元特殊教育教諭がITエンジニアにキャリアピボットした理由:Go AbekawaのGo Global! ジョンさん from 韓国(前編)(2/2 ページ)
幼少期から日本文化に傾倒し、大学では特殊教育を専攻。ITエンジニアへと華麗に転身した、向上心にあふれたジョンさんのキャリアの原点に迫る。
特殊教育の理想と現実 日々つのる葛藤
ジョンさんは大学卒業後、専攻を生かし、全州特殊教育支援センターで教師として働き始めた。
担当したのは、障害のある学生のための教育課程に沿った全科目である。クラスの人数は最大で5人であり、個々の障害の程度(軽度、中間、重度)に合わせて授業計画を立てる必要があった。
特殊教育教師の仕事は、非常にハードなものだった。特に、自分の感情をコントロールできない学生への対応や、いうことを聞かない学生のコントロールは大変であったという。
学生時代は教えたことの結果が出る機会が多く、この専攻を生かしてずっと働いていこうと考えていた。しかし実際に現場に出てみると、自分の性格や考えでは「間に合わないかも」という考えが次第に湧き上がってきた。
ジョンさんの悩みは深かった。「自分が教える教育が、本当に学生の役に立っているのかという悩みがどんどん出てきて」、また、1年たつと学生が入れ替わるため、「この学生に教えることって1年だけでいいのかな。もっと教えたいなという考えがあったんです」という教育課程の区切りにも、自身の中で葛藤を感じていた。
インタビュアーの阿部川は、ジョンさんの「これでいいのだろうか」という葛藤こそが、心志高く真面目に取り組んでいた証拠だと指摘している。
この葛藤を経て、ジョンさんは新しい仕事を探すことを決意する。以前から興味を持っていたITの分野を生かしたいと考えたが、IT知識が全くなかったため、真剣に勉強できる教育機関を探し始めた。
海外就職を支援するアカデミーでの猛勉強
さまざまな選択肢を探してジョンさんが見つけたのは、韓国貿易協会貿易アカデミーの「SmartCloud ITマスターコース」であった。
このアカデミーは、外国で働くことをサポートすることを目的としており、外国語とITの両方を専門的に勉強できる場所であった。また、就職完了までを教育過程とする制度があり、外国での就職に必要な技術や語学、さらには企業への書類申請支援までを手厚くサポートしてくれる。日本語とITを同時に学べるアカデミーは、ジョンさんにとって理想の学習環境。何が何でもここに入学したいと彼女はひそかに決意した。
だが、IT知識ゼロの状態からのスタートであったため、アカデミー入学への難易度は高く、入学準備に約6カ月を要した。また、申請を受け付けるのは年に1回だけであり、タイミングを合わせる必要もあった。だが、ジョンさんは頑張る。猛勉強の末、入学試験を突破し、アカデミーへの入学を果たしたのだ。
アカデミー入学後も猛勉強は続く。朝9時から夜7時まで授業という非常にハードなものであったため、ジョンさんはアカデミー近くの親戚の家に下宿し、勉強ざんまいの日々を送った。ジョンさんはITを使って外国で働くことで、自身を「リフレッシュして成長できるかな」と考え、プログラミングを中心に学びを重ねた。
ピビンパ発祥の地で生まれ育ち、嵐が大好きだったジョン・エリンさん。前編では、ジョンさんが特殊教育の教師からITエンジニアへとキャリアの舵(かじ)を切るまでの葛藤と決意、そして日本での就職を目指して猛勉強した準備期間までを追った。後編では、日本でのエンジニア生活がどのように始まったのか、そして日本のIT現場で働くことで得られた貴重な知見や、データ分析への熱い思いに迫る。
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