元特殊教育教諭がITエンジニアにキャリアピボットした理由:Go AbekawaのGo Global! ジョンさん from 韓国(前編)(1/2 ページ)
幼少期から日本文化に傾倒し、大学では特殊教育を専攻。ITエンジニアへと華麗に転身した、向上心にあふれたジョンさんのキャリアの原点に迫る。
グローバルに活躍するエンジニアを紹介するインタビュー連載「Go Global」。今回ご登場いただくのは、向上心にあふれたデータインテリジェンスエンジニアである鄭 愛隣(ジョン・エリン)さんだ。
前編では、韓国の静かな町で育った幼少期からJ-POPへの傾倒、そして特殊教育の教師という異色のキャリアを歩んでいた彼女が、なぜITエンジニアへの道を決意し、日本での就職を実現するに至ったのか、そのキャリアの原点を辿る。
聞き手は、AppleやDisneyなどの外資系企業でマーケティングを担当し、グローバルでのビジネス展開に深い知見を持つ阿部川“Go”久広。
日本語は独学で 教師データはドラマや大好きな「嵐」
ジョンさんは、韓国の全州(チョンジュ)という市で生まれた。
全州は、ソウルとプサンの間に位置し、彼女いわく「他の地域よりもちょっと静かな感じ」の町である。韓国国内でも、全州出身と話すと、名物のピビンパが有名な地域だと認識されるという。また、プロサッカーチーム「チョンブク・ヒョンデ」(全北現代モータース)の本拠地でもあり、サッカーが盛んな地域である。
ジョンさんは高校生まで全州で育ち、大学進学でいったん故郷を離れるも、卒業後は戻って仕事をしたため、韓国で暮らしていた頃のほとんどの期間を全州で過ごしている。
小学生の頃はスポーツ好きで、サッカーやバレーボールチームに参加していた。しかし、中学、高校生になると、メディアやネットが普及する時期と重なり、生活の中心がメディアへと変化した。このころジョンさんが熱中したのが日本文化、特にJ-POPや日本のドラマであった。
きっかけはドラマからで、気になった俳優が音楽アーティストでもあったことを知った。2005年から2009年ごろにかけては特に熱中し、「嵐」のファンとなり、友人と日本へコンサートを見に来るほどであった。ドラマよりも盛り上がるという理由で、音楽を特に好んでいた。ジャニーズ系以外にも「モーニング娘。」なども聞いていたという。
J-POPへの興味が高じて、大学時代にはアルバイトでお金をため、4、5回日本を訪れた。この時の「いい思い出ができた」ことがきっかけとなり、「日本に一度住みたい」という思いが芽生え、現在の日本での就職につながった。日本語は、日本のドラマやJ-POPを聞き慣れることから始め、独学で習得したという。
学生時代、得意な科目は英語であった。
英語は成績が一番良く、「結果がすぐ見られる」ため興味を持つことになった。数学や物理などの理系科目は苦手で、文化的な分野の方が向いていると感じていた。
障害のある子どもたちを、教育でサポートしたい
高校までを全州で過ごした後、ジョンさんはコンジュ大学(公州大学校)に進学し、「特殊教育」(障害などの特別な教育的ニーズを持つ子どもに対して適切な教育課程と支援サービスを提供し、彼らの自己実現と社会適合を目指す体系的な支援システム)を専攻した。
特殊教育を選んだのは、高校時代にボランティア活動を通して、障害のある子どもたちと触れ合う機会があり、彼らを実質的に助けるためには教育が一番早いと考えたためである。教育の効果が高いのは若年層であると考え、小学生向けの教育課程を選択した。
しかし大学3年目に入り、特殊学校での実習に参加した際、大きな転機が訪れる。現場で教育が行われる様子を観察すると、さまざまなIT機器が活用されていることに気が付いたのだ。
ジョンさんは当時の心境について、「教育実習で受け持った学生たちは、本の教育で結果を得るまでは結構時間がかかっていました。でもIT機器を使ったら、生活や勉強が改善されたり、役に立てたりすることが目に見えていました」と述べている。
IT機器は学習を補助するだけでなく、生活を補助する機器としても役立っていた。例えば、車いすの移動速度を調節する装置や、目が見えない学生のための危険感知センサーなどである。この経験を通して、ジョンさんはハードウェアよりも、その中にある「ソフトウェアはどうやって作られるのか」という点に強く興味を持つようになった。
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