[DB Interview]
最新RDBMS選びのポイント 〜情報系システム〜(後編)
データベースとBIの“微妙”な関係を理解しよう
アイエイエフ コンサルティング
平井明夫
2006/8/8
本記事は前後編にわたり、ビジネス・インテリジェンスやデータウェアハウスといった情報・分析系システムにおけるRDBMSの製品選択のポイントを検証する。お話を伺ったのはBIシステムのコンサルティングでは第一人者の平井明夫氏である。後編は、RDBMS製品とシステム全体との関係を明らかにする。(編集部)
■BI専門ベンダ対データベース・ベンダという視点
前編「大規模データベースの“定説”をバッサリ切る」ではオラクルとマイクロソフトを軸に、1990年代から現在に至るデータベース市場の変遷と背景をお話ししました。しかし、情報系システムの「BI(ビジネス・インテリジェンス)分析」「OLAP」「レポーティング」、最近のはやりでは「パフォーマンスマネジメント」(企業業績管理)といった、どちらかというとアプリケーション的な世界になってくると、単純にRDBMSの性能競争だけを語っても意味がありません。
面白いことに、情報系システム分野へのアプローチという側面からいうと、一般に対立した立場にあるとされているオラクルとマイクロソフトは、どちらも「データベースをメインとしてBIを考えるベンダ」という意味では、同じ土俵に立っているのだと考えられます。というのも、この分野にはBIツールに特化してニッチ市場を押さえている強豪ベンダが存在します。そうしたベンダとの差別化という点では、オラクルとマイクロソフトは同じスタンスに立たざるを得ないのです。
BIに特化したベンダへの対抗策を具体的にいえば、RDBMS製品へのBIツールのバンドルをひたすら進めるということです。バンドルされたコンポーネントは、無料であったり、オプションであったり、別製品であったりしますが、基本的にはオラクルやマイクロソフトの自社RDBMSとの一体型というスタンスを打ち出していくのです。
これは強力な“BI専門ベンダつぶし”になります。過去にはETLツールで同じ例がありました。ETLツールはかつて専業ベンダがいくつも存在しましたが、現在ではほとんどありません。大手ベンダのRDBMS製品に無料でETLツールがバンドルされた結果です。タダで付属していて、しかも標準ツールとして開発されているため、そのRDBMSへの親和性も高い。わざわざ専門ベンダにお金を払って買う人はいません。ETLベンダにとって、複数のRDBMS製品に適応する複雑な製品をわざわざ開発するメリットがなくなってしまったのです。
これと同じことが現在、BIツールにも起こっているのです。オラクルやマイクロソフトのRDBMS製品にBIツールが付いているのだから、わざわざ別のベンダ製ツールを買う必要がないという理屈です。
特にミッドレンジ以下の領域にこの傾向は顕著で、RDBMSにバンドルされたBIツールの方がシェアを拡大しているという実感があります。SQL ServerのAnalysis ServicesやReporting Servicesもかなり使われているようですし、OracleでもDiscoverer(Fusion MiddlewareのBIツール)なども同様に使われているようです。
■Office統合で攻めるSQL Server、OracleはERPからアプローチ
そういうわけですから、市場へのメッセージも両社同じです。例えば「Oracleを知っていれば使える、作れる」という説得です。同じくSQL ServerのReporting Servicesでは「結局Visual Studioでレポートを作るんだから、.NET Frameworkの開発者なら新たに何か勉強する苦労はない」といういい方ですね。
こうしたメッセージというのは、ミッドレンジから下の層にはかなりの説得力があると思います。中小の企業には、BI専用の要員を確保したり育てる余裕はないからです。データベースの保守運用を手掛けている人にとって、いままで習得したRDBMS製品の技術の延長線上でBIツールも使えるといったメッセージは、このユーザー層に対しては非常に説得力があるし、事実でもあります。
特にマイクロソフトのビジネスでは、SQL Server以上にOfficeやWindowsの方が比重が大きい。現在はこれらとSQL Serverを統合していこうという流れになっています。とりわけExcelをデータベースのフロントツールに据えようという戦略を非常に強く意識している昨今の状況は象徴的です。Officeの次期バージョン「2007 Microsoft Office system」になれば、「Officeとデータベース=SQL Serverとの統合」という視点はさらに明確なものになり、コンパクトで統合された環境を実際の製品レベルで強く打ち出してくるでしょう。
対照的なのがオラクルです。オラクルがデータベースの次に力を入れているのは、ERP(企業資源計画)です。Oracle E-Business Suiteというブランドの下、BI、ERM、CRM、SCMといった複数のビジネス・アプリケーションがラインアップされています。この企業戦略の帰結として、オラクルにとってのBIは、いかにERPにBI的な要素を盛り込むかというのがテーマになってくるのです。RDBMSを持つ強みをテコに、バックエンドでデータ統合ができますよといって、自社のERPでユーザー企業の業務アプリケーションを囲い込むわけですから、当然情報系システムもそのメリットを享受して、「アドホックに情報分析が可能になります」というのが、現在盛んにオラクルが発信しているメッセージなのです。
こうした背景を踏まえると、単純にオラクル対マイクロソフトという図式で考えられるのは、最先端の大規模エンタープライズ・データベースだけのことです。情報系ソリューションという全体的な枠組みでは、もっと大きな視点を持った方がよいでしょう。ある部分ではクリティカルに対立しているところもあれば、ある部分では呉越同舟でうまく共存している領域もあるわけですから、単純な視点でどちらが優位とか、勝ち負けばかりを考えるのはあまり意味がありません。
あくまでコンピュータは箱にすぎませんから、シェア争いで優位に立つ製品だからといって、それを導入すればすべて解決というわけではないのです。入れただけでなく、いかに活用するかが大事なのであって、1秒間に何トランザクション処理すれば勝ちとか、可用性の99.999……の「9」をいくつ並べればいいのかというだけの問題ではありません。
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[DB Interview] 最新RDBMS選びのポイント 〜情報系システム〜(後編) データベースとBIの“微妙”な関係を理解しよう |
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Page 1 ・BI専門ベンダを駆逐したデータベース・ベンダ ・Office統合で攻めるSQL Server、OracleはERPからアプローチ |
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2 ・BIツールはパワーユーザー向けから誰でも使えるツールに ・特殊な分野の特殊なニーズに応える生き残り条件とは? |
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Page 3 ・データベースの近未来をキャッチアップする眼を養っておこう |
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