すぐに使える、手軽に使えるクラウド上のMySQL
Amazon RDSの使い方
オープンソースのRDB「MySQL」をクラウド上で利用し、ニーズに応じて簡単にインスタンスを増やせる「Amazon RDS」(Amazon Relational Database Service)。その特徴と使い方をご紹介します。(編集部) |
TIS株式会社 SonicGarden
並河 祐貴
2010/4/12
Amazon Web Servicesのニューフェイス
大手パブリッククラウドサービスの1つであるAmazon Web Servicesは、2009年以降も続々と新しいサービスや機能を発表し、日本でもますます注目を集める存在となっています。
Amazon Web Servicesは、仮想サーバを1時間単位の従量制で利用できるAmazon EC2や、1GB単位からの従量制ながら、高信頼性のオンラインストレージが利用できるAmazon S3などを中心とした、IaaS(Infrastructure as a Service)の代表格です。
そのAmazon Web Servicesが2009年10月に、クラウド上でRDBを利用できるサービス「Amazon RDS」(Amazon Relational Database Service)を発表しました。
MySQLをクラウド上で
Amazon RDSでは、オープンソースソフトウェアのRDBであるMySQLをクラウド上で利用することができます。このサービスを利用することで、ユーザーは以下のことを意識せずに、MySQLの運用が可能となります。
- MySQLのセキュリティパッチの自動適用
- バックアップの自動実行
また、通常であれば別の仕組みが必要となる以下のような機能についても、Amazon RDS側に準備されているAPI経由で容易に実行可能です。
- DBサーバのスケールアップ/ダウン(CPU、メモリなどのリソース増減)
- 任意のタイミングでのバックアップ(スナップショットの取得)
- DBの基本的な設定(サーバリソースに合わせ最適化されている)
- セキュリティ機能(AWSのSecurity Groupsが利用できる)
上記は、どれもDBを持つWebサービスの運用に欠かせない機能であり、運用上の面倒事をAmazon RDSサイドにアウトソースすることで運用コストを下げ、開発者はそれらの浮いたコストをサービスの開発・運営やビジネスへの取り組みに充てることが可能となります。
また、ほかのAmazon Web Servicesのサービス同様、利用においては初期費用が不要で、完全従量制の課金体系であり、必要になったときに数分でデータベースが準備できるといった迅速性も兼ね備えています。
Amazon Web Servicesでは、DBのサービスとしてすでに「Amazon SimpleDB」が存在していますが、今回紹介する「Amazon RDS」では、SimpleDBのような独自仕様のDBではなく、世間で広く使われているRDBである「MySQL」を利用できます。従って、既存のアプリケーションをそのまま移行したり、既存の開発手法・資産でアプリケーションを構築していきたい場合に利用価値があります。
いくつかの制約
Amazon RDSは現時点でベータ版のサービスです。将来的に改善される可能性もありますが、現時点では利用するうえで以下のような注意点があります。
- DBレプリケーション機能が利用できない
- OSやDBのエラーログが見られない
- DBの設定変更時には、サーバリブートが必要(設定変更には停止を伴う)
- 週1回のAmazonによるメンテナンス時間がある(無停止にできない)
このようにAmazon RDSでは、自分でMySQLの環境を構築する従来の手法と比較し、多数のメリットが存在しますが、上記のような注意点も存在します。レプリケーション機能を利用したい場合や、バックアップ時などの数分間のDB停止が許容できない場合は、Amazon RDSの利用は現状では難しいといえます。
しかしそれが許容できる場合は、手軽な料金(後述します)から使い始めることができます。意外と時間のかかるMySQLのセットアップや設定作業から解放される上、面倒なシステム運用面のアレコレに手間を割く必要がないことは、開発者にとって大きなプラスになるはずです。ぜひ試してみてください。
サーバスペックと料金体系
Amazon RDSの利用料金は、初期費用が無料で、以下の4つの項目による従量課金制となっています。
- 起動するサーバの種類および起動時間
- DBで利用するストレージの容量およびI/Oリクエスト数
- バックアップデータの利用容量
- データ転送量
1つ目の起動するサーバの種類および起動時間による料金表は以下のとおりです(表1)。最もスペックの低い「Small DB Instance」を利用すると、1時間当たり0.11ドル(十数円程度)から始めることができます。
※EC2 Compute Unit(ECU)はOpteronもしくはXeonの1.0〜1.2GHzクラスに相当 |
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表1 サーバスペック料金表 |
2つ目のDBで利用するストレージの容量およびI/Oリクエスト数への課金については、ストレージ1GB当たり0.10ドル/1カ月、100万I/Oリクエスト当たり0.10ドルです。
3つ目のバックアップデータの利用容量への課金は、1GB当たり0.15ドル/1カ月です。
4つ目のデータ転送量に関する料金表は、表2のとおりです。
※インバウンド通信については、転送量に関わらず2010/06/30まで無料。 |
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表2 データ転送量による料金表 |
これら4つの項目の利用料金を合計した料金が、Amazon RDSの利用後に支払う費用となります。
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