最新のビジネス向けPCを解剖する3. コンパックコンピュータ Deskpro EN (1)デジタルアドバンテージ2000/09/08 |
試用したDeskpro EN C600/128/20/NW |
世界的な総合PCベンダであるコンパックコンピュータでは、デスクトップPCのラインアップを、ビジネス向けのDeskproとコンシューマ向けのPresarioに分類している(*1)。このうちDeskproシリーズは、販売方法や対象となるオフィスの規模などにより、5種類に分類される。その中で、今回評価するDeskpro ENは、比較的大規模なオフィスで運用することを想定したPCである(姉妹機種として、設置面積を減らしたDeskpro EN SFもある)。評価した試用機は、Celeron-600MHzと128Mbytesのハードディスクを装備し、Windows NT Workstation 4.0とWindows 2000 Professionalの選択インストールが可能なモデル(C600/128/20/NW)である。
*1 同社の直販事業だけで販売されていたビジネス向けPCのProsignia(プロシグニア)シリーズは、2000年9月6日、DeskproシリーズとノートPCのArmadaシリーズに吸収された。 |
充実したセキュリティ対策
セキュリティを高める機能 | |
左はケース リムーバブル センサーのスイッチ部分。ケース カバーを開けると、このスイッチの状態が変化し、それが電気信号としてマザーボードに伝わる。一方、右のスマート カバー ロックは、電磁石を利用してケース カバーを開けられないようにロックする機構だ。これはマザーボードからの信号でコントロールされる。 |
本機の特徴の1つは、充実したセキュリティ機能だ。例えば右の写真(左側)のケース リムーバブル センサーは、本機のケース カバーの開閉を検知するしくみだ。これにより、カバーが開けられるとPC内部の不揮発性メモリにそれが記録され、起動時にその旨のメッセージを画面に表示してユーザーに知らせる。さらに、スマート カバー ロックという機能(上の写真右側)を利用すれば、ケース カバーをロックすることで、管理者以外の人物がむやみにケース内部にアクセスできないようにもできる。そのほか、メイン メモリのDIMMが着脱された場合も、BIOSが検知してユーザーに知らせるように設定できる。こうしたしくみは、主にPCの内部にある高価なパーツを盗難から守ったり、盗難の事実を迅速に管理者へ知らせるためのものだ(実感しにくいかもしれないが、多数の人が出入りする企業のオフィスでは、PCパーツの盗難は意外に多いと聞く)。また、ユーザーが管理者の許可を得ずに、勝手にPCのハードウェアを拡張したり設定を変更したりするのを防ぐ意味もある。
そのほか、USBやシリアル/パラレル ポート、外付け赤外線通信ポートを介した通信を個別に禁止できる。当然ながら、一般的なPCが備えているBIOSセットアップや起動時のパスワード ロックや、ブート可能なデバイスの制限など、基本的なセキュリティ機能も本機は備えている。これらのセキュリティ機能は、BIOSセットアップを通じて有効/無効を設定できるので、OSに関係なく利用できる、ということも本機の特徴といえるだろう。
BIOSとOSの両方に実装されている障害対策機能
BIOSによるハードディスク診断 |
DPSによる診断テストを、BIOSセットアップから実行しているところ。 |
前述のセキュリティ対策もそうだが、本機のBIOSには、さまざまな障害対策の独自機能が組み込まれている。例えばドライブ保護システム(DPS:Drive Protection System)という機能をBIOSセットアップから呼び出すと、ハードディスク内部にトラブルがないかテストし、その診断結果を表示するとともにハードディスクに保存する(*2)。このように、OSをインストールする前にハードディスクの診断ができるのは珍しい機能だ(なお、DPSはWindows OSからでも起動できる)。左の画面は、DPSをBIOSから実行しているところ。
*2 DPSによる診断結果の保存には、コンパックコンピュータ純正のハードディスクが必要である。 |
またマスタ ブート レコード(MBR)の保護機能も、コンパックコンピュータ独自のものがBIOSに組み込まれている。最近のPCに組み込まれているMBR保護機能は、BIOSを介してMBRをアクセスした場合のみ有効で、OSから直接MBRにアクセスされたら保護できない。そこで本機では、あらかじめ正常なMBRの内容をバックアップしておき、起動するたびに実際のMBRとバックアップ内容を比較し、もし書き換えられていたら、バックアップを復元してMBRを元に戻すことができる。
Webブラウザを介したPCの監視機能 |
ハードウェア/ソフトウェアを監視するソフトウェア(エージェント)により、このような監視機能が実現されている。 |
BIOSセットアップが日本語で表示できることも本機の特徴だ(左上のBIOS画面を参照)。BIOS自体のアップデートは、標準装備のイーサネット インターフェイスを介してリモート環境から実行できる。Wake on LAN機能も併用すると、管理者は本機を直接操作することなく、BIOSのアップデート作業をリモート環境から自動実行できる。
Windows OSが起動した後では、コンパックコンピュータ独自のInsightマネージメント エージェントというハードウェア/ソフトウェアの監視用ソフトウェアを組み込むことで、リモート環境から本機の状態を監視できる。これにより、管理者はクライアントPCのトラブルを未然に防いだり、発生した障害を迅速に解決したりするのが容易になる。右上の画面は、Webブラウザを経由して本機のハードウェア/ソフトウェアの状態を監視しているところだ。
メンテナンス性を考慮したケース
本機のケースには、パーツ交換などのメンテナンスを容易にするためのさまざまな工夫が施されている。例えば、ケースを開けるには、下の写真(左側)のようにケースの両側面にあるレバーを引いてケースの上蓋であるケース カバーを外すだけだ(もちろん、前述のスマート カバー ロックは無効にしておく必要がある)。ただ、本機のケース形状ではその上にディスプレイを載せるレイアウトになるので、ケースを開けるにはいちいちディスプレイを降ろす必要がある。
メンテナンスを容易にするケースの工夫 |
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ケース カバーはレバー操作だけで開けられる(左)。ケース内部も整然としている(真ん中)。また、ケース カバーの裏側には、内部コネクタやジャンパ設定の簡易説明書が貼られている(右)。 |
ケース カバーを取り外すだけで、上の写真(真ん中)のようにケースの内部はほぼ一望できる。ATXフォーム ファクタのマザーボードをさえぎるパーツもなく、メイン メモリの増設や拡張カードの装着に苦労することはないだろう。唯一3.5インチ ハードディスク ベイだけは、上に5.25インチ ドライブ ベイが被さっているので、写真では隠れているが、後述のようにここは簡単な操作で露出できるように設計されている。
上の写真(右側)は、ケース カバーの裏側に貼られた簡易説明書で、ケース内部のパーツをメンテナンスするときに必要な最低限の情報がまとめられている。具体的には、マザーボード上のパーツやコネクタの用途、ジャンパ設定の方法、ドライブ ベイの取り扱い方などが記されている。PCの管理者なら、いちいち紙のマニュアルを用意せずとも、この簡易説明書を参照するだけで、多くのメンテナンス作業がこなせるだろう。
次のページでは、引き続きDeskpro ENを評価する。
関連リンク | |
Deskpro ENの製品情報 | |
Deskpro ENの発表に関するニュースリリース | |
Intel 815Eチップセットの製品情報 |
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[特集]最新のビジネス向けPCを解剖する | ||
1. エプソンダイレクト Endeavor MT-4000 (1) | ||
2. エプソンダイレクト Endeavor MT-4000 (2) | ||
3. コンパックコンピュータ Deskpro EN (1) | ||
4. コンパックコンピュータ Deskpro EN (2) | ||
5. ビジネス向け最新デスクトップPCの傾向 | ||
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