58万人が使う決済アプリ、遅い原因が「4時間たっても不明」――食品スーパーはどう解消した?:マルエツ、カスミ、イオンフードスタイルの「Scan&Go」の監視を改善
マルエツなど食品スーパーを傘下に持つU.S.M.Hは、スマートフォン決済サービス「Scan&Go」の運用を見直し、時間がかかっていたアプリケーション遅延の原因究明を迅速化した。その仕組みとは。
ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(以下、U.S.M.H)は、食品スーパーマーケットのマルエツとカスミ、いなげや、イオンフードスタイルを傘下に持つ持ち株会社だ。首都圏に764店舗(2026年7月17日現在)の食品スーパーマーケットを展開する。
U.S.M.Hが2022年から提供するスマートフォン決済サービス「Scan&Go」は、58万人を超える顧客が利用しているという。来店客はScan&Goのスマートフォン向けアプリケーションを使って商品のバーコードをスキャンし、セルフサービスでクーポンの利用や会計ができる。Scan&Goは、首都圏に展開するマルエツ、カスミ、イオンフードスタイルの500店舗以上で利用可能だ。
Scan&Goのシステムの稼働状況は、これまでアプリケーション開発ベンダーとITインフラ構築ベンダーが異なるツールで監視していたものの、アプリケーション処理の遅延検知から原因特定までに時間がかかっていた。ベンダーがアプリケーション処理の遅延を検知しても、原因を特定できないまま、4時間後にU.S.M.Hに報告することもあったという。
“遅い”原因を素早く突き止める仕組みとは?
アプリケーションの安定稼働を維持してScan&Goのサービス品質を向上させるために、U.S.M.Hは2025年6月、アプリケーションの監視の仕組みを見直した。その具体的な構成を見ていこう。
U.S.M.Hは、社内のサービス管理部署やアプリケーション開発ベンダー、ITインフラ構築ベンダーなどが共通の監視ツールとして、New Relicの同名オブザーバビリティーツールを利用するようにした。これにより関係者が同じ観測データをリアルタイムで共有できるようになった。平時と異常時のデータを比較して傾向を把握しやすくなり、障害の予兆を察知しやすくなったという。
New Relicを活用して、サイト信頼性エンジニアリング(SRE:Site Reliability Engineering)にも取り組んでいる。SREはシステムの信頼性向上を目的とした活動だ。U.S.M.HはSREの一環として、以下の4つを実践している。
- 観測:定期的に「ダッシュボードを眺める会」を実施し、平時のデータを共有して異常の予兆を捉えるポイントの理解に努める
- 監視:スマートフォン用アプリケーションの操作やAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)の応答時間、アプリケーションのエラー率などを可視化し、ユーザー体験をリアルタイムに把握する
- 診断:アラートを受けてアプリケーションパフォーマンス管理(APM:Application Performance Monitoring)で異常箇所を絞り込み、観測データとログを分析する
- 看護:観測データに基づいて原因を仮定して対処し、観測・評価しながら改善サイクルを回す
これらの取り組みにより、U.S.M.Hは時間がかかっていたアプリケーション遅延の原因究明を迅速化できるようになった。ソースコードレベルで原因を特定できるようになり、不具合の原因調査にかかる工数も削減したことで、システムの改善により多くの工数を充てられるようになったという。
観測データの取得しやすさとライセンス体系を評価してツールを選定
U.S.M.HはNew Relicについて、複雑な設定や追加開発を要することなく、必要な観測データを取得できると評価した。ダッシュボードを介して、社内のサービス管理部署や外部のアプリケーション開発ベンダー、ITインフラ構築ベンダーといった立場の異なる関係者が、観測データをリアルタイムに共有できることもメリットだと判断した。
取り込むデータ量とユーザー数によって決まるライセンス体系についても、シンプルで合理的だと考えた。繁忙期にサーバ台数を追加する際に、追加の契約手続きが不要であり、環境変化に即応しやすいことも採用を後押しした。
U.S.M.Hは、今後はNew Relicが収集したデータをさらに活用することで、従来のPOS(販売時点情報管理)システムのデータからは得られなかった新たなインサイトを獲得し、顧客行動のより深い理解を目指す。そのために今後はScan&Goと連携するシステムにもオブザーバビリティーを適用するという。New Relicが2026年6月10日に本事例を発表した。
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