INTEROP TOKYOプレSHOWレポート

ネットワークデザイナーの真価が問われる時代に


高橋 睦美
@IT編集部
2010/6/8
異機種混在で一歩先のネットワークの姿を幕張に描き出すShowNet。そのカバー範囲は年を追うにつれて広がっている。(編集部)

 6月7日から11日まで、千葉・幕張メッセで「Interop Tokyo 2010」が開催されている。それを特徴付けているのが、展示会のインフラであると同時に相互接続性デモンストレーションの場でもあるShowNetだ。その構築に携わってきたNOCチームに話を聞いた。

ShowNetの設計、構築、運用に当たっているのがNOC(Network Operation Center)チームだ。慶應義塾大学の中村修氏、シスコシステムズの森川誠一氏、日本電気の金海好彦氏、日立製作所の高津智明氏、三井情報の萩原敦氏らにお話を伺った

ShowNetって何? どうやって作ってる?

 6月7日から11日まで、千葉・幕張メッセで「Interop Tokyo 2010」が開催される。ネットワークをテーマとした展示会だが、ただ出展各社が製品を展示するだけではない。協賛各社が提供するネットワーク機器を使って、限られた期間で、異機種混在で実際に使える「次の時代」のネットワーク、ShowNetを作り上げる――これこそ、ほかのイベントには見られない、Interopならではの醍醐味だ。

 ShowNetは、どこか有力な1社とその他大勢という上下関係ではなく、各機器が対等に相互接続しながら、一歩先のネットワークの姿を示す場となっている。「世の中のトレンドを先取りする場。各エリアのスペシャリストが集まり、いま解決しなければならない問題に真摯にぶつかっている」(慶應義塾大学 中村修氏)。

 Interopの展示会場でも配られるであろう製品カタログを見てほしい。そのほとんどに「○○標準準拠」「○○対応」といった説明が記されているだろう。だが、そうしたスペックを信じて同じ標準に対応しているはずの機器を接続してみると、思いもしない挙動が生じ、想定したとおりに動いてくれない――こんな経験をしたネットワークオペレータは少なくないはずだ。InteropのShowNetは、この問題に文字通り体当たりで取り組んできた。

HotStageで組み上げ作業中の、ShowNetを支えるNOCの機器群(Interop Tokyo 2010のTwitter投稿より、注1)

 Interopの展示会は6月9日から始まるが、ShowNetの本番はその前から始まっている。「HotStage(ホットステージ)」と呼ばれる準備期間中に、さまざまなベンダ(コントリビュータ=協賛社)が提供する機材を物理的に接続し、設定を施し、チェックを行い、展示会では問題なく動作するよう課題をつぶすという作業に取り組んでいるのだ。

PingManでShowNetの疎通確認を行っているところ。会期中はこれがすべてグリーンに ShowNetで利用されている光ファイバコネクタにはこれだけさまざまな種類が

 しかもShowNetは、単につながるだけでなく「オペレーション可能な」ネットワークを目指している。これを実現するために、ShowNetの構成を可視化し、トラブルが生じたときに迅速に問題を切り分ける仕組み作りにも取り組んでいる。

注1:Twitterアカウント「InteropTokyo10」で、ShowNet構築の模様などをリアルタイムにつぶやいています。

日本発の仕様を生み出す

 ShowNetを作り上げる過程で、構築に携わるNOCチームと機器ベンダは、互いにコミュニケーションを取りながら、仕様の深い部分にまで踏み込んで調整を行ってきた。ADSLやVoIP、あるいはIPv6といったテクノロジは、いまや当たり前のように使われているが、それには、ShowNetを通じて「鍛えられた」「検証された」ことが大きく寄与している。

 その1つがPPP(Point-to-Point Protocol)だ。ブロードバンド接続が普及する前、個人がインターネットにアクセスする主要な手段となっていたのがダイヤルアップ接続やISDNだが、そこで主に利用されていたのがPPPだ。

 「PPPは元々は、単にカプセリングを行うだけのプロトコルで、ネゴシエーションの部分がなかった。それを世界に先駆けて日本で実装した。こんな風に日本のInteropで実装、実証して世界に広がっていた技術は少なくない」(シスコシステムズ 森川誠一氏)。

 いまでこそ広く普及し、ブロードバンドを支えているADSLも「当初は、『ISDNと干渉するのではないか』など、ADSLは日本では動かないのではという否定的な声もあった」(日立製作所 高津智明氏)。

 ADSLをはじめとするxDSL技術の検証にShowNetが取り組んだのは2000年、まだ商用サービスが開始される前のこと。ADSLモデムやDSLAM(Digital Subscriber Line Access Multiplexer:局側でバックボーンに接続する設備)を提供するベンダがそろい、ShowNetを通じて出展各社にネットワーク接続を提供するという試みを行った。その時点では、DSLAMから先のネットワークをどのように構築するのか、加入者認証はどうするのかといった運用技術も見えておらず、Interopを通じて手探りで確立したという。

 その少し前、1998年にはギガビットイーサネットの相互接続性を検証したし、さらなる高速化のニーズに応えようと生まれたリンクアグリゲーションの仕様についても、実際につないでみてはじめて分かった課題があった。

 リンクアグリゲーションとは、複数の回線を論理的/仮想的に1つに束ね、より広い帯域を使えるようにする技術だ。だがベンダや機種ごとにパケット振り分けのアルゴリズムが異なっており、場合によってはトラフィックが一方に偏って想定した速度が出ない、ということもあったという(注2)。「リンクが上がる順番のような細かなところまでいくと、スペックに書かれていないことも多い」(高津氏)。

注2:このようにアグリゲーションには難しい部分もあるため、「1本で100Gがほしい」というニーズにもつながっているとか。2010年のShowNetでは、外部接続(エクスターナル)などに100GbE技術が使われる予定だそうです。

「こんなんじゃ足りない!」、規模を鍛える

 ShowNetがもたらした影響は、仕様の中身だけでなく、「規模」「スケール」にも及んでいる。「企業の中で使っているだけではなかなか分からないことがある。企業で使うのとサービスプロバイダーで使うのとはやはり違う」(萩原氏)。

 例えばスイッチのARPテーブルやルータのルーティングテーブル、フォワーディングテーブルのサイズだが、当初は256行程度。「ベンダ側はおそらく『こんなものだよね』と決めていたのだろうが、ShowNetではすぐに頭を打ってしまう。そんなんじゃとても足りない! とやり取りしているうちに、スケールし、設定できるようになってきた」(中村氏)。

 ShowNetを通じて、ベンダ側の想像の限界を超えた運用を行うことで、「限界を超えたときの挙動もきちんと定義されるようになった。止まってしまうのではなく、割り当てを変えるなどして、きちんと対処する設計が盛り込まれるようになった」(森川氏)という変化もあったという。

 キャリアグレードNATもその1つといえるだろう。IPv4アドレスの枯渇を目前に、改めて注目されているキャリアグレードNATだが、NATはそもそも、企業内で1つのグローバルアドレスを共有し、インターネット接続を行えるようにするための技術。キャリア/サービスプロバイダー規模で使うことは想定していなかったが、ShowNetで使っていくうちにこなれ、スケールしてきた。

 一方で、見るべきものを持ちながら、市場の大勢を占めることなく消えていった技術もあった。プロトコルではAppleTalkやIPX、レイヤ2の技術ではToken RingやFDDI、ATMなどが挙げられる。ATMは高速接続を実現する技術として注目を浴びた時期があったが、「やっぱりギガビットイーサネットの方が使いやすくて、圧倒的に楽だった。しかもポート単価も安かったので、レイヤ3スイッチとの組み合わせで市場が大きく変わった」(日本電気 金海好彦氏)。

 つまりShowNetからは、マーケットの拡大と縮小の両方が見えてくるというわけだ。「テクノロジの立ち上がりも、立ち下がりも感じる」(森川氏)。

 
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Index
ネットワークデザイナーの真価が問われる時代に
Page1
ShowNetって何? どうやって作ってる?
日本発の仕様を生み出す
「こんなんじゃ足りない!」、規模を鍛える
  Page2
異なる文化との融合:WDM、セキュリティ
乖離する物理と論理――今年のShowNetの見所

「Master of IP Network総合インデックス」


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