第4回 ソースコードまで踏み込んでビューをカスタマイズ
オープンソースのSFA/CRMアプリケーション「SugarCRM」は、利用者に合わせてカスタマイズを加えていくことで、より真価を発揮することができます。この連載では、ソースコードの内容を把握した上でさまざまなカスタマイズを加えていくまでを紹介します(編集部) |
河村 嘉之
オープンソースCRM株式会社
2008/12/18
前回「ソースコードを読む前に知っておきたい基本動作」では、SugarCRMの基本動作について説明しました。SugarCRMでは、バージョン5.0からMVCパターンに基づいてアプリケーションが設計されています。そのため、アプリケーションは、表示を担当する「ビュー」、データとロジックを担当する「モデル」、それらをコントロールする「コントローラ」に分離されて構成されています。
今回は、ビューの部分にフォーカスして、どのように表示する画面が生成されるか、そしてそれをカスタマイズするためにはどうすればよいかなどを説明していきます。
カスタマイズを保護する「アップグレードセーフ」
初めに、SugarCRMにカスタマイズを加える際に、どのようにファイルを修正すればいいか考えてみましょう。
SugarCRMは、ソースコードが入手可能なため、ソースコードを変更してカスタマイズを加えることができます。実装言語としてPHPを使用しているため、SugarCRMをインストールしたディレクトリにあるファイルを編集することにより、すぐにその変更がアプリケーションに反映されます。
一方、リリース後に見つかった不具合などの修正のため修正パッチが提供され、それを適用することにより、アプリケーションの問題点が修正されていきます。
インストールされたSugarCRMのソースコードをカスタマイズのために編集し、その後、修正パッチを適用すると、カスタマイズ対象のファイルと修正パッチの変更対象のファイルが同一となる可能性があります。このような場合、カスタマイズしたファイルが上書きされてしまう危険性があります。SugarCRMでは、このような状況に対応するため、アップグレードセーフなカスタマイズの仕組みを持っています。
例えば、連載の第2回で説明したスタジオ機能を用いて、既存のモジュールのレイアウトなどに変更を加えたとします。このような変更によって、もともとのソースコードが直接変更されてしまうような仕組みを取っていると、パッチを適用した途端にカスタマイズによる変更が上書きされ、消えてしまう可能性があります。では、このような後から加えられた変更はどこに保持されるのでしょうか?
実際にはこのような変更は、SugarCRMをインストールしたディレクトリの下のcustomディレクトリに保存されています。
このcustomディレクトリに保存されたファイルは、パッチによる修正やバージョンアップの際にも上書きされることはありません。customディレクトリ以下に特定の名前付けルールに従って配置されたファイルは、デフォルトの挙動を記述したファイルよりも優先してアプリケーションに読み込まれます。そのため、コントローラの挙動を変えたり、ビューで生成される画面の配置を変更したり、モデルで実行されるロジックを変えるなど、アプリケーション独自のカスタマイズを加えたい場合は、このディレクトリに変更を加えたファイルを置くことにより、そのコードが実行されることになります。
このようにSugarCRMでは、customディレクトリに名前付けルールに従ってファイルを配置することによって、パッチやバージョンアップなどに上書きされないアップグレードセーフなカスタマイズの仕組みを提供しています。
一方、このディレクトリに配置されたファイルは、パッチによる修正やバージョンアップによるロジックの変更に追随しません。そのため、パッチ適用後やバージョンアップ作業後は、custom以下に保存されているファイルとアプリケーションのロジックの整合性が取れているかを確認してください。
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