ニュース解説

IDF JapanでPentium 4搭載のコンセプトPCを公開

小林章彦
2000/09/22

 

Akiruの外観

写真では小型に見えるが、本体サイズは省スペース・デスクトップよりも二回りほど大きい。本体は前面右側を支点にして、大きく開けることができる。本体の開閉にはネジが不要で、メンテナンスは容易だ。電源は外付けのACアダプタで25V/120Wの電力を供給する。このACアダプタが非常に大きいのは残念な点だ。

 2000年9月18日から20日までの3日間にわたり、インテルが「インテル・デベロッパ・フォーラム 2000 Fall Japan(IDF Japan)」を開催した(IDF Japan開催に関するリリース)。IDF Japanは、開発者を対象に最新技術を紹介するもの。技術セミナーを中心に、基調講演や製品の展示などが行われた。2000年8月下旬で米国サン ノゼ(San Jose)市で開催したIDF Fall 2000を、ほぼそのまま日本に持ち込んだものである。

 このIDF Japanで、日本初公開となるPentium 4を搭載したコンセプトPC「Akiru(アキル)」の展示が行われた。ここでは、このコンセプトPCを紹介するとともに、このコンセプトPCから分かるPentium 4システムの概要を解説しよう。なお、Pentium 4は2000年第4四半期に発表が予定されている。

Pentium 4搭載のコンセプトPC「Akiru」の概要

 コンセプトPCは、1998年に開催されたIDF Fallから出品されるようになったもので、Ease Of Use(使いやすさ)やレガシー・フリー(シリアル/パラレル・ポートなどの過去のテクノロジやデバイスを排除すること)をコンセプトに、主にホームPCをターゲットに作られたものだ。Intelとデザイン会社が共同で、次世代PCの姿を具現化するために開発している。あくまでコンセプトを表現するためのもので、市販化については考慮されていないが、年を追うごとに「PC」としての完成度が高まっており、そのまま市販可能なものも増えてきているように思える。

 ここで取り上げるPentium 4搭載のコンセプトPC「Akiru」も、意外なほど普通のデザインに仕上がっていた。Akiruのデザインは、以前からIntelのコンセプトPCをデザインしているFIORI社が担当したということだ。

 
CPU Pentium 4-1.14GHz
マザーボード Cape Sebastian
マザーボード形状 MicroATX(6層基板)
チップセット Intel 850
メイン・メモリ 最大512Mbytes(256Mbytes RIMM×2)
メイン・メモリのソケット RIMM×2(デュアルDirect Rambusチャネル対応)
グラフィックス・カード NVIDIA GeForce2 MX(AGP 4x対応)、インターフェイス:DVI
イーサネット・カード 100BASE-TX対応
CD-ROMドライブ スロット・イン・タイプの薄型CD-ROMドライブ
ハードディスク Ultra ATA/100対応
拡張インターフェイス USB 1.1×4(ポートは5つ装備)
拡張スロット PCI×2、CNR×1、AGP×1
電源 25V/120WのACアダプタ

Akiruの主な仕様


Akiruのケースを開けたところ

Akiruは、マザーボードにCape Sebastianを採用している。ケースのふた側にCD-ROMドライブとハードディスクを実装する。ケース部分にはポリプロピレンのフォームが敷き詰められており、消音効果を高めている。

 Akiruが採用するマザーボードは、「Cape Sebastian(ケープ・セバスチャン)」と呼ばれるもの。シリアルやパラレルなどのレガシー・デバイスを排除したコンセプトPC用のマザーボードである。マザーボードの形状は、MicroATXを採用している。

 Cape Sebastianは、PCIスロットX2、CNRコネクタ(PCIとの共有スロット)、AGPスロットが実装されている。Akiruでは、本体の幅を狭めるため、これらのスロットはすべてロー・プロファイル・カード(高さの低いPCI/AGPカード)のみのサポートとなっている。Akiruでは、グラフィックス・チップにNVIDIA GeForce2 MXを搭載したロー・プロファイルのグラフィックス・カードをAGPスロットに実装していた。このグラフィックス・カードのインターフェイスは、DVIのみのサポートで、展示会場では液晶ディスプレイに接続されていた。現実には、DVIに対応したディスプレイはそれほど多くないので、この点に関しては、このまま市販するのは難しいかもしれない。また、イーサネット・カードは、PCIスロットに実装されていた。Intel 850では、CNRを使ってイーサネットの実装が可能だが、AkiruではCNRカードは使用していなかった。さらに、USB 2.0対応のUSBコントローラ・カードがPCIスロットに実装されていた。

 Cape Sebastianは、チップセットとしてIntel 850を採用しており、メモリはDirect RDRAMのみに対応する。また、Intel 850は、デュアルDirect RDRAMチャネルを採用しており、2つのRIMMソケットに同じ容量のメモリを差す必要がある。Cape Sebastianは、RIMMソケットが2つしかないため、メモリを拡張する場合は、容量の大きなものへと差し替える必要がある。

 Intel 850は、I/Oコントローラ・ハブとしてIntel 815Eで採用されたICH2が組み合わされる。そのため、Ultra ATA/100や4ポートのUSBサポートといったICH2の仕様は、Intel 850でもそのまま継承される。ただ、展示会場で配布されたCape Sebastianのカタログには、「Five External USB 1.1 ports」とあり、Akiruには前面に2つ、後面に3つのUSBポートが装備されていた。前面の2ポートはマザーボードからケーブルで接続され、後面の3ポートはマザーボード上にコネクタが直付けされており、確かにカタログとおりに5ポートが実装されていた。ICH2の仕様では、USBは4ポートまでのサポートであるため、この点をインテルの担当に確認したところ「USBは4ポートのみサポートであり、5ポートのうち4ポートしか同時に使用できない。これはミスである」ということであった。いくらコンセプトPCとはいえ、このような単純な設計ミスがあるとは思えない。ICH2が4ポートよりも多いUSBがサポートできるのか、ICH2のバージョン・アップ版が用意されている可能性も否定できないだろう。

Akiruの拡張スロット部分

Akiruは、PCIスロットにUSB 2.0のインターフェイス・カードとイーサネット・カード、AGPスロットにGeForce2 MX搭載のグラフィックス・カードを実装している。グラフィックス・カードは、DVIインターフェイスのみをサポートする。拡張スロット部分の上側にUSB 1.1対応のポートが3つあることが分かる。

前面のUSBポート

Akiruは、後面に3つ、前面に2つのUSB 1.1のポートを装備する(USB 2.0のカードを合わせると、合計7つのUSBポートを装備する)。ただし、コントローラの制限から、USB 1.1のポートで同時使用可能なのは、4ポートに限られる。 前面のUSBポートは、カバーによって隠すことが可能だ。

 Akiruは、CD-ROMドライブに薄型のスロット・イン・タイプを採用している。CD-ROMドライブとハードディスクの周辺にはポリプロピレンのフォームが敷き詰められており、消音についても考慮されている。ただし、拡張ベイは装備されておらず、ハードディスクなどを内部に追加するような増設は行えない。

 CPUのヒートシンクは非常に大型のもので、天板に配置された大型の冷却ファン2つを使って冷却を行うようになっている。IDF JapanではPentium 4搭載PCの設計についての技術セミナーも開催されており、その中でPentium 4では450gのヒートシンクが必要ということであった。Pentium III(Coppermine)は180gであったので、2倍以上の重さのヒートシンクが必要になるわけだ。Pentium 4の消費電力が非常に大きいことが伺える。また、Intel 850にもヒートシンクが付けられていた。

 Akiruでは、外付けのACアダプタを採用し、電源ユニットを内蔵していない。その分、温度管理の面では有利なはずだが、大きな冷却ファンを採用していることからも、本体内の発熱量が大きいと予想される。Akiruは、狭い設置面積を実現したPentium 4システムを作ることもコンセプトに掲げているが、それでもPentium IIIの省スペース・デスクトップPCよりもかなり大きい。発熱の問題などから、Pentium 4を既存の省スペース・デスクトップPCのような小型のケースに収めるのは難しいのかもしれない。

 Akiruは、これまでのコンセプトPCの中でも完成度が高く、すぐに市販化ができそうなほどであった。インテルの担当者によれば、「Akiruについては、評判が高く、複数のPCベンダから引き合いがきている」という。ただし、AkiruはあくまでコンセプトPCであるため、そのままの形状でライセンスを行うなどの予定はないということだ。もしかすると、どこかのPCベンダが、似たような形状のPCを製品化する可能性はあるかもしれない。記事の終わり

  関連リンク
IDF Japan開催に関するニュース・リリース
FIORI社のWebページ

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