最新のビジネス向けPCを解剖する

4. コンパックコンピュータ Deskpro EN (2)

デジタルアドバンテージ
2000/09/08

ドライブの着脱が容易なドライブ ベイ

 一般にタワー型PCに比べると、横置きのデスクトップ型PCでは構造上どうしてもドライブ ベイが重なり合うため、ドライブの増設や交換といったメンテナンス作業が難しくなりやすい。しかし本機では、ドライブのメンテナンス作業がなるべく簡単になるよう、ドライブ ベイが独自に設計されている。

 本機では、前面アクセス可能な5.25インチ ドライブが最大で2個、3.5インチ ハードディスクがやはり最大2個まで搭載できる。これらと3.5インチ フロッピードライブを加えたすべてのドライブが、ネジ止めの必要のないレール式で装着される。そのため、どのドライブの着脱も、レバーを引いてロックを緩めながらドライブを差し込んだり抜き出したりするだけで済む(下の写真左側)。ただし、各ドライブにレールに乗せるための専用ネジを事前に取り付ける手間は必要だ。それでも、下の写真(真ん中)のように、その専用ネジもドライブのネジ穴に合わせて、銀色のインチ ピッチ用ネジと黒色のミリ ピッチ用ネジの2種類が、ドライブ ベイの脇に準備されている。なるべくメンテナンス作業の手間を省こうというケース設計者の意図が見て取れるところだ。

工夫されたドライブ ベイの構造

どのドライブもレバーを引いてロックを外すだけで着脱できる(左)。ドライブをレールに固定するためのネジもケースに付いている(真ん中)。3.5インチ ハードディスク ベイは、上の5.25インチ ドライブ ベイを上に跳ね上げると現れる(右)。

 3.5インチ ハードディスク ベイにて作業を行う場合、その上に位置する5.25インチ ドライブ ベイを手動で上に跳ね上げると、上の写真(右)のように、2個の3.5インチ ハードディスク ベイが見えるようになる。あとは専用ネジを取り付けたドライブを着脱してケーブルを接続するだけだ。ここで気になったのは、試用機で5.25インチ ドライブ ベイを動かすのに、非常に強い力が必要だったことだ。振動するドライブをしっかり固定するためかもしれないが、ちょっと堅すぎると感じた(試用機固有の問題という可能性もある)。

 そのほか気付いたのは、IDEハードディスクとマザーボードをつなぐケーブルに、コネクタが2個しか付いていなかったことだ。したがって、2台目のIDEハードディスクを増設する際には、コネクタが3個ある一般的なIDEケーブルに交換する必要がある。

表示専用メモリが追加されているグラフィックス

AGPスロットに装着されたGPAカード

緑色の留め具が付いているのがAGPスロット。GPAカードが装備されている。

 Deskpro ENシリーズには、左の写真にあるGPA(Graphics Performance Accelerator)カードが全機種に装着されている。これはIntel 815Eチップセットからサポートされた新機能で、チップセット内蔵グラフィックス回路に4Mbytesのディスプレイ キャッシュをAGP経由で接続することで、グラフィックス性能を高める、というオプションである。Deskproシリーズ全体では、コストを重視したモデルではチップセット内蔵グラフィックスのみ、性能重視のモデルではAGPグラフィックス カードを装備、どちらにも属さない平均的なモデルではGPAカードを装備している。本機でもGPAカードを取り外せば、市販のAGPグラフィックス カードを装着して、性能を上げることも可能だ。

余裕のある拡張スロット

拡張スロット(AGPとPCI)
AGP×1スロットとPCI×5スロットが利用できる。

 右の写真を見れば分かるとおり、本機の拡張スロットは合計6本とデスクトップPCとしては多いほうだ。また、PCIスロット5本のうち4本は、PCIの規格で許される最長のロングカードが装着できる。一方、AGPスロットについては、2台目のCD-ROMドライブ等を増設すると、全長175mm以内のカードしか装着できないので注意が必要だ(2台目のドライブがなければ、259mm以内のカードが利用できる。多くのAGPカードはこのサイズに収まる)。なお、前述のとおり、AGPグラフィックス カードを使うには、最初から装着されているGPAカードを取り外す必要がある。AGPカードを装着すれば、チップセット内蔵のグラフィックス回路は自動的に無効になり、AGPカードが有効になる。

 右上の写真で、一番下にあるPCIスロットのさらに下側をよく見ると、CNR(Communication and Network Riser)のスロット用コネクタを取り付ける配線パターンは残されているが、コネクタ自体は取り付けられていない。つまりCNRカードは本機で利用できない。とはいえ、ネットワーク機能はチップセット内蔵の10BASE-T100BASE-TXイーサネット インターフェイスが利用できるほか、オーディオ機能も同様にマザーボード上に実装されているので、CNRを必要とする機会はほとんどない(残るはモデムくらいだが、スロット数の多いPCIで代用できる)。CNRがないからといってデメリットにはならないだろう。

管理コストを圧縮しなければならない大規模なオフィスに好適

 古くからコンパックは、自社で設計および製造したパーツをPCに多用してきたベンダである。以前はチップセットまで自社製だったが、最近ではPCの価格下落の影響を受けて、製造コストを圧縮すべく、完全な独自設計パーツは少なくなってきているようだ。しかし、今回評価したDeskpro ENのように機能性を重視したPCでは、たとえOEMベンダ製のパーツでも、コンパック向け専用品として製造したものを多用している。また同社が独自に設計したのがはっきり分かるパーツもある。それはBIOSとケースだ。日本語表示も可能なBIOSには、PCの管理/運用を助ける同社独自の機能が詰め込まれているし、ケースにもドライブ ベイの構造などに独自性が発揮されているのは、前述のとおりである。マザーボードにも、フォーム ファクタこそATXという標準だが、セキュリティ対策用のセンサーやロックをコントロールする回路など、独自設計の部分が見られた。

 しかし、こうした独自性ゆえ本機の価格は高めだ。単純にプロセッサやメモリ、ハードディスクなどの仕様がほぼ同じPCのうち、コスト重視の製品と比べると、本機は大雑把に言って約2万〜4万円ほど高価である。

 この価格差が高いか安いかは、PCの管理にかかるコストをどれくらい意識しなければならないかで変わってくる。本機の独自機能のほとんどは、管理者によるPCの管理/運用を助け、ひいては管理コストを圧縮するためのものだからだ。管理コストが無視できないのは、大量のPCを必要とする大規模なオフィスだろう。本機の独自機能がSOHOなど小規模なオフィスで役に立たないとは思わないが、TCO (Total Cost of Ownership)を下げるという観点では、やはり管理コストを無視できない大規模オフィスに本機は最適といえる。


試用したDeskpro EN 600/128/20/NW の仕様

ベンダ名 コンパックコンピュータ
製品名 Deskpro EN C600/128/20/NW
販売形態 SI/代理店経由など
価格 14万5000円
発表日 2000/07/24
ハードウェア仕様
プロセッサ 製品名 Intel Celeron-600MHz
ソケット Socket 370×1個
マザーボード 製品名 コンパックコンピュータ製
フォームファクタ ATX
チップセット Intel 815E
BIOS コンパックコンピュータ製
メインメモリ 容量(標準/最大) 128Mbytes/512Mbytes
メモリ モジュールの種類 PC133 SDRAM DIMM
メモリ ソケット数 3本
ハードディスク タイプ Ultra ATA/66対応IDEハードディスク×1台
インターフェイス Ultra ATA/100対応IDE×2ポート
容量 20Gbytes
リムーバブル ストレージ フロッピードライブ 3.5インチ フロッピードライブ×1台
CD-ROMドライブ系 最大48倍速ATAPI CD-ROMドライブ×1基
グラフィックス アクセラレータ チップセット内蔵グラフィックス回路+GPAカード
スロット AGPスロット(GPAカードで使用)
メモリ容量 4Mbytes(GPAカード上)
最大表示解像度 1600×1200ドット/256色
ネットワーク 仕様 10BASE-T100BASE-TXイーサネット(自動切り換え)
コントローラ Intel PRO/100 VM(チップセット内蔵)
サウンド チップセット内蔵サウンド回路(AC‘97対応)
キーボード PS/2日本語109キーボード(ワンタッチ ボタン付き)
マウス ホイール付きPS/2マウス
スピーカ 内蔵スピーカまたは外付け
ケース スタイル 横置きデスクトップ型
フロントパネル 電源スイッチ、電源インジケータ、HDDアクセス インジケータ
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) 448×434×137mm
重量 約12.5kg
電源容量 200W
インターフェイス
ディスプレイ ミニD-Sub 15ピン×1
IDEインターフェイス Ultra DMA/100対応IDE×2ポート
ネットワーク RJ-45×1ポート
サウンド ライン入力/ライン出力/マイク入力
USB 背面×2ポート(1コントローラ)
シリアル ポート D-Sub 9ピン×2ポート
パラレル ポート D-Sub 25ピン×1ポート
キーボード/マウス PS/2×2ポート
拡張性
拡張スロット数(カッコ内は空きの数) AGP×1(0)、PCI×5(5)
前面アクセス可能なドライブ ベイの数(かっこ内は空きの数) 5.25インチ×2(1)、3.5インチ×1(0)
内蔵ドライブ ベイ(カッコ内は空きの数) 3.5インチ×2(1)
ソフトウェア
プレインストールOS Windows NT 4.0 Workstation/Windows 2000の選択インストール
主な付属ソフトウェア Insightマネージャ/マネージメント エージェント(管理ソフトウェア)、DMIビューア(管理ソフトウェア)ほか

試用したコンパックコンピュータ Deskpro EN C600/128/20/NWの仕様

Deskpro ENのラインアップには、Pentium III搭載機や、Windows 95/98選択インストールの可能な機種もある。ラインアップの詳細については、コンパックコンピュータのDeskpro ENの情報ページを参照していただきたい。

 次のページでは、今回の評価から得られたビジネス向け最新デスクトップPCの傾向をまとめてみる。

関連リンク
Deskpro ENの製品情報
Deskpro ENの発表に関するニュースリリース
GPAカードの仕様に関する情報
CNRの仕様や製品情報など
Intel 815Eチップセットの製品情報



  INDEX
  [特集]最新のビジネス向けPCを解剖する
    1. エプソンダイレクト Endeavor MT-4000 (1)
    2. エプソンダイレクト Endeavor MT-4000 (2)
    3. コンパックコンピュータ Deskpro EN (1)
  4. コンパックコンピュータ Deskpro EN (2)
    5. ビジネス向け最新デスクトップPCの傾向

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