであれば当たり前なことでも、いわゆる文系出身者(ちなみに筆者も文系出身だ)にしてみるとイメージすらできないことも多い。
筆者は、今でこそ大企業向けにノーコード開発ツールの提案や導入の支援をしているが、入社当初はIT初心者だった。もちろん研修はあったが、当時の研修メニューはエンジニアにとって当たり前のことには触れておらず、基礎的な知識がすっぽり抜けた状態だった。そのため、ある意味、これからノーコード開発ツールを導入したい事業部門と同じ場所からのスタートだった。
デジタルの特性や解決できること、業務課題との関連付け、開発のサイクル、各フェーズで注意すべきことは何か……。開発の全体像が見えないままに、いろいろな壁にぶつかりながら進んでいた。その都度、筆者に「翻訳」しながら指導してくれた方、ガッツで奮闘する自分に手を差し伸べてくださったり応援してくださったりした社内外の方々には感謝しかない。ただ、そうした経験があるからこそ分かったことがある。
事業部門に業務デジタル化を推進してもらう際には、エンジニアなら当たり前に理解している、アプリ構築の基礎や起こり得るトラブルについて意識することが重要だ。そうすることで挫折を回避し、ファーストサクセスを実現しやすくなる。事業部門だけで対応しようとすると、情報システム部門的には「まさか」が発生し、最終的な火消しが大変になる場合がある。「デジタル活用初心者」である事業部門に、情報システム部門はどう寄り添えばいいのか。7つのポイントを紹介する。
7つのポイント
- 学習、トレーニング
- トライアル&エラー「28精神」
- トラブル理解、対策
- 開発のライフサイクルを理解させる
- 対象業務の選定
- 計画、目標設定
- 役割分担
1.学習、トレーニング
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