岡崎勝己のカッティング・エッヂ

ICカードで変わるアミューズメント業界、
マーケティング最前線!


岡崎 勝己
2008年3月24日
非接触ICカードやRFID技術が社会にもたらす変化とは何か。ユーザーサイドから見た情報システムの意義を念頭に取材活動を続けるジャーナリストが、独自の視点で“近い未来”の行く末を探っていく(編集部)

 非接触ICカードやRFID技術の用途が急速に拡大しつつあるアミューズメント業界。ゲーム機そのものの遊戯性の向上に加え、各種のマーケティング活動、電子マネーなど技術の応用が着々と進められつつある。

 とはいえ、新たな用途開拓を進めるに当たっては、技術面や制度面などさまざまな課題を乗り越えることが各社に求められる。果たしていま、非接触ICカードやRFID技術の普及に向け、どのような取り組みが繰り広げられているのか。

 ゲームの履歴管理を通じ可能性を高めるICカード技術

 数年ほど前から、ICカードを活用したビデオゲーム機やメダルゲーム機がアミューズメント施設に並び始めたことに気付いた人も多いだろう。いまやそのすそ野は、低年齢層向けのものにまで広がりをみせる。

 その基本的な仕組みは、ICカードで管理されたプレーヤの過去の遊技履歴を踏まえ、次回の遊技時にその続きを行えるようにするもの。ある格闘ゲーム機では過去の戦績が表示され、ゲーム内のキャラクターのコスチュームも独自のものに変更される。これにより、これまで1度限りの遊技で完結していたゲームを継続して楽しめるようになることで遊戯性が高められるとともに、次回の遊技を促す効果も期待できる。

 このように、ゲームそのものにICカードを取り入れる動きが盛り上がる一方で、FeliCaの普及などにより非接触技術の利便性の高さが広く認知された結果、ICカードやRFID技術をマーケティングに活用する気運も徐々に、だが着実に顕在化しつつある。

 例えば、映画館運営を手掛ける東京テアトルでは、2003年から「株主優待券」を従来のつづり券方式からポイントを付与したICタグを配布する方式にいち早く切り替えた。この試みでは、各タグ固有のID番号と保有株式数に応じて割り振られるポイントをひも付けてサーバ側で一元管理。同社が運営する映画館の無料利用サービスや系列のホテル/レストランでの割引サービスを受ける際に、タグ情報を基にポイントを減算することで従来のつづり券と同様の使い勝手を実現した。

 顧客満足度の向上はいずれの企業にとっても大きな経営課題といえよう。その点、株主優待券のICタグ化は東京テアトルにとって、ポイントがいつ、どの施設で使われたのかをより細かく把握し、それらの情報から課題の洗い出しや対応策の立案などにつなげられるようになる点で大きな意味を持つものといえる。

 マーケティング分野での応用も着々と進展

 また、東京テアトルでは2007年7月、すでに広く普及している「Suica」や「PASMO」といった交通系非接触ICカードを映画の宣伝活動に活用するという取り組みにも乗り出した。具体的には、都内の娯楽施設に映画のポスターとリーダ/ライタを設置し、事前に非接触ICカードをかざした来場客に対してポップコーンを提供するというプロモーション活動を実施したのだ。

 このキャンペーンで用いられたシステムは、情報セキュリティ製品とシステム開発をそれぞれ手掛けるソリトンシステムズシナジーメディアが共同開発したもの。最大の特徴は、FeliCaチップの製造番号ともいえる「IDm」を、個人を特定するために利用する点にある。

土屋徹氏
ソリトンシステムズ ブロードバンド営業本部 取締役

 IDmは、あくまでもFeliCa機器を特定するためのユニークな情報であり、この情報を利用すれば個人情報を収集しなくとも“個客”を判別できる。ソリトンシステムズで取締役営業本部長を務める土屋徹氏は、「個人情報を提供する形のキャンペーンは利用者にとって敷居が高い。だが、このシステムであれば匿名性を担保しキャンペーンを実施できる。その結果、より多くの参加を期待できる」とメリットを述べる。

 システムの運用次第で、同システムはさまざまな目的に活用できることはいうまでもない。集客はもちろんIDmの読み取り回数に応じてリピーターの見極めも可能。場合によっては個人情報を登録してもらうことで、より高度な施策にも役立てられる。

 10年以上も前から各種セキュリティ製品にICカードの活用を進めてきたソリトンシステムズが、プロモーション分野でのICカードの活用に本腰を入れ始めたのは2年ほど前からだ。

「われわれが扱っていたセキュリティ製品は、社員証として利用されていたICカードをPCのアクセス管理などに用いるというもの。だが、全ICカードのうち、社員証として利用される割合は非常に小さく、ICカードにはまだまだ大きなビジネスチャンスが残されていると考えた。そこで、FeliCaの急速な普及などを踏まえた結果、マーケティングの用途で活用を進めることを決断したのだ」(土屋氏)

 
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Index
ICカードで変わるアミューズメント業界、マーケティング最前線!
Page1
ゲームの履歴管理を通じ可能性を高めるICカード技術
マーケティング分野での応用も着々と進展
  Page2
アミューズメント業界などからシステムの引き合い相次ぐ
アミューズメント施設運営の課題を一掃する電子マネー
ポイント付与で来客数は5割増、業務効率も大幅向上

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