ICカードで変わるアミューズメント業界、
マーケティング!
岡崎 勝己
2008年3月24日
アミューズメント業界などからシステムの引き合い相次ぐ
以来、ソリトンシステムズは産業技術総合研究所の技術移転ベンチャー第1号であるシナジーメディアなどと共同で、FeliCa通信機能付きブロードバンドルータ「AmiTouch-01」など、システムに必要とされる機器やアプリケーションの開発を推進する。
また、2007年9月にはシナジーメディアやアクロディア、フューチャモバイルと、モバイルFeliCa対応サービスの共同展開で合意した。これにより、アクロディアとフューチャモバイルが共同開発した「VIVID Touch」とIDmを識別するシステムを組み合わせ、モバイルFeliCaを通じたデータ転送やデータベース連携を実現できる環境が整備された。
アミューズメント機器のデータを携帯電話機に保存したり、携帯電話機からアミューズメント機器へデータ転送をしたりといったことが、センサーにタッチするだけで行えるようになり、システムの応用範囲を拡大できるようになったわけだ。
開発過程では、利用者の利便性を高めるべく随所に工夫が凝らされた。例えば、リーダ/ライタの視認性を高めることもその1つ。これもひとえに、ポスターが巨大になってもリーダ/ライタの場所が容易に把握できるようにし、容易にキャンペーンに参加できるようにしたいとの狙いからだ。
そこで、リーダ/ライタの形状に工夫を凝らすとともに、情報を読み取った際には音と光でそのことを通知する機能を実装。併せてVFDディスプレイを取り付けることで、各種のメッセージ表示も可能にした。
大平勇典氏 ソリトンシステムズ ブロードバンド営業本部 IPソリューション部開発グループ グループマネージャ |
ソリトンシステムズでAmiTouchの開発を担当するブロードバンド営業本部IPソリューション部開発グループグループマネジャーの大平勇典氏は、「人によって、かざし方はただかざすだけから強く押し付けるまでさまざま。そこで、強度も十分に考慮した」と振り返る。
こうした努力のかいもあり、同システムの提案活動を開始して以降、アミューズメント業界や交通業界を中心に多くの引き合いが同社に寄せられているという。実際に、東京メトロは2007月11月から実施した「数寄数寄ICカードキャンペーン」と同12月から実施した「早起き通勤キャンペーン」で同システムを利用。また、千代田区が設立した秋葉原タウンマネジメントが同12月に実施した「AKIBA SMILEプロジェクト」にも採用された。いずれも参加者にポイントを割り振るために用いられている。
「すでに十社程度が同システムを採用したキャンペーンを実施している。もちろん、課題も少なくない。データの活用を支援するために、データの蓄積方法や、顧客への提示方法をさらに洗練させる必要があるだろう。また、マーケティング支援策として顧客に納得してもらえるだけの料金プランの策定も欠かせない。ただし、これまでの顧客の反応を考えると、同システムに対するニーズは少なからずあることは確実だ」(土屋氏)
左)
FeliCa通信機能付きブロードバンドルータ「AmiTouch-01」に接続して利用するリーダ/ライタ。VFDディスプレイを搭載する。背後でAmiTouch-01と接続されている 右) タッチパネルPCをベースとしたKIOSK端末「AmiTouch-02」。組み込みシステム向けの専用Webブラウザが実装されており、コンテンツ表示はPHPなどで記述することができる |
アミューズメント施設運営の課題を一掃する電子マネー
さて、アミューズメント業界にとって施設における電子マネーの利用促進は長年の懸案事項といえる。そもそも、ゲーム機に投入されたコインの集金業務は意外なほど手間が掛かる。また、ゲームの遊技料金を細かく設定することは現実的に難しく、消費税の増税に容易には対応することができない。
だが、電子マネーであればこれらの問題を一掃できる。セガではこれらのメリットに着目して同社が運営するアミューズメント施設の一部にて、Edyを用いた電子マネーの実証実験を2003年に開始した。この取り組みは現在も継続中だ。
しかし、電子マネーの導入までの道のりは、特に規模の小さなアミューズメント施設であるほど厳しいのも事実である。電子決済サービスは利用に当たり決済手数料が発生する。そのため収益の減少が避けられないからだ。
山岸潤一氏 日本ユニカ 代表取締役社長 |
そうした中、アミューズメント施設管理システムの開発などを手掛ける日本ユニカは、同社のアミューズメント施設管理システム「G-POS」を中核に独自の電子マネーシステムを開発した。
代表取締役社長を務める山岸潤一氏は、「当社が開発したシステムでは、G-POSで電子マネーの利用状況などをリアルタイムに把握でき、店舗の運営効率向上に役立てられる。加えて、利用額に応じてポイントを付与するなど、顧客サービスの向上にも活用できる。電子マネーが普及するためには、お客と施設の双方にメリットをもたらす仕組みが欠かせない」と強調する。
同社が考案したシステムは、独自技術によって入店時にFeliCaカードにお金を入金し、退店時に返金する環境を整備するもの。この方法であれば、決済手数料の発生を抑えることができるわけだ。
ポイント付与で来客数は5割増、業務効率も大幅向上
山岸氏によると、系列のアミューズメント施設で行われた実証実験から、電子マネーの効果の大きさが明らかになったという。集金業務が大幅に削減されたことはもちろん、ゲームの遊技回数に応じてポイントを付与するサービスを実施したことで来客数が5割も増加した。また、G-POSにより料金設定を柔軟に変更できる点を生かし、来客数の少ない午前中にゲームの料金を下げることで、午前中の集客効率も大幅に高められた。ちなみに同システムは2002年、第3回日本IT経営大賞を受賞している。
トライアルを終えたことで、同システムは現在撤去されているものの、同社が提供する多機能両替機やメダル自動預け払いシステムは、オプションによりFeliCaのインターフェイスを搭載することがすでに可能。
「電子マネーを利用するためには、リーダ/ライタを各ゲーム機に取り付けねばならず、その分、導入コストがかさんでしまう。そこで、無線LANで収集されるゲーム機の課金データをG-POSにより分析することで業務効率を高めようというアミューズメント施設が多い。もっとも、電子マネーの利用が広がり始めた場合でも、当社の機器であればいち早く対応できる」(山岸氏)
ゲーム機の開発やマーケティング活動、さらに電子マネーなどを通じ、ICカードはアミューズメント業界に広く浸透しつつある。では、各社が講じる次の一手とは果たして。
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ICカードで変わるアミューズメント業界、マーケティング最前線! | |
Page1 ゲームの履歴管理を通じ可能性を高めるICカード技術 マーケティング分野での応用も着々と進展 |
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Page2 アミューズメント業界などからシステムの引き合い相次ぐ アミューズメント施設運営の課題を一掃する電子マネー ポイント付与で来客数は5割増、業務効率も大幅向上 |
Profile |
岡崎 勝己(おかざき かつみ) 通信業界向け情報誌の編集記者、IT情報誌などの編集者を経てフリーに。ユーザーサイドから見た情報システムの意義を念頭に、主にIT分野や経済分野でジャーナリストとして活動中。フォーカスするテーマはITと業務改革/イノベーション、人材論など。他方、情報システムうんぬんは抜きに、コンテンツビジネスなど面白ければ何でもやる一面も。 著書に「図解ICタグビジネスのすべて(日本能率協会マネジメントセンター)」などがある。 |
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