連載:IEEE無線規格を整理する(7)
〜ワイヤレスネットワークの最新技術と将来展望〜

コンセントでホームネットワークを構築する電力線通信


千葉大学大学院  阪田史郎
2006/3/2

(2) UPnP(Universal Plug and Play)

 UPnP(Universal Plug and Play)は、1998年にサン・マイクロシステムズのJiniに対抗する意味合いでマイクロソフトによって提案されたホームネットワークのための規格であり、文字通り、購入した情報家電機器群を、接続即利用できるようにすることを狙いとする。ネットワークに接続される各種機器の検出と各種の設定を自動化し、主に一般家庭の利用者が利用しやすいネットワーク・プラットフォームを提供する。例えば、DVDで映画を観るために、DVDプレーヤの電源を入れると、スクリーンが天井から下りてプロジェクタのランプが点灯し、カーテンが閉まって照明が暗くなり、エアコンもONになって映画の再生、投影が始まる、というような複数の機器の連携動作も可能となる。

 UPnPにかかわる仕様の議論を行うためのオープンな業界組織として、UPnPフォーラムが翌年1999年6月に設立され、2005年月末現在700強の企業、団体が参加している。

 UPnPの概念は、PCのアーキテクチャに採用されていたプラグ&プレイをネットワークのレベルにまで広げようとするものであり、機器のアドレッシングと検出、機器の機能の記述とその公開、制御とイベント処理などの基本仕様を定めている。これらの基本仕様は、インターネットで広く採用されているTCP/IP、 HTTP、 XML、 SOAPなどに加え、UPnPフォーラムで公開されているサービス発見のためのSSDP、 イベント を通知するためのGENAなどの独自の技術を組み合わせている。

 図1に、UPnPのプロトコルスタックを示す。

図1 UPnPのプロトコルスタック

(3) OSGi Alliance

 業界標準化団体のOSGi(Open Service Gateway initiative)アライアンスが推進する、Javaベースのソフトウェアコンポーネントを用いてネットワーク経由のサービスを実現するミドルウェア(OSGiサービスプラットフォーム)の仕様である。

 OSGiアライアンスは、もともとホームネットワークに関するプラグ&プレイ機能を1998年にサン・マイクロシステムズが世界に先駆けてJavaベースのJiniを発表し、その数カ月後にマイクロソフトがJiniとは互換性のないUPnPを相次いで発表した。そのため、1年後の1999年にサン・マイクロシステムズが中心となって、IEEE 1394上のHAVi(Home Audio Video interoperability)も含め、PC機器やAV家電を接続するためのさまざまなインターフェイス間の相互変換(ゲートウェイ)インターフェイスを規格化することを目的として発足した。OSGiアライアンスのメンバは、2004年10月現在約40団体で、ホームオートメーション、ホームセキュリティ、情報家電制御に加え、自動車制御、いわゆるテレマティクスの領域でも利用されている。

 現在のOSGiは、OSGiサービスプラットフォームによるダイナミックコンポーネントアーキテクチャの利点を生かせる他分野への利用促進に注力している。携帯電話から、PDA、PC、情報家電・ホームオートメーション、車載テレマティクス、ファクトリオートメーションなどにおいて、ネットワークに接続された機器に対し、標準化された手順に基づいて機器の動作を止めることなく、新しいサービスやデータの追加ならびに機能変更が可能となるミドルウェアプラットフォームの実現を狙いとしている。特に、携帯電話分野と車載テレマティクス分野の標準化団体との協力を活発化している。

 携帯電話分野では、i-modeやMIDP(Mobile Information Device Profile)に代わる次世代の携帯JavaプラットフォームとしてOSGiの利用が推進されている。OSGiの携帯ワーキンググループでは、端末ベンダのノキアとモトローラを中心に、携帯端末関連の業界標準化団体であるOMA(Open Mobile Alliance)と協力してリモート管理インターフェイスの規約化が進められている。

 車載テレマティクス分野では、この分野の業界標準化団体である、ヨーロッパのGSTと米国のAMI-C(Automotive Multimedia Interface - Collaboration)において、OSGiの採用が決定されている。また、当初携帯音楽配信における技術規格団体として設立されたUDAC(Universal Distribution with Access Control)コンソーシアムにおいても、次世代の車載JavaプラットフォームとしてOSGiを採用している。

 日本においても、国内におけるOSGiの推進と関連情報の共有、相互接続実験によるさらなる適用領域の拡大を目的として、OSGi ユーザフォーラムJapanが、NTT、シャープ、東芝、日本アイ・ビー・エム、NEC、三菱電機の6社により2004年9月に発足している。

 以上のほかに、白物家電を対象としたホームネットワーク規格を策定しているECHONET(Energy Conservation and HOmecare NETwork)コンソーシアム(ECHONETは日本で1996年に検討が開始され、ISOにも提案されている)、電話線を用いたホームネットワーク規格を策定するHomePNA( Home Phoneline Networking Alliance:1998年に米国に提案され徐々に普及。日本では集合住宅向けの利用が始まっている)、電力線を用いたホームネットワーク規格を策定するHomePlugアライアンスなどがある。

   国際標準化動向

 ITU-Tでは、2002年7月にSG9による“Architecture for MediaHomeNet that supports cable-based services”が、ITU-T勧告J.190として勧告化されている。この勧告は、もともと日本の宅内情報通信・放送高度化フォーラム(DHF:Digital Home Forum)が検討した「宅内ネットワーク基本モデル」に基づいて“Home Network Architecture”のTechnical Reportが2001年9月にSG9に提案され、その後日本案を基にSG9において策定されたものである。図2に、ITU-T勧告J.190のホームネットワーク基本アーキテクチャを示す。

図2 ITU-T勧告J.190のホームネットワーク基本アーキテクチャ

 また、ITU-TにおけるNGN(Next Generation Network)の検討グループにおいても、NGN@Homeの名で、ホームサーバ/ゲートウェイの機能、通信インターフェイスに関する国際標準化の議論を2005年に開始している。

 以上の業界標準化機関と国際標準化機関による主要な標準の関係を、図3に示す。

図3 情報家電のネットワーク化に関連する標準化同行(クリックすると拡大表示します)

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目次:IEEEを整理する(7)
  <page1> 1. ホームネットワークの標準化動向/(1) DLNA(Digital Living Network Alliance)
<page2> (2) UPnP(Universal Plug and Play) /(3) OSGi Alliance/国際標準化動向
  <page3> 2. 今後の動向/3. ホームネットワーク普及に対する課題/4. 2006年に利用が開始されるPLC



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