標準化の完了した最新イーサネット規格
特集:10ギガビット・イーサネット大解剖
ギガビット・イーサネットの10倍の速度を誇る、10ギガビット・イーサネットの標準化が完了した。すでに先行して製品出荷を行っているメーカーもあるが、この標準化を機会に、より多くのメーカーが対応してくることになるだろう。今回の10ギガビット・イーサネットでは、CSMA/CDの事実上の廃止やWANへの対応など、高速化が中心だったこれまでのイーサネットの進化とは別の方向性を見せ始めた。本特集では、新たな進化の方向性を見せ始めた、10ギガビット・イーサネットの仕組みや最新情報、今後の展望について解説していく。 (編集局)
|
近藤卓司
ノーテルネットワークス
2002/7/17
Part.1 進化するイーサネット |
■進化するイーサネットはLANからWANへ
イーサネットがネットワークの基盤技術としてここまで浸透するとは、誰が予想しただろうか。イーサネットも、かつてはLANを実現する1つの方式にすぎなかった。現在では、企業のイントラネット・トラフィックの80%以上がイーサネットから発信されているといわれ、もはやLANの世界はイーサネット抜きには語れない。また、多くの通信事業者のネットワークにもイーサネット技術が用いられ、企業向けにイーサネットを広域に接続する通信サービスも提供されている。イーサネットがLANだけでなく、MAN(Metro Area Network)/WANを含めたネットワーク全体を構成するために、必要不可欠な技術となってきたのだ。これほどまでにイーサネットが市場に受け入れられた理由として、常に「最もコストが安く」「最も高速で」「最も簡単な技術」として進化してきたことが挙げられる。
もともとイーサネットは、同軸ケーブルを用いた10Mbpsの帯域を共有するバス型の構成からスタートした。当初のイーサネットではデータの衝突が発生する仕組みだったため、実際の使用効率は10Mbpsの30%にも満たなかった。また、衝突を検出するために伝送距離にも制限があった。配線の面からも決して使い勝手が良いとはいえなかった。ところが、電話回線と同じツイスト・ペア・ケーブルとハブを用いたスター型の構成が可能となったことで、一気に使い勝手が向上した。それに、全二重イーサネットを用いたレイヤ2スイッチの登場や、100メガビット・イーサネットの登場が続き、より高速な使用効率100%の帯域占有型へと進化してきた。さらに、光ファイバを用いたギガビット・イーサネットも登場し、LANだけではなく通信事業者のバックボーンにまで使われるようになった(図1・表1)。
図1 イーサネット進化の歴史。当初、ネットワークの接続に同軸ケーブルが用いられていたころは、バス型のトポロジを形成していた。やがて、扱いやすいツイスト・ペア・ケーブルとハブが登場してくると、ハブを中心としたスター型の構成を取るようになった。そして、レイヤ2スイッチの登場により、帯域共有型のネットワークは帯域占有型のネットワークへと進化していった |
|
||||||||||||||||||||||||||
表1 イーサネット進化の歴史的経緯 |
10ギガビット・イーサネットは、こうしたイーサネット技術を継承しつつ、ギガビット・イーサネットに比べさらに10倍のスピードを提供する最新のイーサネットだ。予定より若干遅れたが、2002年6月にIEEE802.3aeとして標準化が完了した。10ギガビット・イーサネットは、イーサネットの歴史上初めて、WANでの使用を前提とした技術も含まれる。もはや、「イーサネット=LAN」の常識さえも通用しなくなってきているのだ。
次章では、10ギガビット・イーサネットと従来のイーサネットとの違いを解説する。
「従来技術との違い」へ |
Index | |
特集:10ギガビット・イーサネット大解剖 | |
Part.1 進化するイーサネット ・進化するイーサネットはLANからWANへ ・イーサネットの進化の歴史的経緯 |
|
Part.2 10ギガビット・イーサネットと従来技術との違い ・10ギガビット・イーサネットの7種類の規格 ・LAN向けの仕様「LAN PHY」 ・WAN向けの仕様「WAN PHY」 ・LAN PHYとWAN PHYをどのように使い分けるか |
|
Part.3 10ギガビット・イーサネットの可用性を高める技術 ・イーサネットの可用性とスパニング・ツリー ・レジリエント・パケット・リング(RPR) ・イーサネットの可用性を高めるもう1つのアプローチ |
|
Part.4 10ギガビット・イーサネットの最新動向と将来の展望 ・標準化後の10ギガビット・イーサネット ・LAN分野での製品出荷が先行する ・WAN分野での展開〜EFMの標準化 |
|
「Master of IP Network総合インデックス」 |
- 完全HTTPS化のメリットと極意を大規模Webサービス――ピクシブ、クックパッド、ヤフーの事例から探る (2017/7/13)
2017年6月21日、ピクシブのオフィスで、同社主催の「大規模HTTPS導入Night」が開催された。大規模Webサービスで完全HTTPS化を行うに当たっての技術的、および非技術的な悩みや成果をテーマに、ヤフー、クックパッド、ピクシブの3社が、それぞれの事例について語り合った - ソラコムは、あなたの気が付かないうちに、少しずつ「次」へ進んでいる (2017/7/6)
ソラコムは、「トランスポート技術への非依存」度を高めている。当初はIoT用格安SIMというイメージもあったが、徐々に脱皮しようとしている。パブリッククラウドと同様、付加サービスでユーザーをつかんでいるからだ - Cisco SystemsのIntent-based Networkingは、どうネットワークエンジニアの仕事を変えるか (2017/7/4)
Cisco Systemsは2017年6月、同社イベントCisco Live 2017で、「THE NETWORK. INTUITIVE.」あるいは「Intent-based Networking」といった言葉を使い、ネットワークの構築・運用、そしてネットワークエンジニアの仕事を変えていくと説明した。これはどういうことなのだろうか - ifconfig 〜(IP)ネットワーク環境の確認/設定を行う (2017/7/3)
ifconfigは、LinuxやmacOSなど、主にUNIX系OSで用いるネットワーク環境の状態確認、設定のためのコマンドだ。IPアドレスやサブネットマスク、ブロードキャストアドレスなどの基本的な設定ができる他、イーサネットフレームの最大転送サイズ(MTU)の変更や、VLAN疑似デバイスの作成も可能だ。
|
|