DRBD+iSCSI夢の共演(後編)
〜 OSの壁を越えたソリューション 〜
Linux上で動作するオープンソースソフトウェア「DRBD」とiSCSIを組み合わせ、部門内のWindows端末のデータをバックアップするシステムを構築してみよう(編集部) |
株式会社サードウェア
岩崎 登
2008/8/26
DRBD+iSCSI夢の共演・前編では、DRBDでミラーリングされたボリュームをiSCSIで公開する環境を構築するところまでを解説したが、後編では実際の運用に焦点を当てて解説をしていく。
一言に運用といっても、利用する目的や環境によってその方法はさまざまだ。DRBD+iSCSI環境を構築する場合においては、データの保全と保護を主たる目的とし、データの個別管理が起因となる情報漏洩や、ハードウェアの故障によるデータの損失から重要なデータを守る運用を意識しなければならない。
今回は、データの集中管理に必要なiSCSIイニシエータの利用方法や、ハードウェア故障によるデータ損失が生じた場合のデータ復旧方法を紹介する。
Windows iSCSIイニシエータの準備
iSCSIターゲットにアクセスするには、「イニシエータ」と呼ばれるターゲットを制御する仕組みが必要になる。
Windows Vistaには、ターゲットにアクセスするためのソフトウェアイニシエータが標準でインストールされており、特別な装置やソフトウェアのインストールは不要だ。そのほかのWindows環境では別途イニシエータが必要になるが、MicrosoftのホームページからWindows2000 SP4/XP SP2/Server 2003 SP1に対応したソフトウェアイニシエータ(英語版)が無償でダウンロードできる。
「Microsoft iSCSI ソフトウェアイニシエータ」はコントロールパネルから起動することができる。
画面1 Microsoft iSCSI ソフトウェアイニシエータの起動 |
■イニシエータの名前を設定
iSCSIターゲットとiSCSIイニシエータの接続は、iSCSIネームで管理されている。iSCSIターゲット同様、イニシエータ側にも名前を指定する必要があり、[全般]タブから[変更]ボタンを押し、イニシエータ名を指定する。イニシエータ名は、ターゲット名同様の書式で指定する。
■ディスカバリの設定
名前の解決にはいくつかの方式が存在するが、この記事ではディスカバリ・セッションを使用するため、検索(Discovery)タブにあるターゲットポータルに、ターゲットを構築したサーバのIPアドレスとポート番号を入力する。
画面2 ディスカバリの設定 |
■iSCSIターゲットへのログオン(マウント)
iSCSIイニシエータのディスカバリに正しくiSCSIターゲットのIPアドレスとポート番号を指定すると、ターゲットタブに、利用可能なiSCSIターゲットが表示される。ターゲットを選択し、「ログオン」ボタンを押すことでターゲットにログオンできる。今回はIDやパスワードを設定せず、セキュリティの設定はイニシエーターIPの許可のみで行っているので、特に何も指定することなくターゲットとのコネクションが確立される。
ログオンに成功すると、WindowsがiSCSIボリュームをドライブとして認識し、ディスク管理ツールよりフォーマットできる状態となる。
ここからは通常のローカルディスクドライブと同様に扱うことができる。[コントロールパネル]→[管理ツール]→[コンピュータの管理]からディスク管理ツールを選択し、通常のディスクドライブと同様な方法で、NTFSでフォーマットして使用できる。
画面3 iSCSIターゲットのマウント |
管理ツール「tgtadm」
iSCSIターゲットの設定はすべて、設定管理ツール「tgtadm」コマンドで行う。tgtadmで設定可能な項目は主に以下の通りだ。
- ターゲットの動作状況の確認
- ターゲットの登録と削除
- ロジカルユニットの登録と削除
- イニシエータIPの登録と削除
- アカウントの登録と削除
SCSI target utilsでは、サービスを停止させると設定した内容がすべて初期化されてしまう。そこで、毎回公開するたびに同様の設定を行う場合は、一連の処理をシェルスクリプトやそのほかのスクリプト言語で書いておくと便利だ。
■ターゲットの動作状況の確認
公開するボリュームやイニシエータを登録したら、それが正常に登録されているかを確認する。以下のコマンドを実行することでターゲットの動作状況を常時確認することができる。
# tgtadm --lld iscsi --op show --mode target |
表示される情報は以下の通りだ。
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