なぜクラウド支出の「約4分の1」が無駄になる? その理由と、コストを適正にする“13のポイント”:A.T. カーニーが論考を公開
A.T. カーニーがクラウド支出の最適化に関する論考を発表した。パブリッククラウドへの移行では平均20%超のコスト超過が生じ、支出の約4分の1が無駄になっているという。
パブリッククラウドは、必要なときに必要なだけITリソースを利用できる一方、使い方によっては想定以上にコストが膨らむこともある。クラウドへの移行を進めたものの、「思ったほどコストが下がらない」「むしろ支出が増えた」という企業も少なくない。
経営コンサルティング企業のA.T. カーニーは2026年8月18日、クラウド支出が膨らむ要因と、最適化するための施策を整理した論考「クラウド投資の最適化によるROI最大化」(英題:How to optimize your cloud spend to deliver maximum ROI)を発表した。
なぜクラウド支出の「約4分の1」が無駄になるのか
A.T. カーニーによると、典型的な企業のパブリッククラウド移行では平均20%を超えるコスト超過が発生し、クラウド支出の約4分の1が無駄になっているという。なぜクラウドではこうしたコスト超過が生じるのか。膨らんだクラウド支出を抑えるには、何を見直す必要があるのか。
パブリッククラウドは、必要なときに必要なだけITリソースを利用でき、需要に応じて拡張できる。利用した分だけ料金を支払う従量課金も大きな特徴だ。一方、こうした使いやすさがある半面、利用量が想定以上に膨らみ、当初見込んでいたコストを上回ることもある。
A.T. カーニーは、コスト超過や無駄な支出が生じる主な要因として、次の3点を挙げる。
- オンデマンド利用の拡大:必要なリソースを各部門や利用者が容易に追加できるため、想定以上に利用量が膨らむ
- 非効率な「リフト&シフト」:既存のワークロードをクラウド向けに再設計せず、そのまま移行することで、性能やコストを最適化できない
- 廃止の不徹底と遊休リソース:クラウド移行後も旧環境を残すことで二重にコストがかかる他、使われていないクラウドリソースにも料金が発生する
3つのカテゴリーに整理した13の最適化施策
A.T. カーニーはクラウド支出の最適化策を、「契約戦略」「需要の適正化」「アーキテクチャ設計」の3カテゴリーに整理し、合計13のレバー(施策)を提示している。
カテゴリー別の削減余地は、契約戦略が10〜20%、需要の適正化が20〜35%、アーキテクチャ設計が45〜70%だ。各カテゴリーは対象や実行条件が異なるため、数値は単純に合算せず、ワークロードごとに適用可能性を評価する必要があるとしている。
13の施策の内訳は次の通り。
- 契約戦略(削減余地10〜20%)
- 1.オンプレミスライセンス再利用
- 2.リザーブドインスタンス
- 3.エンタープライズ契約
- 需要の適正化(削減余地20〜35%)
- 4.リソースプロファイリング
- 5.オートスケーリング
- 6.コンピューティング節約プラン
- 7.統制されたプロビジョニング
- アーキテクチャ設計(削減余地45〜70%)
- 8.サーバレス/コンテナ
- 9.プロセッサアーキテクチャ
- 10.SKU(製品の管理単位)標準化
- 11.ハイブリッド構成
- 12.BCDR(事業継続・災害復旧)要件
- 13.開発・テスト向け割引料金
A.T. カーニーは、実装の難易度と効果を見極めた上で、まずは6つのクイックウィン(すぐに効果が出る未実施の施策)を優先することを勧めている。
具体例として、予測可能なワークロードに対する1〜3年のリザーブドインスタンス契約では、仮想マシンなどのIaaS(サービスとしてのインフラ)で50〜75%の削減が見込まれる。
オートスケーリングでは、ある大手小売企業が繁忙期に容量を拡張し、閑散期に縮小することで5〜10%の削減を実現したという。
適合するワークロードを省電力のArmベースのインスタンスへ選択的に移行することで、仮想マシンのコストを10〜20%以上削減できる可能性もある。いずれも条件付きの数値であり、効果はワークロード構成に左右されるとしている。
インパクトの大きい8〜10の重点施策を絞り込む
最適化を実行に移すには、過去に実施した施策と残されたクイックウィンを確認するとともに、部門横断でのFinOps成熟度評価、高コストアプリケーションのリソース割り当てと利用率の検証を行う。その上で、コスト削減とFinOps高度化の両面で自社にとってインパクトの大きい8〜10の施策を特定する。
短中期の削減施策と、支出額・支出先を継続的に可視化・統制する能力を組み合わせることで、クラウドがもたらす事業成果を適正なコストで実現するための基盤を整えるとしている。
A.T. カーニーが紹介する個別事例では、コンピュート、ストレージ、ネットワーク、データベースのワークロードを最適化することで、年間のクラウド支出を100万ドルから約70万ドルへ30%削減している。削減幅が最も大きいのはコンピュートで、60.0万ドルから37.6万ドルへ下げた。インスタンス数は150から122に減っている。
A.T. カーニーは、FinOpsツールは可視化や自動化を支える一方、ツールを導入するだけでは十分ではなく、継続的な運用能力として定着させることが重要だとしている。
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