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2025年のAIをまとめ、2026年に起こる10の出来事を予測した「State of AI Report 2025」公開DeepSeekなど中国のモデルが2位の地位を確立しつつある

英国のベンチャーキャピタルAir Street Capitalは、AI研究の最新動向や、AIが社会的、経済的にもたらす影響を分析した「State of AI Report 2025」を公開した。

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 英国のベンチャーキャピタルAir Street Capitalは2025年10月9日(英国時間)、AI(人工知能)の研究動向、AIが社会、経済にもたらす影響をまとめた年次調査「State of AI Report 2025」を公開した。

 同調査は、AIの進化に伴う社会的、経済的影響を分析し、AI技術の持続的かつ安全な発展を模索するための議論を促すことを目的としたものだ。Air Street Capitalによると、次の観点でAI技術を分析しており、業界や研究の第一線で活躍するAI専門家によるレビューも受けているという。

  • 研究:技術的なブレークスルーとその能力
  • 産業:AIの商業分野への応用とビジネスへの影響
  • 政治:AI規制、経済的影響、AIを巡る地政学リスク
  • 安全性:高い能力を持つAIシステムが起こし得る壊滅的なリスクの特定と軽減策
  • 実務者分析:1200人のAI実践者から得られる知見、AI活用の実践状況
  • 予測:今後12カ月間の動向予測と、予測の妥当性を検証するためのパフォーマンスレビュー

 同レポートの主な内容は次の通り。

State of AI Report 2025のハイライト

フロンティア領域ではOpenAIがわずかにリードも、競争は激化

 フロンティア領域(最先端分野)ではOpenAIの「GPT-5」モデルシリーズが依然としてベンチマークでリードし続けている一方、競争は激化している。特に、中国の「DeepSeek」「Qwen」「Kimi」といったオープンウェイトモデルが推論やコーディングタスクで急速に差を詰めており、これまで主要な対抗馬と見なされてきたMetaに代わり、信頼できる2位の地位を確立しつつある。

リーズニング能力が技術トレンドに

 2025年はリーズニング能力が技術の進化を示す年となった。先端のAI研究所は強化学習や検証可能なリーズニングを組み合わせることで、計画、内省、自己修正を行い、より長期的なタスクを実行できる高度なモデルを開発している。

科学研究におけるAIの役割拡大

 AIは単なるツールから「共同研究者」に進化しつつある。Google DeepMindの「Co-Scientist」は、自律的に仮説を立てて検証まで取り組めるようになった。生物学の分野では、モデルの性能が規模に応じて向上する「スケーリング則」が、タンパク質の分野にも適用可能であることが示された。

フィジカル空間への応用

 「Chain-of-Action(CoA:アクションの連鎖)」と呼ばれるアプローチを用いた構造化リーズニングがThe Allen Institute for AI(Ai2)の「Molmo-Act」やGoogleの「Gemini Robotics 1.5」に適用され、実体を持つAIシステムが行動をする前に段階的に思考できるようになった。

ビジネスにおけるAI導入が加速

 RampおよびStandard Metricsの調査によると、米国企業の44%がAIツールに支出しており(2023年の5%から増加)、平均契約額は53万ドルに達した。「AIファースト」のスタートアップは同業他社より1.5倍速く成長している。

95%が職場または家庭でAIを活用

 1200人の回答者の内、95%が職場または家庭でAIを使用し、76%がAIツールを自費契約し、多くが生産性向上を実感している。本格的な導入が主流となったことを示している。

AIが産業の中心となる時代に突入した

 米国、アラブ首長国連邦(UAE)、中国などの政府系ファンドが支援するStargateのような数GW(ギガワット)級のデータセンターの建設計画は、AIが産業の中心となる時代の到来を象徴している。一方、この大規模化により、コンピューティング資源の制約は計算能力から電力供給へと移りつつある。

AIを巡る政治的対立が激化

 米政権が「米国第一主義」のAI行動計画を推進し、欧州のAI法は実効性に課題がある。対照的に、中国はオープンウェイトモデルのエコシステムを拡大し、半導体の国内開発を強力に推進している。

安全性に関する研究は実践段階へ

 AIの安全性に関する研究はより実践段階のものとなりつつあり、「AIが人類に壊滅的な被害をもたらす」といった抽象的な議論から、AIシステムの信頼性やサイバーセキュリティ、AIエージェントのガバナンスといったより具体的で現実的な課題へと関心が移りつつある。

AIにまつわる10の予測

 Air Street Capitalは、今後12カ月以内に次の10の出来事が起こると予測している。

  1. AIエージェント広告への支出が50億ドルに達する中、ある大手小売業者が、オンライン売上の5%以上がAIエージェントによる決済(agentic checkout)によるものだと報告する
  2. 大手AI研究所が、米政権の支持を得るためにフロンティアモデルのオープンソース化に回帰する
  3. オープンエンド型のAIエージェント(決められたゴールを持たないAI)が、エンドツーエンド(仮説立案から実験、試行錯誤、論文作成まで)で、意義のある科学的発見を成し遂げる
  4. ディープフェイクまたはAIエージェントが主導するサイバー攻撃が引き金となり、AIセキュリティに関するNATO(北大西洋条約機構)または国際連合初の緊急特別会合が開催される
  5. リアルタイム生成のビデオゲームが、Twitchでその年最も視聴されたタイトルになる
  6. 一部の国家でソブリンAIの開発に失敗、あるいは開発できない状況に陥る中、「AI中立性」が新たな外交政策の基本方針として浮上する
  7. AIを大々的に活用して制作された映画または短編映画が、観客から大きな称賛を得ると同時に、激しい反発を招く
  8. 中国の研究所が、主要なAIリーダーボード(「LMArena」「Artificial Analysis」)において、これまで米国勢が独占してきたフロンティア領域で首位を奪う
  9. データセンター設置に対する地域住民の反対運動が全米に広がり、2026年に実施される特定の中間選挙や州知事選挙に影響を与える
  10. トランプ大統領が連邦最高裁判所によって違憲と判断された州レベルのAI関連法を禁止する大統領令を発令する

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