開発者の84%が「AIコーディングによる生産性向上」を実感――だがその効果をどう測定?:ソフトウェア開発におけるAI利用状況、GitKrakenが調査
Gitクライアントツール「GitKraken」を手掛けるAxosoftは、ソフトウェア開発におけるAIの利用状況調査結果をまとめたレポートを公開した。AIによる生産性向上を実感する開発者が増える一方、その効果はどこまで測定できているのか。
AIコーディングツールの利用が当たり前になりつつある中、開発現場では実際にどの程度の効果が生まれているのか。企業はその効果をどこまで把握できているのか。
Gitクライアントツール「GitKraken」を手掛けるAxosoftは2026年8月20日(米国時間)、ソフトウェア開発におけるAIの利用状況調査結果をまとめたレポート「THE STATE OF AI IN ENGINEERING」を公開した。
この調査は、GitKrakenの顧客とユーザーコミュニティーを対象に2026年に実施。小規模チーム、中堅企業、大企業に所属する開発者と開発リーダーなど554人が回答した。なお、AxosoftはGitKrakenの名称で事業を展開しており、以下ではAxosoftを「GitKraken」と表記している。
「AIで生産性が向上」は84%、その効果を測定できている組織は?
AIコーディングツールの活用が広がる一方、その効果を「実感すること」と「実際に測定すること」の間には、どの程度の隔たりがあるのか。
レポートによると、96.4%のチームがAIコーディングツールを導入しており、GitKrakenは、ソフトウェア開発へのAI導入は、開発チームや部門でもはや当然となっていると述べている。
開発者の84%が、AIによって「生産性が向上した」と答えている。「大幅に向上した」が43%、「ある程度向上した」が41%だった。「生産性が低下した」と答えた回答者は5%に満たない。
ところが、何らかの方法で生産性を測定している組織は、全体の20%にとどまる。39%の組織は、AIの効果を測定する手段がないとしており、33%は、「AIが役立っている」という開発者自身の報告をうのみにしている。
GitKrakenは、開発者がAIの効果を実感しているものの、多くの組織がその効果を証明できていないというギャップを指摘する。これでは、財務責任者など経営幹部は、「AI投資によってどのようなリターンがあるのか」「どのツールに投資する価値があるのか」といった判断ができないと、同社は述べている。
エージェント化が重要な焦点に
ソフトウェア開発におけるAIの使い方は、コード補完からタスク全体のエージェントへの委任、複数エージェントの並列実行まで多岐にわたる。
レポートによると、2025年9月時点では開発者のわずか7.6%が、主な働き方としてエージェントへのタスク委任を挙げていた。だが、2026年6月までにその割合は28%に達し、9カ月で約4倍に跳ね上がった。現在では開発者の3人に2人が、少なくとも時々エージェントを稼働させている。
レポートは回答者を3つのグループに分け、各グループの回答者が、AIによって「生産性が大幅に向上した」と答えた割合を比較している。この3グループは次の通り。
- アシスティブユーザー:並列エージェントを使わない
- エマージングユーザー:エージェントを試している
- エージェントネイティブチーム:並列エージェントを日常的に使用している
「大幅に生産性が向上した」と答えた割合は、アシスティブユーザーが28%、エマージングユーザーが44%、エージェントネイティブチームが62%だ。
エージェントは常時稼働へ
エージェントは、必要なときに呼び出すツールから、背後で動き続けるインフラへと変わりつつある。エージェントを就業時間中ずっと稼働させている開発者は34%、一部の時間だけ稼働させている開発者は42%で、4人に3人以上が日中にエージェントを動かしている。
一方、エージェントを全く使っていない開発者は22%。24時間動かし続けている開発者は2%だ。
大企業ほどエージェント活用が活発
小規模で機動力のあるチームでエージェント活用が先行しているという想定とは逆に、就業時間中ずっとエージェントを稼働させている開発者の割合は、大企業で47%に達したのに対し、小規模企業と中規模企業ではいずれも32%だ。
企業規模が大きいほど、AI運用体制の整備が進んでいる。AIの効果を測定する手段がないと回答した割合は、小規模企業の47%に対し、大企業では19%にとどまる。DORA(DevOps Research and Assessment)などのエンジニアリング指標を利用している割合は、小規模企業では6%、大企業では21%だ。
承認済みツールリストの使用率も、小規模企業の25%に対し、大企業では42%に達する。一方、開発者が完全に独自の判断でツールを選ぶ割合は、小規模企業では34%だが、大企業では14%にとどまる。
エージェント利用の進展度を映すツール選択
利用するAIツールによって、エージェントの活用状況にも違いが見られた。「Codex」と「Cursor」の利用者は、並列エージェントを日常的に動かしている割合がそれぞれ45%、41%で、就業時間中ずっとエージェントを稼働させている割合も5割近くに達した。いずれも調査対象ツールの中で高い水準だった。
これに対し、「GitHub Copilot」と「ChatGPT」の利用者は、どちらの割合も最も低い部類に入り、「Claude Code」は、CodexおよびCursorと、GitHub CopilotおよびChatGPTの中間に位置する。
AIの効果を測定し、高めるポイント
レポートは、AIの効果を測定し、高めるポイントとして、AIの活用が最も進んでいた回答者グループの実践を基に、4つの取り組みを挙げている。
- AI利用を拡大する前に基準を設定する。デリバリーと品質に関する指標を把握し、変化が可視化されるようにする
- エージェントの利用度をAI活用の成熟度の目安として位置付け、「アシスティブ」から「エマージング」、さらに「エージェントネイティブ」へと段階を進めることを、明確な目標にする。将来的には「エージェント最適化」を目指す
- 組織として、ツールとその背後にあるモデルを、出力の品質とコストの観点から比較検討する
- 人やチームだけでなく、エージェントについても、コスト、サイクルタイム、レビュー負担、およびリリースされた成果物が期待に応えているかどうかを測定する
AIコーディングツールの利用が広がる中、次の焦点は「AIを使うこと」ではなく、「AIによって何が、どの程度改善したのか」を把握することに移りつつある。GitKrakenは、AI活用を拡大する上では、こうした効果を継続的に測定できる仕組みを整えることが重要だとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「PRが増えた=開発生産性が上がった」ではない AI時代のDevExを測る“3つの観点”
Datadogは、AI時代における開発者体験(DevEx)の測定手法を公式ブログで解説した。AIコーディングアシスタントの普及で、個人のコード生成量は生産性と結び付かなくなっていると指摘している。
無料でAIコーディングの利用状況、トークンコスト可視化 オープンソースのMCPサーバ「Preflight」公開
New RelicはAIコーディングの利用状況やコストを可視化するMCPサーバ「Preflight」をオープンソースで公開した。トークン浪費をはじめとするAIコーディング特有の課題解決を支援するという。
「APIキーは.envに」はもはや通用しない AIエージェントの“内通者化”をどう防ぐ?
AIエージェントの活用が広がるのと同時に、APIキーやトークンなどの認証情報も増殖。セキュリティリスクは高まり、従来の認証情報の管理方法は限界を迎えつつあります。では、どう守ればよいのでしょうか。
AIコーディングが日常化、だが「コードを信頼できない」「検証もやり切れない」
Sonarは、1100人以上の開発者を対象とした調査結果を発表した。開発者の72%がAI コーディングツールを毎日利用している一方、出力を完全に信頼している層は4%にとどまった。



