岡崎勝己のカッティング・エッヂ

電波法の改正はRFID普及の鍵となるか!?


岡崎 勝己
2008年6月26日
非接触ICカードやRFID技術が社会にもたらす変化とは何か。ユーザーサイドから見た情報システムの意義を念頭に取材活動を続けるジャーナリストが、独自の視点で“近い未来”の行く末を探っていく(編集部)

 RFIDを活用した各種システムやサービスが急速に多様化しつつある。RFIDに関する総合展示会「第3回RFIDソリューションEXPO」で目にした気になるソリューションをレポートする。

 ユーザーの二極化を踏まえた市場活性化のためのアプローチ

 RFIDを活用した各種ソリューションに関する総合展示会「第3回RFIDソリューションEXPO」が2008年5月14日から16日にかけて開催された。

 自動認識システム協会(JAISA)によると、2007年のRFID市場は前年比1.6%増の368億円。2006年の同12.9%増から一転、市場拡大に急ブレーキが掛かった格好だ。その原因として挙げられるのは、RFID(ICカード、タグ、チップ・インレット)以外の需要の減退である。

 実際に、出荷金額の内訳を見るとRFIDが同27.2%増の187億円と依然堅調に推移しているのに対して、リーダ/ライタは同14.3%減の150億円、応用機器も同31.7%減の26億円と大幅な減少に転じている。

 こうした“変化”の背景には、導入ユーザーにおけるRFIDの利用が加速する一方で、RFIDの利用に乗り出すユーザーが減少していることがあるとされる。つまり、検証を終え、本格的な活用に乗り出すユーザーと、いまだ利用に消極的なユーザーとに、ユーザー層が2極化しつつあるわけだ。

 RFIDソリューションエキスポではそうした現状を踏まえ、双方のユーザーに訴求する幅広いソリューションが出品され、さまざまな角度から市場活性化を図ろうとする各社の姿勢がうかがえた。

 読み取り精度向上に向け電波法の改正へ

 RFIDの活用を進める上での技術的な課題として、長らく指摘されてきたものの1つが読み取り精度にまつわるものだ。RFIDは物流SCM(サプライチェーンマネジメント)において大いに活用が見込まれてきたものの、今後、その利用をさらに拡大させるためには、同一構内においてアンテナの設置台数が増えた場合でも、電波干渉やラインの混線といった問題が生じないよう対策を講じることが不可欠といえよう。特に、物流分野において利用の本命と目されているUHF帯のタグは、ほかのタグと比べて通信距離が長い分、それらのトラブルに見舞われやすい。

 こうした問題を解決する“切り札”と期待されているのが、2008年5月に行われた省令改正をはじめとする電波法の改正である。

 従来、RFIDタグがリーダ/ライタと通信を行う際には、電波干渉を防ぐために、電波射出前にチャネルの空きを確認する作業が不可欠だった。だが、電波法の改正によって、RFIDタグがリーダ/ライタと別チャネルで情報のやりとりを行う「ミラーサブキャリア方式」の通信方式を採用した際には、チャネルの空きを確認する作業が不要となる。また、同方式では、近接する他チャネルの電波干渉を受けにくくなるようにチャネル配置を工夫することで、読み取り精度を格段に向上できると見込まれているのである。

三菱電機のUHF帯RFIDリーダ/ライタ装置「RF-RW003」と小型アンテナ

 三菱電機が出品していたUHF帯RFIDリーダ/ライタ装置「RF-RW003」は、ミラーサブキャリア方式への対応を強く訴えていた製品だ。従来からの「ベースバンド方式」ではチャネルの空きを確認する作業が、高速物流レーンなどにおいて読み取り精度を低下させる原因の1つとなっていた。だが、ミラーサブキャリア方式では、従来禁止されていた4秒以上連続した電波射出も可能になり、RFIDタグの取りこぼしリスクを大幅に軽減できるという大きなメリットがあるという。

 また、NECエンジニアリングでは複数のリーダ/ライタを一括制御し、電波干渉を防ぐよう自動的に電波出力をチューニングする「RFIDフロントコントローラ(仮称)」を参考出品。同製品は同一構内の複数ラインでリーダ/ライタを同時運用した過去の経験を基に開発されたもので、ほかのアンテナで読み取ったタグ情報などを基に、余分なタグ情報をフィルタリングする機能などを備えている。

 担当者によると、NECエンジニアリングでは同製品を10月にも発売する計画だが、「電波法の改正によって電波の射出方法の面からシステムの運用を改善でき、読み取り精度をさらに高めることが可能になるはず。認識率の面から導入を手控えてきた企業の利用を促せるのでは」(NECエンジニアリング)とのこと。

 なお、RFIDシステムは目に見えない“電波”で情報をやりとりするため、トラブルが発生した際には原因を特定することが極めて困難。そのため、導入に当たっては十分な事前検証が不可欠となるものの、容易にはラインを止めることができず、十分に検証を行えないと悩む企業も少なかった。そうした企業に対して、実証実験のために専用施設を貸し出すサービスとして、大日本印刷の「Optisite」やNECの「RFIDイノベーションセンター」なども、来場者の関心を集めていた。

 
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Index
電波法の改正はRFID普及の鍵となるか!?
Page1
ユーザーの二極化を踏まえた市場活性化のためのアプローチ
読み取り精度向上に向け電波法の改正へ
  Page2
システムの開発工数を抑えるサービスや製品も相次ぐ
マーケティングやセキュリティなど現実的なソリューションも

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