第3回 バーコードでは個体管理できないという誤謬


株式会社イー・ロジット
コンサルティング部
2007年12月26日
RFIDシステムの導入が期待される分野の1つに物流が挙げられる。果たしてITベンダが思い描くRFIDシステムは、物流現場が求めているものなのだろうか(編集部)

 「個体管理はバーコードには向かない。RFIDや2次元コードによって管理ができる」とシステムベンダの中で、そう主張される方がいるのですが、必ずしもそうとはいい切れません。現在の物流状況、求める機能を精査していくとバーコードでできることが意外に多いのです。

 今回は弊社が関与した事例の中から、当初考えられていたRFIDを導入せずに、バーコードで個体管理を実現させた2つのケースを紹介したいと思います。

 同一商品でも値付けが変わる中古本リサイクルを迅速に

 1つ目の事例は、多数の中古本を取り扱う「リサイクルオンラインショップ」で個体管理を実現させたケースです。

 現在、インターネットの普及に伴い、ネット上でリサイクル品の買い取りと販売を行うリサイクルオンラインショップという業態が注目を集めています。中古本、中古家電などさまざまな業種に対応したリサイクルオンラインショップが台頭しており、年平均6.6%の伸びで拡大する通販市場の中でもその伸びは大きいものがあります。

 また、リサイクルオンラインショップの中には、店舗の大型化やフランチャイズによる全国規模の多店舗展開によって、躍進を遂げるケースも多く見られます。

 ただし、一見すると上り調子に見えるリサイクルオンラインショップを経営する事業者は次のような難しい課題を抱えており、この課題をクリアできないが故に事業から撤退するケースも出ています。

(1)仕入れに当たる買い取りや販売価格の設定が、同一商品であっても商品の状態によって異なる。そのため、買い取り品を保管するセンタでは、個品別の管理を行わなければならないが、事業者の多くがシステムを導入しておらず、人的作業で管理しているため、「あるべき物があるべきところにない」現象が頻発し、作業に大きなロスを生じてしまう。

(2)ネット上に販売用の商品情報をアップする作業に時間が取られてしまう。

(3)ものによっては、翌日配送など短納期が求められる。

 今回紹介する中古本のリサイクルオンラインショップも短期間で大きく成長を遂げましたが、ほかの事業者と同様に上記の課題を抱えておりました。そこで課題を解消するため、当初はRFID導入を前提としたシステム構築を視野に入れ、改善を検討していきました。中古本の取り扱い冊数が多く、さらに個体管理をしていかざるを得ないことから、個体管理に適しているとみられていたRFID導入が効果を上げると考えたからです。

 RFIDタグは13.56MHz帯を使用。物流センター内のクローズドな環境で使われることを想定し、リサイクルしていくことでコストをできるだけ抑制することでROIを上げられると考えました。

 しかし、弊社もリサイクルオンラインショップを経営する事業者側も、RFIDの能力を初めから過信していたわけではありません。並行して、2次元コードやバーコードで管理できないかも検討しました。その結果、物流状況、導入コスト、効果から見て、個品管理であってもRFIDでも2次元コードでもなく、バーコード管理が最適と判断することとなりました。

 センター内の棚移動を含めた履歴管理を徹底

 改善後の物流センターの運用状況は次のようなものです。

 買い取りの場合、ユーザーが売りたい商品をWebサイトから申し込むと、最短で翌日には自宅まで商品を引き取りに行き、数日後には買い取り金額をサイトで確認できるようにします。

 物流センターの入荷エリアには、査定のためのラインが設置されており、宅配便により届いた商品が並んでいます。届いた商品を査定要員が査定し、買い取り価格を決定します。データベースに査定データを入力し、Webを通じて買い取りしたユーザーに承認を求めます。

 ほとんどの場合、買い取りが成立するので、査定後、すぐに販売できるように写真撮影をします。商品は先に棚へ格納され、買い取り成立後、インターネット上に画像を含めた販売用データを公開し、注文が入ると出荷に入る形となります。買い取りが成立するまで、通常は数日かかりますが、買い取りが決まるまで仮棚に保管するといったムダな作業は行っていません。

 さて、ここからなのですが、商品は査定を行い、商品個別のデータをシステム上のデータベース側に入力した後、それぞれの個別IDに対応したバーコードラベルを出力します。これを商品に貼付するだけで個体管理が実現でき、精度の高い在庫管理や効率的な入出荷管理を行っています。

 タネも仕掛けもありません。物流センターには大量の商品が保管されるわけですが、それでもバーコードを取り付け、データベース上の登録日付と商品IDをひも付けすることで、個体であっても、棚のロケーション、センター内のロケーション移動を含めた履歴追跡、アイテム単位での先入れ先出しをシステム上で管理できるのです。

 保管された商品の中には、買い取り価格が理由で、ユーザーと商品の買い取りが成立しない場合も発生しますが、バーコードによる個体管理で、買い取り不調商品の特定を迅速に図り、返却もすぐにできるような体制を整えています。

 商品の保管は、さまざまな商品が入荷され、サイズごとにエリアを分けるようにしています。基本は棚管理を行っていますが、棚に入り切らない大型商品を取り扱う場合も出てきます。入荷時の格納の際には空き棚のロケーションコードとバーコードラベルを無線ハンディターミナルでスキャンし、ひも付けします。フリーロケーションを採用することで、格納作業の効率化を図っています。

 
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Index
バーコードでは個体管理できないという誤謬
Page1
同一商品でも値付けが変わる中古本リサイクルを迅速に
センター内の棚移動を含めた履歴管理を徹底
  Page2
現場に適した作業手順・作業ルールづくりが基本
2種類のピッキングパターンを細分化して最適化
  Page3
携帯電話1台ごとの管理もバーコードで実現
将来的なRFID導入にも対応できる柔軟なシステム

物流現場から見るRFID 連載インデックス


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