連載:アニメーションで見るパケット君が住む町(1)
パケット君が「情報」という商品を運ぶ町を探検しよう


綱野衛二
Roads to Node
2009/1/21


1-6 おさらい〜実際のネットワークに当てはめると

 各部署、階の説明が終わったところで、もう一度上から順番に見ていきましょう。

 じゃあ、「サーン市のバーナーズリー(株)のホームページのあの荷物を取ってきて!!」

HTTP課長「ホームページなら私の出番ですね。では、それに合わせた荷物のやりとりの手順を決めましょう。まず最初に相手に『この荷物が欲しいよ』ということを書いた荷物を送りましょう。荷物を作って……」

TCP課長「次は私です。荷物が確実に相手に届くようにしましょう。そのためには、相手まで荷物が届くこと、そして相手が荷物を受け取れることを確認しましょう。それがOKなら、荷物を送って、受領証をもらって……」

パケット君「話が長いなぁ。TCP課長から受け取った荷物に住所を付けて」
ルート君「ふむふむ。サーン市ならまずステーションに送ってくれたまえ」
ARP君「ステーションの場所はココっス」

イーサ配送君「了解。ステーションまでトラック1台。道は空いてるから出発!!」

図1-8 出発!!(右下のボタンで再生・停止ができます。Flash Playerが必要です)

 トラックが出発して、ジャンクションを経由してステーションに着きましたね。

イーサ配送君(ステーション勤務)「トラック1台到着。届けミスなし。荷崩れなし」
パケット君(ステーション勤務)「届け先はサーン市、バーナーズリー(株)か」
ルート君(ステーション勤務)「サーン市ならアロハ市のステーション経由かな。アロハ市なら列車で運ぶのがいいな。3番線で頼むよ」
PPP駅員「はいっ!! 運送列車出発しますっ!!」

 と、こんな感じでステーションを中継していってサーン市まで届くんですね。

図1-9 ステーションでの中継(右下のボタンで再生・停止ができます。Flash Playerが必要です)

 実際にネットワークに当てはめて考えましょう。

  • ビントサーフ市 …… ユーザーが使用するコンピュータがあるネットワーク
  • ホスト株式会社 …… ユーザーが使用するコンピュータ
  • ネットワークアプリケーション事業部 …… ユーザーが操作するアプリケーション
  • TCP/IP事業部 …… コンピュータの通信機能
  • 会社員 …… プロトコル・機能

 ユーザーはアプリケーションを操作して、ネットワークを使ったやりとりを希望します。

 ネットワークには、通信を行うためのルールがあります。これを「プロトコル(Protocol)」といいます。

 TCP/IPは現在のネットワークで事実上の標準(デファクトスタンダード:De Facto Standard)として使われているプロトコル群です。TCP/IPは複数のプロトコルの集合体です。

 このTCP/IPを使って通信が行われますが、「データが欲しい」といきなり送ることができるわけではありません。通信を行うための「段階」を踏んでいく必要があります。

 この段階をISOが標準化したものを「OSI参照モデル」と呼びます。OSI参照モデルでは、7つの段階に分け、それぞれの段階の役割をこなすことにより、通信がおこなわれることになります。この段階をレイヤ(層)と呼びます。レイヤは上から7〜1の番号がつきます。

 実際のTCP/IPでは、「TCP/IPモデル」と呼ばれるOSI参照モデルに似たモデルを使います。

  OSI参照モデルでの名称 TCP/IPモデルでの名称 ホスト株式会社での部門 役割
7 アプリケーション層 アプリケーション層 サービス部門 アプリケーション層 サービスの提供。通信手順の決定
6 プレゼンテーション層
5 セッション層
4 トランスポート層 トランスポート層 商品受発注部4F 信頼性の高い通信を実現
3 ネットワーク層 インターネット層 商品受発注部3F ネットワーク間の通信を実現
2 データリンク層 インターフェイス層 車両部 伝送の制御。ハードウェアの仕様など
1 物理層 インターフェイス層

 この「モデル」はネットワークを理解するうえでとても重要です。モデルにより、通信の「段階」を理解し、それぞれの段階のルール(プロトコル)が「なんのために」あり、「どのような機能」を持つのか分かると、ネットワークの理解がぐっと早まります。

 「通信するための手順」をまとめて考えるということは、「通信のやりとりの手順」「通信の確実性のシステム」「通信で使う住所」「回線の特性」などを一度に考えるということです。1つのプロトコルでこれを実現することも可能ですが。

  • 複雑になり過ぎる
  • 1カ所を訂正するときはすべての修正が必要になる

 そうではなく、「通信するための手順」を段階ごとにバラバラに考え、複数のプロトコルで実現することができるのがモデルの利点です。


パケット君「次回は道路とトラックの話をするよ!!」

次回もお楽しみに

パケット君が住む町と仕事
  プロローグ〜パケット君は配送会社の会社員!
1 ホスト株式会社の仕組み〜荷物は上から下に運ばれる
1-1 サービス部門〜Webサービス+名前解決+発注
  1-2 商品受発注課 4階〜性格の違うTCP課長とUDP課長
1-3 商品受発注課 3階〜本名は「IPパケット」
  1-4 2階 車両課〜イーサ配送君とパケット/ルート君の連携
1-5 1階 トラック・道路〜ハード面のルールを決める
1-6 おさらい〜実際のネットワークに当てはめると


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