ずっとプログラマーになりたかった:Go AbekawaのGo Global!〜牛尾さんFrom日本(後)(2/3 ページ)
グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回も世界で活躍する日本出身のエンジニア、牛尾 剛氏にお話を伺う。アジャイルコーチとして実績を積み始めた同氏だが、評価はされるものの「プログラマーになりたい」という思いは募るばかり。そこにあるチャンスが舞い降りる。
「一つに絞ること」の大事さ
阿部川 『世界一流エンジニアの思考法』についても教えてください。執筆は苦労されましたか?
牛尾さん 全然ですね。だって僕、既にブログでたくさん書いていたからそんなに苦労はしてないって感じです。だって僕は今、サバイブする(生き残る)のに必死ですからね。明らかに向いてないプログラマーをやってるんで。
阿部川 私が関心を持ったのは、プライオリティー(優先度)の付け方です。1番大事なものだけやって、後は忘れてしまうといった内容でしたね。
牛尾さん そういう場面をしょっちゅう仕事で見ていましたからね。Microsoftのインターナショナルチームは同僚が米国人やし、だんだんそういうの(優先度の考え方)に気付き始めて。
大体技術って、コンセプトが米国で生まれて、それが日本に来る。そういうのを読んで日本でもやるんだけれど「なんかしっくり来おへんな」「うまくいけへんな」みたいなことってよく言われるじゃないですか。それで、気が付いたんですよ。本に書いてあることって、あれ全部ほんまなんやって。
あれは米国の文化やからできているという話ではなくて、例えば優先順位。日本人は「優先順位を付けて実行する」って文章を見た時に、その全部に優先順位を付けて、できたら全部やりたいって暗黙のままにイメージするけど、向こうの人は違うということ(編集注:重要な1つをピックアップして後は全部捨てる、ということ)が分かった。そういう見方をして本を読むと向こうの言うてることが正確に理解できるっていうのが分かってきたんですよ。
だから僕はブログでそういうのをちょっとシェアしているんです。「彼らはこういう感覚でやってるで」って。日本にいるそういう体験したことない人でも、そういうのが理解できれば、いいんじゃないかなみたいな。多分その本を書いている本人も分かれへんと思うんですよね。他の国でその言葉がどう捉えられているかとか。当たり前ですよね、文化が違うので。
阿部川 言われているのはこうだけど、本当はこういう意味だとかはあるかもしれませんね。
サバイブするかどうかは「自分が幸せか否か」で決める
阿部川 他にも本に書かれていることで聞きたいことは山ほどあるんですけど、もう1個だけ選ぶと、日本は上から目線だっていう話がありますよね、新型コロナウイルス感染症接触確認アプリケーション「COCOA」に関する話で「褒めろや、1番最初にやったことを」って(笑)。
牛尾さん ほんまそうよね。自分は何もせんで批判するんやなくて「文句があるんやったらお前がやれや」って感じです。何かアクションを起こさないと、何も起こらないですよね。
阿部川 全くその通りだと思います。プライオリティの話と批判の話は本当に強くうなずいて読みました。でも牛尾さん、自分で自信を持つこともすごく大事じゃないですか。
牛尾さん 僕は別に気にはしてないっす、自信の有無は。
阿部川 でも、牛尾さんはサバイブするために勉強する時間を取ったり、工夫をしたりしているじゃないですか。それは自信につながりませんか。
牛尾さん うん。だって僕、性能悪いからね。めっちゃ賢いやつやったら話は別かもしれん。だってそうしないと全然何もできないから。
編集鈴木 「サバイブしないと」という話が何度か出ていますけど、ずっとサバイブし続けるのって“しんどい”と思うんです。でも、しんどくてもやらなくちゃならない場面はあるじゃないですか。それで悩んでいる人にはどんなアドバイスがありますか。
牛尾さん 確かにずっとサバイブするのはしんどいっすよね。だから、本人がしんどいの嫌やったら、やらんかったらええと思います。
僕は、自分が幸せか否かっていうのが重要やと思うんですよ。「自分の幸せ」は人によって違うじゃないですか。金稼ぐのが幸せやっていう人がいたらそれやったらええと思うし、「俺はもうのんべんだらりと生きたい、最低限の給料でいい」って人は、それをやるのがいいと思うんですよね。他の人がどうこう言うとか、社会がどうであるかとかとてもどうでもよくて。
しんどいことをしないと成長しないとは限らないじゃないですか。だって楽をしてすごく実力が上がったら最高じゃないですか。効率もいいし。やることを減らしたら楽やけど、成果はそっちの方があるかもしれへん。僕は実際そうやったし。
僕みたいに性能悪い人もいれば、授業出ているだけでノート取らんでも暗記できる人もいる。人それぞれやし、基本はやっぱり自分の心に自分が幸せか否かを聞いてみて「努力したくないな、しんどいな」って思うんやったら、やらなくてもいいし、作戦を考えて楽にやる方法考えてもいい、と思います。
あるやり方をチョイスしたところで、それを将来変えたらいけないわけではないし。何かやってみればいいんじゃないですかね。自分の幸せのために。しんどいんやったらやめてもいいし、やめてもう1回やってもあかんこともないし、いろいろやってみたらいいんじゃないですかね。
編集鈴木 SNSを見ていると、エンジニアの「俺しんどい自慢」がたまに始まりますからね……。
牛尾さん もうみんな米国に来たらええのに、楽やで。
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