Ultra DMA/66の性能を徹底検証

2.実験前の下準備

2-2. 設定の確認

澤谷琢磨
2000/07/06

最新IDEインターフェイスがサポートする転送モード

 ベンチマーク テストに入る前に、Ultra DMA/66の規格自体について解説しておこう。現在のIDEインターフェイスはUltra DMA/66ばかりでなく、複数の転送速度をサポートしている。Ultra DMA対応IDEインターフェイスの転送モードの呼称と、そのサポートする転送速度は表のとおりだ。

転送モード 転送速度 規格名
Ultra DMAモード0 16.6Mbytes/s  
Ultra DMAモード1 25.0Mbytes/s  
Ultra DMAモード2 33.3Mbytes/s Ultra DMA/33
Ultra DMAモード3 44.4Mbytes/s  
Ultra DMAモード4 66.6Mbytes/s Ultra DMA/66
Ultra DMAモード5 100.0Mbytes/s Ultra DMA/100
Ultra DMAで定義されている転送モード

 現在のIDEデバイスはUltra DMA以外の転送モードとして、たいていの場合PIOモード1〜4、Multiword DMAモード1〜2を備えている。これらはバスマスタDMA転送が無効の場合や、古いIDEデバイスと組み合わせて使用する場合、つまり互換性のために残されているモードで、現在のIDEハードディスクの性能や機能を活かせない場合が多い。

 IDEデバイスがUltra DMA/66対応ということは、Ultra DMAモード4までをサポートしたデバイスであることを意味する。Ultra DMA/33はUltra DMAモード2まで、また最新のUltra DMA/100対応デバイスはUltra DMAモード5までそれぞれサポートしていることになる。

Ultra DMA/66からケーブルが変更された

 Ultra DMA/66では、IDEハードディスクとホスト コントローラを接続するケーブルに変更が加えられている。写真「80芯ケーブル」が、Ultra DMA/66から新たに導入された80芯ケーブル(80-conductorケーブル)だ。これまでのフラット ケーブル(40芯ケーブル)から、80芯ケーブルに変更されたのは、Ultra DMA/33の2倍という高いデータ転送速度でも正常にデータを伝送するためだ。IDEケーブルは、フラット ケーブルを採用しているため、信号線が並列に並ぶことになる。そのため、データ転送速度が高まったことで、信号線の同士の干渉が、高速化のための障害となった。そこで、信号線の間にグラウンド線を追加することで、信号線間の干渉が発生しにくいように工夫したわけだ。

80芯ケーブル
フラットケーブル自体は80線だが、コネクタは40ピンのままだ。追加された40線はグラウンド線(基準電位線、0V)で、信号線間の電磁的干渉を弱めるシールドとして、信号線と信号線の間にはさまれている。安定して高速な転送ができるよう、ケーブルの長さは最大45.7cmと規定されている。
  ホスト側につなぐコネクタ
  Device-1(スレーブ)コネクタ
  Device-0(マスター)コネクタ

 Ultra DMA/66では、40芯ケーブルか80芯ケーブルかを、IDEホスト コントローラが自動的に検出できるように、80芯ケーブルのコネクタに細工が施されている。具体的には、34ピン目がグラウンドとつながっており、IDEホスト コントローラが34ピン目をチェックすることで、40芯ケーブルか80芯ケーブルかを判別できるようにしている。こうした仕組みが設けられているのは、Ultra DMA/66に対応したハードディスクとIDEホスト コントローラの組み合わせでも、40芯ケーブルで両者を接続した場合、Ultra DMA/33以下の速度でしか転送できないと規格で定められているからだ。なお、80芯ケーブルは、Ultra DMA/100においても引き続き使われることになっている。

 今回テストしたデバイスは、すべてこの規定に従って動作した。80芯ケーブルを使用しない状態では、どのデバイスもUltra DMA/66での転送を行わなかった。ただ、チップセットにIntel 810を搭載したAopen MX3WのBIOSセットアップには、80芯ケーブルの検出を行わないというオプションが設けられており、80芯ケーブルを使わなくてもUltra DMA/66での転送が可能だった。もちろん規格上は認められていない使用法であり、障害が発生する可能性があるので注意したい。

IDEデバイスはジャンパ ピンでの設定が必要

 1本のフラットケーブルに接続できるIDEデバイスは2台だけだ。このとき2台のデバイスは、片方がマスター デバイス(またはDevice-0)、もう一方がスレーブ デバイス(またはDevice-1)と呼ばれる。IDEデバイスをPCに接続する場合、必ずマスター デバイスとスレーブデバイスのどちらかを選んで設定しなければならない。

 通常、IDEデバイスのマスターとスレーブの選択は、ジャンパ ピンを使って設定する。写真「IDEハードディスクのコネクタ部分」は、今回テストしたIDEハードディスクのうちMaxtor 53073U6のコネクタ側を撮影したものだ。IDEコネクタと電源コネクタに挟まれた部分が、ジャンパ ピンと呼ばれる部分だ。

IDEハードディスクのコネクタ部分
IDEハードディスクのコネクタ部の形状は、規格で定められていることもあり、どのベンダの製品でもほとんど同じだ。ただ残念ながら、Aのジャンパ ピンは、未だにベンダ間で設定方法が異なる。
  IDEコネクタ(40ピン)
  ジャンパ ピン 。ジャンパ ピンはジャンパ ブロック(写真中の黒い部品)によって設定する。
  電源コネクタ

 ジャンパ ピンを、ジャンパ ブロックでショート(クローズ)するか、何も接続しない(オープン)かの組み合わせで、マスターかスレーブかの設定を行う。ここでジャンパ ピンの設定方法を示したいところなのだが、この部分はハードディスク ベンダごとに設定方法が異なっている。ジャンパの組み合わせの意味は、各ハードディスク ベンダのホームページにあるオンライン マニュアルなどに記述されている。ハードディスクによっては、表面に貼ってあるラベルに設定方法が記されていることもあるので、そういった情報を参考にするとよいだろう。

Seagate U8のラベル
ハードディスク ベンダの一部には、ハードディスクのラベル上に設定方法を記したものもある。これならばマニュアルをなくしても、ジャンパ ピンの設定が分からなくなることがない。

 ジャンパ設定でやっかいなのは、マスターとスレーブというただ2通りの設定では済まないところだ。ハードディスクによっては、マスターにも、スレーブのない状態のマスター(シングル マスターとも呼ばれる)と、スレーブがある状態のマスターの2通りの設定を用意しているものがある。しかもこの設定は、スレーブにつなぐデバイス次第でどちらを有効にすべきか変わってくるので、多くの場合、トライ&エラーでチェックしなければならない。

 なお、マスター デバイスとスレーブ デバイスをケーブルのどのコネクタに接続するかは規定されている。写真「80芯ケーブル」ののコネクタにマスター、のコネクタにスレーブ デバイスを接続する。この順序を利用して、マスターとスレーブを自動設定するケーブル セレクトという仕組みもある。

PCとの接続ポートは2つある

 IDEケーブルのホスト側コネクタは、PCのマザーボード上の40ピン コネクタ(場合によってはPCIカード上の40ピンコネクタ)と接続する。マザーボード上では、IDEインターフェイスだけが40ピン コネクタを用いているので、IDE以外のデバイスとの接続ミスをおこす可能性は低い。

マザーボード上のプライマリ ポートとセカンダリ ポート
マザーボード上には2つの40ピンコネクタが用意されており、何らかの番号が振られていたり、写真のマザーボードのようにコネクタの色が変えられたりする。このうち番号の若いほうが、プライマリ ポート(写真ではIDE1)にあたる。1つのポートには、2台までIDEデバイスが接続できるので、マザーボードには合計で4台までのIDEデバイスが接続できるわけだ。OS起動用のハードディスクは、プライマリ ポートのマスター デバイスとして設定するのが一般的だ。

高速な転送モードはIDEコントローラによって提供される

 プライマリ ポートとセカンダリ ポートは、マザーボード上のIDEコントローラが管理している。現在のIDEコントローラは、PCI上のデバイスとして実装されているので、PCIのバスマスタDMA転送を利用した高速な転送モード(Ultra DMAのDMAとは、バスマスタDMA転送を利用していることに由来する)をはじめ、CRCによるデータの検査やS.M.A.R.Tなど、かつてのIDEではサポートできなかった機能を備えるようになっている。

 Ultra DMA/33登場当時のIDEコントローラは、1本のケーブル上にUltra DMA/33対応デバイスと、それより遅いIDEデバイスを接続すると、遅いほうのデバイスに合わせて低速な転送モードしか使えないという制限があった。そのため、高速な転送モードを用いるには、1本のIDEケーブルに接続できるデバイスをUltra DMA/33対応製品だけにする必要があるとされていた。しかし、現在のIDEコントローラにはその制限はないようだ。

 今回の実験に際して、マスターにMultiword DMAモード2までしか対応していないCD-ROMドライブを接続し、スレーブにMaxtor 53073U6(Ultra DMA/66対応)を接続してテストを行ってみた。その結果、Maxtor 53073U6に対しては、Ultra DMA/66モードでアクセスしていることが確認できた。このほか、複数の組み合わせでテストを実施したが、比較的新しいIDEコントローラにおいては、マスター デバイスとスレーブ デバイスのサポートする転送モードが異なっていても、デバイスの持つ最も高速な転送モードでアクセスが行えた(なお、IDEの規格上、同じケーブル上のマスター デバイスとスレーブ デバイスに同時にアクセスはできない)。

初期のUltra DMA/33対応コントローラでは低速になる組み合わせ
このような構成では、Ultra DMA/33登場時のIDEコントローラでは低速なデバイス側に合わせて転送モードが設定されたが、現在のIDEコントローラでは、各IDEデバイスを最も高速な転送モードでアクセスできるよう改善されている。

 このように高機能化したIDEコントローラだが、Ultra DMA/66を含むPCIのバス マスタDMA転送を用いた転送モードを用いるには、IDEコントローラを制御するデバイス ドライバを用意しなければならない。そこで、次にUltra DMA/66を有効にするためのデバイス ドライバについて確認しよう。

 
     

 INDEX
  [実験]Ultra DMA/66の性能を徹底検証
  1. Ultra DMA/66、Ultra DMA/100登場の背景
  2. 実験前の下準備
    2-1. 機材を揃える
  2-2. 設定の確認
    2-3. デバイス ドライバを設定する
  3. Ultra DMA/66の実力を測る
    3-1. ハードディスク間の比較
    3-2. 転送モード間の比較
      コラム Windows 2000における転送モード間の比較
    3-3. IDEコントローラ間の比較
      コラム Windows 2000におけるIDEコントローラ間の比較
    3-4. Windows 98標準ドライバとベンダ製ドライバとの性能比較
    3-5. アプリケーション ベンチマーク テストで性能差は現れるのか?
  4. Ultra DMA/66は必要なのか?
 
「PC Insiderの実験」


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