コーダーはもういらない。いま必要とされるのは「問題解決者」としてのエンジニア:AIでローコード開発ツールは不要になりますか?(2/2 ページ)
AIは開発の性質を変え、エンジニアリングの焦点をコードからビジネス課題の解決へとシフトさせる。
AI時代のエンジニアに求められる「分野」のシフト
AIの進化に伴い、「エンジニアの仕事はなくなるのではないか」という懸念がITエンジニアの間で広がっている。これに対し、Clarisの経営陣は「誤解である」と断言し、エンジニアが今後強化すべきスキルについて具体的に言及した。
マッキャン氏によれば、エンジニアの需要は健在である。
「エンジニアの仕事がなくなってしまうのではないかとよく言われますが、それは誤解だと私は感じています。ただ、エンジニアリングの『分野』がちょっと変わってきている。そのシフトはあるでしょう」(マッキャン氏)
マッキャン氏が考える「分野のシフト」とは役割の変化である。
「エンジニアは『課題解決者』に変化してほしいと考えています。課題は何なのか理解を深めて、技術を応用して解決する。この能力にAIが組み合わさることによって、成長していくのだろうと考えています」(マッキャン氏)
リオス氏もマッキャン氏と同意見だ。FileMakerの開発者コミュニティーを例に挙げ、「彼らは、自分をコーダーではなく問題解決者と自認している」という。
「コミュニティーの開発者たちは、組織のデータフローや事業のプロセス、それをどう組み合わせればうまく機能するかについて理解を一番持っています。このスキルこそが、AI時代において生産性を向上させ、素晴らしい体験を作り上げる強みになると思います」(リオス氏)
リオス氏は、AI時代にエンジニアが強化すべきスキルは、プログラミングスキルそのものではなく「思考能力」であると指摘する。
「AIは優秀ですが、人間よりも思考力があるわけではないと思います。AIを使って成功しているエンジニアたちを見ていると、彼らは自分の思考能力を駆使して、そこにAIの潜在性をうまくかみ合わせています。『考える能力』『分析する能力』『理解する能力』――いまだからこそ、こういった能力が前よりももっと求められるんじゃないかと思います」(リオス氏)
ソフトウェアエンジニアのリー氏も、「ローコードでも、もっと大きいスケーラブルなコードでも、どこまでコンセプトを理解する能力があるかが問われます」とコメントした。
ワクワクしようよ!
最後に、マッキャン氏、リオス氏から@IT読者にメッセージを頂いた。ビジネスのトップであり、アメリカンフットボールの選手でもあるマッキャン氏からは、行動を促す力強いアドバイスだ。
「コードを書くというところにとどまらず、ビジネスの課題解決を自分がするんだというふうに意識を改革していただくといいと思います。自分の仕事がなくなるのではと心配な方は、こちらの側の光の当たる明るい方向に来てください。プラットフォームを使いこなして問題を解決しようという思考力があればできることがたくさんあります。課題は永遠にあるので、その解決をぜひ、皆さんに担っていただきたいと思います」(マッキャン氏)
自身もエンジニアであるリオス氏のメッセージは優しい。
「数年前まではSFの世界じゃないかと思っていたアプリが作れるようになったし、子どものころ夢に描いていたこともテクノロジーで実現できるようになりました。私たちはいま、最もワクワクする時代にいるんだって思っていただけたらいいなと思います。テクノロジーに身を置くものとして、皆さんにはワクワクしてほしいな」(リオス氏)
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