特集 1.LAN側ノードのIPアドレス管理 |
ここでいうLAN側ノードのIPアドレス管理とは、LANに接続されているPCなどのネットワーク・ノードに適切なIPアドレスを割り当てることだ。LAN側のノードにIPアドレスを割り当てるのは、DHCPによって自動化されている。ブロードバンド・ルータは、市販製品のほぼすべてがDHCPサーバの機能を持っている(下図)。
ブロードバンド・ルータによるLAN側ノードのIPアドレス管理の例 |
このようにブロードバンド・ルータは、LAN側に対するDHCPサーバとしてIPアドレスなどの情報を各ノードに配布できる。また、一番右のサーバのように、ブロードバンド・ルータに依存せず手動でIPアドレスを設定することも可能だ。IPアドレスの静的な割り当て機能を持つブロードバンド・ルータなら、真ん中のサーバのように、予約されたIPアドレスを静的(固定的)に配布できる。 |
もちろんBLR-TX4もDHCPサーバの機能を備えている。以下の画面は、簡易設定メニューにおけるDHCPサーバ機能の設定項目だ。
BLR-TX4のDHCPサーバ機能を設定する画面(簡易設定) | ||||||
これは、BLR-TX4が持つ設定メニューのうち、設定項目の数を抑えて設定を容易にしたもの。これとは別に、細かい設定が可能なメニューもある(後述)。 | ||||||
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上記の設定項目は最低限のもので、どのブロードバンド・ルータも装備している。このレベルで製品ごとに異なるのは、配布可能なIPアドレス数、つまりIPアドレスを自動割り当て可能なノード(ここでは単純に割り当て可能なクライアントPCの数と考えてよい)の最大数だ。少ない製品だと30台程度、多いものだと200台以上も割り当て可能な製品がある。家庭やSOHOなら30台もあれば十分だろうが、PCの台数が多い環境なら注意すべき項目ではある。
IPアドレスの静的な割り当て機能
製品によっては、さらに細かくDHCPサーバを制御できる。1つは、「IPアドレスの静的な割り当て」という機能で、ある決まったIPアドレスを必ず特定のノードに割り当てる機能だ。通常、DHCPサーバにより各ノードに割り当てられるIPアドレスは、一定期間ごとに更新され、更新の前後で同じIPアドレスが割り当てられる保証はない。つまり、同じIPアドレスが割り当てられることもあれば、まったく異なるIPアドレスになることもあるわけだ(これをIPアドレスの動的な割り当てと呼ぶことがある)。通常のクライアントPCではこうした動的な割り当てでもよいが、例えば一部のネットワーク・アプリケーションを利用するPCやインターネット公開サーバは、常に同じIPアドレスにする必要がある。
もしブロードバンド・ルータのDHCPサーバにIPアドレスの静的な割り当て機能があれば、クライアントPCと同様、固定IPアドレスを必要とするサーバなどもIPアドレスを自動設定にした状態で運用できる。こうすれば、ブロードバンド・ルータ側で一元的にIPアドレスを管理しながら、固定IPアドレスのノードを手動設定するのと同様の効果を得られるようになる*1。また後述するDMZ(非武装地帯)に配置するPCでも、IPアドレスを固定にする必要があるため、この機能が役立つ。そのほか管理が多少面倒になるが、クライアントPCのIPアドレスをすべて静的に割り当てると、トラブル時にIPアドレスから該当するPCを見つけやすいというメリットもある。
*1 ただし、何らかのトラブルでブロードバンド・ルータが停止すると、LAN側ノードのIPアドレスが管理不能になってしまう、というデメリットもある。 |
BLR-TX4の静的なIPアドレス設定画面(詳細設定) | |||||||||
BLR-TX4もIPアドレスの静的な割り当てをサポートしている。 | |||||||||
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IPアドレスの静的割り当て機能は、手間をいとわなければノード側で手動設定すれば代用できるため、この機能を装備したブロードバンド・ルータはそれほど多くはない。しかし、この機能がないとIPアドレスをブロードバンド・ルータで一元管理できないため、自動配布されるIPアドレスの範囲内に間違って手動設定ノードを割り当ててしまう危険性がある。当然、単一のIPアドレスを複数のノードに割り当てることになるので、通信不能など重大なトラブルが引き起こされてしまう。IPアドレスの静的な割り当て機能があれば、こうしたミスは防ぐことができる。
以上の理由から、前述の一部のネットワーク・ゲームや前述のインターネット公開サーバなど固定IPアドレスを必要とする用途があるなら、ブロードバンド・ルータにとってIPアドレスの静的割り当て機能は必須といってもよいだろう。
DHCPで配布される情報の手動変更
もう1つのDHCPサーバの機能としては、「IPアドレスと一緒に配布される情報の手動変更」がある。これは、IPアドレスとともに配布される以下の基本パラメータで、これらをデフォルト値から変更する機能だ。
- DNSサーバのIPアドレス
- デフォルト・ゲートウェイのIPアドレス
- サブネット・マスク
通常は、ブロードバンド・ルータのLAN側インターフェイスに設定されたIPアドレスとサブネット・マスク、およびISPから得たDNSサーバのIPアドレスから、これらのパラメータのデフォルト値が自動的に算出・設定される。しかし、LAN側にDNSサーバや別のルータが存在する場合には、デフォルト値のままでは都合が悪いため、手動で別の値を設定する必要がある。
DNSサーバのIPアドレスは、WAN側IPアドレスが固定割り当てだと、管理者が手動で設定しなければならない。そのため、ほとんどの製品がDNSサーバの手動設定をサポートしている。一方、デフォルト・ゲートウェイやサブネット・マスクまで別個に手動設定できる製品は少ないが、よほど複雑なサブネット構成でない限り、これらを手動変更する必然性はないことも確かだ。
BLR-TX4のDHCPサーバ詳細設定メニュー | ||||||||||||||||||
このようにBLR-TX4のDHCPサーバに関する設定項目は多い。廉価なブロードバンド・ルータの中では、かなり詳細に設定できる方だ。 | ||||||||||||||||||
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DNSサーバの手動設定はあった方が無難だが、そのほかの詳細な設定は、家庭/SOHOのLAN環境のように小規模で単純なネットワーク構成なら必要となる機会は少ないだろう。
DHCPサーバ/クライアントの「相性」問題 |
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[特集]ブロードバンド・ルータ徹底攻略ガイド | ||
1.LAN側ノードのIPアドレス管理 | ||
2.WAN側IPアドレスの管理 | ||
3.IPアドレス/ポート変換機能−IPマスカレード/NAT− | ||
4.IPアドレス/ポート変換機能−ポート・フォワーディングとDMZ− | ||
5.セキュリティ対策の機能 | ||
6.そのほかの機能について | ||
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