最新RDBMS選びのポイント

[DB Interview]
最新RDBMS選びのポイント 〜情報系システム〜(後編)

データベースとBIの“微妙”な関係を理解しよう

アイエイエフ コンサルティング
平井明夫
2006/8/8

BIツールはパワーユーザー向けから誰でも使えるツールに

 BIという言葉は、ハワード・ドレスナー氏という元ガートナーのアナリストが、1980年代の中期に提唱した言葉です。それまでのBIのユーザーはいまでいうパワーユーザーに限られていました。まだクライアント/サーバ全盛の時代で、EUC(End User Computing)とかEUD(End User Development)という言葉がはやっていたころでした。クライアントにまとめてアプリケーションを入れて、データベースだけをサーバに置いて、ODBCでつないで使っていた時代です。クライアントでBIを使おうとすると、ユーザーインターフェイスが複雑でしかも高価になりましたが、ディープな分析ができました。従って販売する側も、そうしたディープな分析を得意とする専業ベンダがほとんどだったのです。

 その後インターネットの普及でWebシステムが登場し、ブラウザをインターフェイスに使うことが主流となりました。しかし既存のBIツールの多くはクライアント/サーバシステムの機能をそのままブラウザに移行しただけで、一般ユーザーには簡単に使いこなせるものではなかったのです。そこに出てきたのがSQL ServerのReporting Servicesのような“誰でも使える”簡単なBIツールです。

 また、Webシステムに移植したBIツールは同時接続ユーザー数が非常に多くなるので、どうやって多数のリクエストを処理するか、つまりWebアプリケーション的なアーキテクチャの難しさが、開発する側にはありました。開発のアプローチががらりと変わってしまうと、これまで少数のパワーユーザーだけを念頭に置いて開発してきたBI専門ベンダは必ずしもうまく切り替えられるとは限らず、淘汰が進んでいったのです。

 最近増えてきたのが、パフォーマンスマネジメント関連のソリューションです。経営者向けにシグナルやメーター表示といった直感的なインターフェイスを提供する、いわゆるバランススコアカードとか経営ダッシュボードといった機能です。この分野ではコンプライアンスとか日本版SOX法といった、経営層にとってのBI分析ツールの必要性も追い風になっているといえます。

 こう話してくると、メジャーなRDBMSベンダがBIツールに手を染めたのはごく最近のように聞こえますが、実はオラクルもマイクロソフトも、BIに着眼してデータベースの機能に取り入れてきた歴史は非常に古いのです。オラクルのOLAPツールも導入されたのは10年以上前のことです。SQL ServerのAnalysis Servicesも同じくらいの歴史を持っています。

 といっても、彼らだって別に最初からBIをやろうと考えたわけではありませんでした。こうした着眼は、あくまで多次元“データベース”という観点からです。つまりデータベース全般を手掛けるベンダの立場から、「データの入出力」という機能の一環で、ニッチではあるけれども重要な分野としてBIに着眼していたのです。なので、当初はBI的なフロント側ツールにはあまり手を出さずに、あくまでデータベース側の1分野として取り組んでいたのです。

 現在は反対に、データベース自体が、BIに限らずあらゆるデータを取り込む方向に向かっていますね。すべてのデータの入れ物としてデータベースが存在するというメッセージは、新しいように見えますが実はデータベースの最初からあった基本の考え方です。

 メジャーベンダの2社が最近になってBIに力を入れ始めているのも、単にBIだけを前面に押し出しているというよりは、データベースの進化の道のりにおいて、データベースに対するさまざまなニーズを満たす取り組みの一環と考えられます。そのために特化されたサービスの1つとして、BIもまた存在すると考えるのが正しい見方でしょう。

特殊な分野の特殊なニーズに応える生き残り条件とは?

 オラクル、マイクロソフト以外にも、これまでにさまざまなデータベース製品が登場して、消えていったもの、いまだ健闘しているものがあります。これを単なるシェア争いの結果として見るのではなく、その製品の存在意義や必然性から見るというのも大切なことと思います。

 では、そうした栄枯盛衰の流れの中で、独自性を守りながら生き残っていくのはどういう製品かというと、“オプティマイズしきれない部分に特化した製品”だといえます。

 実はRDBMSというのは、DWH(データウェアハウス)の利用形態の1つにすぎません。つまり、データベースに汎用的に求められる多様な機能の一部を実装したサブセットなのです。OracleやSQL Serverといったメジャーな製品も同様です。これらは汎用データベースの機能の一部をエンハンスして、製品として利用しているのです。

 データベースにおいて、汎用性と個性は二律背反の関係にあります。汎用性を保つためには、オプティマイズできない限界領域が残ってしまいますが、これを逆手にとって「ウチはこの部分しか使わないんだから、ほかの汎用的な部分は捨ててしまって構わない」と割り切って、目指す機能だけをとことんまでオプティマイズしてしまった製品が、ここでいう「未来も生き残るデータベース」になれるのです。

 ニッチではあるけれども、メジャーな製品が太刀打ちできないコンピテンシーを持った製品は、独自の世界を守っていくことができます。よい例としては、過去にはRed Brick(現在はIBMの製品)がありましたし、現在も活躍しているものではNCRTeradataなどがあります。この製品はトランザクション性能などは意識せずに、ただひたすらデータウェアハウスを究めている製品です。また新しいところでは、データウェアハウス・アプライアンスのNetezza Performance Serverのような、半分ハードウェア一体型に近いような製品も出てきています。

 こうした製品の独自性は、これまた数は少ないけれども切実なユーザーニーズによって支えられています。例えば「とにかくクエリを速くしたい」とか「ウチの業務はデータ量が膨大なのだ」といった、何かしら特殊な業種・業態というのがあります。そういう狭い分野に限っては、競合が少ないので、上手にマーケティングできればハイエンドから中堅規模まで幅広いマーケットをつかむことが可能です。それが生き残るための条件となるのです。

 というよりも、もともとこうした狭い領域で特異な能力を発揮するデータベースというのは、「汎用データベースでは無理だが、こういうことがどうしてもしたい」というニーズがあって、「それでは」ということで作ったアプリケーションが出発点になっているケースが多いのです。つまり生まれたときから、特殊事例だったというわけです。まずテクノロジありきという観点から誕生しただけに、マーケティング的にはオラクルやマイクロソフトの大手ベンダ製品とは、まったく異なった道を歩んでいくことが運命づけられているともいえます。

2/3

 Index
[DB Interview]
最新RDBMS選びのポイント 〜情報系システム〜(後編)
 データベースとBIの“微妙”な関係を理解しよう
  Page 1
・BI専門ベンダを駆逐したデータベース・ベンダ
・Office統合で攻めるSQL Server、OracleはERPからアプローチ
Page 2
・BIツールはパワーユーザー向けから誰でも使えるツールに
・特殊な分野の特殊なニーズに応える生き残り条件とは?
  Page 3
・データベースの近未来をキャッチアップする眼を養っておこう


[DB Interview]


Database Expert フォーラム 新着記事
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)

注目のテーマ

Database Expert 記事ランキング

本日月間