UPSで電源トラブルからマシンを守る!!

〜電源トラブルの基礎知識とUPSの効果的な活用法〜

池田圭一
2000/10/28

電源トラブルへの対策〜UPSの基礎知識

 コンピュータシステムの電源保護といえば「無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power System/Supply)」と呼ばれる装置を用いるのが一般的である。停電時に、あらかじめ電力を蓄えたバッテリからの給電に切り替えることで、コンピュータシステムの停止を防ぐ役割を持つ(瞬低、停電、瞬断に対応)。また、電力ラインの電圧変動・周波数変動(サージやノイズ混在などに対応)などに対処できるよう、さまざまな安全設備を備えたUPSのことを「安定化電源装置(CVCF:Constant Voltage Constant Frequency)」と呼ぶこともある。

 それぞれ同じ機器を示していると考えても差し支えないが、厳密には「UPS」と「CVCS」は意味が異なる。というのも一般的にUPSと呼ばれる機器は、その機能によって次のように分類できるからだ。

(1)常時商用給電方式A(オフライン方式)
 通常運転時(常時)は、電力会社から直接供給される電源出力をそのままスルー出力で利用し、一方で、万が一のときに備えてバッテリに充電して、停電に備える。商用電力が何らかの原因で停止した際、ごく短い時間でバッテリからの給電に切り替え、システムをバックアップする。なお、バッテリは直流の入出力しか行えないために、商用電力の交流を直流に変換する回路(整流器)を通してから充電し、バッテリからの出力時には、再び直流→交流の変換を行う回路(インバータ)を通して商用電力と同じ電圧/周波数の電力を供給する。

 停電が発生するまでは、直流→交流のインバータが動いていないので、停電を感知してからバッテリ給電に切り替わるまでに、インバータ起動などの時間を含め、4〜10msほどかかることがある(非常に短い時間だが、瞬低/瞬断が発生する)。また、通常時はスルー出力のため、電源にサージや周波数変動が混入した場合でも、そのまま出力してしまうことがある。

 メリットとしては、通常はインバータが動作していないのでエネルギーロスが少なく、省消費電力効果があるということと、通常運転時の騒音が少ない、コストが低く、サイズも小さくできるということがある。

(2)常時商用給電方式B(ラインインタラクティブ)
 (1)のオフライン方式に、安定化電源機能を付加したもの。停電以外でも、周波数変動、サージ/ノイズの混入を検知した時点でバッテリからの給電に切り替える。オフライン方式同様に、バッテリ給電に切り替わるまでに若干の瞬低/瞬断が発生するが、内部の誘導コイルなどで、サージやノイズは軽減される。ただし、装置が複雑になるため、コストも比較的かかり、製品のサイズもコンパクトにできないというデメリットがある。

(3)常時インバータ給電方式(オンライン方式)
 通常運転時(常時)、商用電源を整流器を介して(直流化)バッテリに充電するとともに、インバータを介して(交流化)コンピュータなどの負荷機器に出力する。停電時は、商用電力をバッテリ給電に切り替えて電力を供給、常にインバータが動作しているので切り替え時の時間ロスはない(検知不能なほど短い)。また、いったん入力した交流を直流に変換し、さらに、直流→交流の変換を経て負荷機器に出力されているので、その変換時にサージやノイズ、周波数変動はすべて解決される(サージやノイズ、周波数変動では、バッテリからのバックアップ運転に切り替わらない)。電力の安定化という意味では最も優れた機能を発揮する。

 常にインバータが動作しているために、“ジー”というインバータの騒音が若干ながらも発生。また、排熱も多く空冷ファンなどの装備が必須となる。高機能高信頼性だが、コストはほかの方式に比べて高額となる。

図2 主なUPSの方式と概略図


規模に応じたUPS選び

 UPSには、このような方式による分類のほかに、バッテリの蓄電容量による違いがある。ここでは、(1)〜(3)の方式による違いがあるということが分かったうえで、バッテリ容量のパラメータを加え、システム規模に応じたUPS選びの参考となるように、それぞれの方式・容量に最適なシステム規模を次の表のようにまとめてみた。

(1)オフライン方式
バッテリ容量:500〜1000VA パーソナルコンピュータ(クライアントPC)、POS端末
(2)ラインインタラクティブ方式
バッテリ容量:600〜1200VA ワークステーション(クライアントPC)、スモールサーバ(アプライアンスサーバなど)
(3)オンライン方式
バッテリ容量:600〜2000VA ネットワーク機器、交換機、ラックマウントPC(小規模FA機器)、通信機器など
バッテリ容量:1000〜10000VA ネットワークサーバ、ミッション・クリティカルなシステム全体、ストレージサーバ、データウェアハウス、通信機、生産設備
バッテリ容量:10000〜30000VA オフコン、プラント制御、大規模情報処理システム(DBサーバ)、メインフレーム


【コラム】電源保護だけでなく、通信回線までを保護するUPS
 電源の不安定さや、停電など電源経路で発生するトラブル要素は、UPSを利用することである程度は保護できる。しかし、電話回線あるいはネットワーク回線、テレビのアンテナ線からも進入するサージは、それだけでは防げない。特に小規模な事業所、SOHO、家庭で心がけたいのは、サージからの保護システムの導入である。サージは、電話やネットワーク機器といった通信機器だけでなく、ウェイクアップモデムやウェイクアップLANなどの機能を持つコンピュータでは、マザーボードの破壊などの深刻な障害を引き起こす。

  最近では、電源の保護(無停電電源装置の機能)だけでなく、通信回線の保護機能を持つUPSも登場するようになった(写真1)。なお、ネットワーク回線の場合、安価に購入できる小規模なハブ装置でもサージ拡散の予防策として有効である(ただし、万が一の際は、そのハブ装置が破壊されることを覚悟すべきである)。
写真1 APC(American Power Conversion)の「BK500」の背面には、停電時にバッテリバックアップによる給電を行うコンセントのほか、サージ保護のみを行うコンセント(最下部の突出したコネクタ。常に商用電力を供給)、通信ケーブルを伝わるサージの伝達を防止するコネクタ(10/100BASE-TX、アナログ電話回線、ISDN回線に対応)などがある(写真をクリックすると拡大表示します


Index
UPSで電源トラブルからマシンを守る!!
  忘れていませんか? 電源管理
-電源トラブルの代表例
-標準周波数
【コラム】標準電圧
  電源トラブルへの対策〜UPSの基礎知識
-UPSの3つの電源供給方式
-規模に応じたUPS選び
【コラム】電源保護だけでなく、通信回線も保護するUPS
  UPS制御ツールで電源管理
-OS標準機能によるUPS制御
-専用ユーティリティによる電源管理
-ネットワークによるUPS制御
  UPS製品紹介
「BK500」
「Smart-UPS 700J」
「BM1000-10FNX」
-UPS運用時に気を付けたいこと
 


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