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9時から17時までなんて日本人は働き過ぎGo AbekawaのGo Global!〜ワエルさんFromエジプト(後)(3/3 ページ)

グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回もJICOOのWael Saad Mohamed(ワエル・サード・ムハンマド)さんにお話を伺う。IoTを学ぶため日本の大学院に入学したワエルさんは、急速に日本文化になじみ、その交友関係を広げていった。

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自分の将来のためにこれからも頑張る

阿部川 日本文化になじみつつ、岩手の大学院を卒業し、JICOOに就職したのですね。どうやって、この会社を見つけたのですか。

ワエルさん インターネットで見つけました。オンラインで応募して、面接と日本語と「Java」のテストを受けました。知らない人と話すのはちょっと苦手だったのですが、JICOOの採用担当者はそれを分かってくれて、仲良くなれました。

阿部川 現在はどういった仕事をしているのですか。

ワエルさん 今はWebサイトを担当しています。言語はHTMLやJava、「PHP」などを使っています。4カ月ごとにプロジェクトが変わり、以前はPythonを使ったプロジェクトに参加していました。

阿部川 何人かでチームで仕事をすると思いますが、コミュニケーションは日本語ですか。

ワエルさん はい。人数はプロジェクトによって違いますが基本的に日本語でやりとりします。みんな優しいので、できるだけ説明してくれます。分からないことがあったら、マネジャーに聞くと英語で説明してくれるので理解できます。

画像
現在のワエルさん

阿部川 日本語と英語で説明してもらえるのですね。それはよかったです。将来、エジプトに戻る予定はありますか。

ワエルさん なんとも言えないですね。専門家になりたいし、まだまだやれることがあります。日本以外の場所に行くかもしれません。スペインとか米国とか。とにかくもっと経験を積まないと、と考えています。特に日本はアラブ人にとって不思議な世界です。“別の惑星”だから発見しなければならないことがたくさんあります。

阿部川 「日本は謎だらけ」ということですね。日本のエンジニアと一緒に仕事していて困ることはないですか。

ワエルさん やはり言葉の壁はありますね。あと、労働時間の長さ。日本の働く時間は9時から17時まででとっても長い。エジプトは大体9時から15時までです。ラマダン(イスラム教徒が日の出から日没まで断食する期間)のときは、9時から13時までの4時間だけ働きます。

阿部川 ラマダンのときは、13時以降は何をするのですか? お祈りですか?

ワエルさん もちろんです。お祈りをしている時間はそんなに長くはありませんが、ラマダン中に特別のお祈りがあってそれは20時から21時半くらいまでやります。

阿部川 じゃあ日本の仕事は長過ぎますね。残業で20時なんて珍しくもないので、とても長く感じるでしょう。


編集中村
編集 中村

日本も昔(といっても江戸時代くらい昔ですが)は4〜6時間の労働が一般的だったのに、いつから長時間労働が当たり前になったのでしょうね……。とはいえ時間だけ短くなって仕事量が変わらなければパンクしてしまうので、自動化や効率化などを進めてやるべきことを短い時間で集中してできるようにしないといけませんね。


ワエルさん そうですね。ルールだから仕方がないとは思いますが、日本人で家族がいる人は、仕事が終わってからどうやって家族の時間を作っているんでしょうか?

阿部川 作れていないんじゃないですかね。夜中に帰ったら、食事も終わっていて家族はみんな寝ているといった感じでしょう。みんなに「それはおかしい」って言い続けてください。最後に、日本のエンジニアにメッセージはありますか?

ワエルさん 壁が立ちふさがることがあるかもしれませんが、諦めず、輝く将来を信じて頑張って。私もそう信じています。私は、今の自分のレベルがここだったらそのもっと上(とジェスチャー)が欲しいと思います。特にソフトウェアの仕事は毎年、毎月進化するので、止まったら大変です。新しいことがあれば、しっかり勉強して理解しなければなりません。

阿部川 それがワエルさんの信条なのですね。エンジニアなら当然とは思いますが、続けるのは大変ですよね。

ワエルさん それでも私の辞書には「やめる」という言葉はありません。一生やめないという気持ちで絶対頑張るぞ、と心に決めていますから。

阿部川 どうしてそこまで頑張れるのでしょうか。

ワエルさん 負けず嫌い、ということはありますが、一番は自分のためですね。自分の将来のためにはそれくらい頑張らないと、と思っています。

Go’s thinking aloud インタビューを終えて

 「今よりも、もっともっと(エンジニアリングの)専門性を高めたい」と力強く話してくれる。しかし、例えば残業までしてそのスキルを高めたいかというと「日本の方々は長く働き過ぎ。家族との時間を一体どうしているのか」といぶかる。目いっぱい学ぶことと、的確な効率化は相反する考え方ではない。だとすれば私たちの仕事に対する考え方や、仕事のやり方そのものを、いま一度見直すべきだろう。「なかなか変わらない」と嘆くのはもうやめて、今日からできる時短法を探さないか。

 先日、友人のヴァランティ牧野祝子氏が良い本を書いてくれた。『結果を出してサクッと帰る 神速時短』(すばる舎)という書籍だ。まずはとにかく読んで、世界10カ国のエグゼクティブから彼女が「盗んだ」方法を試してみてほしい。

 温泉の話をすると、ワエルさんは本心から恥ずかしがり(39歳の男性に対して失礼かもしれないが)、その様子が素直でとてもかわいらしかった。素直さや、そして学び続ける姿勢は、年齢とは全く関係がない。

阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)

アイティメディア 事業開発局 グローバルビジネス戦略室、情報経営イノベーション専門職大学(iU)教授、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD) 訪問教授 インタビュアー、作家、翻訳家

コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時から通訳、翻訳も行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在情報経営イノベーション専門職大学の学部長、教授も兼務。神戸大学経営学部非常勤講師、立教大学大学院MBAコース非常勤講師、フェローアカデミー翻訳学校講師。英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行う他、作家、翻訳家としても活躍中。

編集部から

「Go Global!」では、GO阿部川と対談してくださるエンジニアを募集しています。国境を越えて活躍するエンジニア(35歳まで)、グローバル企業のCEOやCTOなど、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。取材はオンライン、英語もしくは日本語で行います。

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