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私には夢がある 日本とサウジアラビアの架け橋になるというGo AbekawaのGo Global! アジズさん From サウジアラビア(後編)(2/2 ページ)

「戦国無双」で日本の歴史に興味を持ち、戦国時代や江戸時代を勉強してきました。そんな私が日本に来るのは必然でした。

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高塚先生、里見さん――恩人に導かれ

阿部川 修士取得後はすぐ日本に?

アジズさん いえ、少し間が空いています。日本に行こうと決めてはいましたが、いったんサウジアラビアに帰国しました。ご承知のようにビザなどの準備が必要ですから。

 どうして日本だったのかというと、シドニー大学の担当教授だった高塚先生が、当時広まってきていたVRやARのテクノロジーと日本の会社や産業――ゲーム業界やXR(クロスリアリティー)のスタートアップ企業などについて話してくれました。私は常に新しいテクノロジーに興味があり、特にXRに非常に引かれていましたので、日本に行って仕事をしてみたいと思うようになったのです。

 それに子どもの頃から日本に対しては興味が尽きませんでした。プレイステーションの「戦国無双」――英語では「Samurai Worriers」といいますが、でよく遊んでいて、そこから日本の歴史に興味が湧き、戦国時代や江戸時代の歴史を勉強してきました。

 そのように日本の歴史や文化が好きだったので、そんな国で仕事をしたいと思うのは自然なことでした。それで、2017年に来日しました。高塚先生が私の日本への興味を加速させてくれたと思います。

阿部川 高塚先生には私からも感謝したいですね。


現在のアジズさん 引き続きイケメン

阿部川 それで、日本で最初の就職先としてフィグニーに入社したのですね。どうやってフィグニーを見つけたのですか。

アジズさん あるイベントで知り合った友人が、フィグニーのCEOである里見さん(里見恵介氏)を紹介してくれました。里見さんが会社のパーティーに招待してくれて、フィグニーのビジョンや仕事の内容を細かく話してくれました。私も自分のしたいことなどを話しました。そこで意気投合していろいろ話し、2019年の初めに採用されました。

阿部川 理想的なジョブハンティングですね。現在どのような仕事をしているのですか?

アジズさん 現在はXRのデベロッパーチームのメンバーです。VR/ARを用いたゲームや、各種シミュレーションやモバイルのアプリ、ゲームエンジン「Unity」や「Unreal Engine」を使ったゲームや3Dグラフィックスを使ったシミュレーションなどを開発しています。フィグニーオリジナルのゲームも、クライアントから依頼されたゲームもあります。

 詳しくは話せないのですが、地震や津波などの防災に関連したシミュレーションや、自動運転のためのシミュレーションなどにも取り組んでいます。継続して自動運転するときに必要な要素は何かとか、歩行者との関係性にはどのようなものがあるか、などです。

 シミュレーションといっても、ビジュアルだけではなくデータ分析なども含まれ、またそのデータをクライアンが用いて分析するという用途も必要です。ですから、より広範囲な社会的なインパクトのあるものも多いのです。

阿部川 VRやARと聞くとゲームと結び付けがちですが、確かに防災や自動運転、あるいは高所作業など危険が伴う場所に関しての用途にもぴったりなのですよね。

アジズさん 実はそれが来日した大きな理由でもあります。というのも、米国におけるVR/AR市場は、多くがビデオゲームなどのエンターテインメントですが、日本ではより広い意味で、社会的に利便性の高い市場価値を持ったアプローチをクライアントが求めているのです。フィグニーでは、より広くテクノロジーの可能性が開かれる分野はどこかと常に模索しています。

編集部 中村 VR/ARのエンジニアに必要とされるスキルとは何でしょうか。アジズさんは子どもの頃からゲームや3DCGなどの仕事でその素養を鍛えてきたと思うのですが、そうではない人には何が必要だと思いますか。

アジズさん AIが台頭してくると、早晩自分たちのスキルがAIにとって代わられるのではないかと恐れるVR/ARのエンジニアなどがいるとは思いますが、恐れないでほしいです。

 AIは私たちの仕事をより良くするツールであり、仕事を奪うものではないと思います。テクノロジーの業界は常に進化し、変化しています。ですから、学ぶことを止めず、常に自分のスキルをアップデートしてほしい。必要なのは、常に最先端のテクノロジーに自分を追い付かせることです。他人やメディアが言うことに一喜一憂しないでほしいですね。夢を追い続けること、自分に自信を持つこと、これらが大事だと思います。

サウジアラビアと日本を通勤?

阿部川 日本での滞在が長く、また日本のことを本当に愛してくださっているのがよく分かりました。今後はどうなさる予定ですか。

アジズさん 私には夢があります。日本とサウジアラビアは、両国政府が両国の発展のために合意した「Saudi-Japan Vision 2030」という協定で、深くつながっています。私の夢は、今まで培ってきた知識と経験を用いて、この活動に参画することです。

 私は日本とサウジアラビアの架け橋になりたいと思っています。現在フィグニーで関わっているさまざまな最先端技術に関するプロジェクトは、必ずサウジアラビアの経済的な発展に貢献できると思っていますし、それは日本への貢献にもなると思います。

阿部川 なるほど。将来的にはサウジアラビアに戻りたいですか、あるいはずっと日本で暮らすつもりでしょうか。

アジズさん それはなかなか難しい質問ですね。まだ分かりませんが、今描いている夢が実現すれば、きっと日本とサウジアラビアを往復することになると思います。

阿部川 日本とサウジアラビアの間を「通勤」したらどうですか。

アジズさん はい、そうなると思います(笑)。

Go’s thinking aloud

 「私には夢がある」――インタビュー中に何度もこのフレーズを聞いた。やりたいことや自分の将来が、現在の仕事に直結してきた。

 大学でコンピュータを学び、もっと学びたいから大学院へ進学した。得た能力を基にして現在の仕事についた。教育にかかる費用は全て政府が支援してくれるから、迷うことなく自身の将来に突き進むことができる。

 わが日本は、「私には夢がある」といくつになっても堂々と公言できる国だろうか。

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