
第1回
RDSC Framework for Logisticsとは何か
須永 啓太
イー・キャッシュ株式会社
プロフェッショナルサービス事業部
執行役員
2006年7月14日
モノを個品として認識するEPC
EPCglobalネットワークシステムは、インターネットとRFIDを組み合わせてモノの位置情報を容易に把握するための規格です。既存のバーコードではモノを個品として認識することができません。そこで、商品をシリアル単位で識別するためのコードとしてEPCが定義されました。
EPCで利用されるSGTIN(Serialized GTIN)は、その名前のとおり、バーコードで使用されているGTIN(国際取引商品番号)を内包する形で仕様が策定されました。
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図1 GTINとSGTIN |
GTINはGS1国際標準の商品コードであり、日本で主に使われているJANコードやUPCコードと互換性のある14けたのコードです(JANコードは13けたですが、GTINで表現する場合にはインジケータに0を設定して14けたにそろえます)。
SGTINは、簡単にいえば「GTIN+シリアル番号」です。GTINは商品の種別や包装の種類などで1つの商品番号を付番してきましたが、SGTINではシリアル番号を所持することで個品単位の管理ができるようになっています。
このように、EPCはモノを個品管理するためのコードとしてEPCglobalネットワークシステムの根幹をなすとともに、バーコードとの相互運用を可能にする番号体系を所有して、システム入れ替え時の過渡期に関しても考慮がされています。
EPCglobalネットワークシステムを構成するコンポーネント
図2はEPCglobalネットワークシステムで定義されたシステムコンポーネントとその概念図です。
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図2 EPCglobalネットワークシステムを構成するコンポーネント(画像をクリックすると拡大します) |
昨今のSOA(サービス指向アーキテクチャ:Service Oriented Architecture)ブームなどに代表されるように、システムのインターフェイスを取り決め、いわゆるシステム間の疎結合により大きなサービスを提供するというのが現在のシステム構築の主流となりつつあります。EPCglobalネットワークシステムもSOAの考え方に基づいて、システム間の連携が容易に行えるよう役割ごとに細かくコンポーネントを規定するとともに、コンポーネント間の通信形式も定義しています。
それでは簡単に各コンポーネントの概要を見ていきましょう。
RFIDミドルウェアは、リーダ/ライタを制御してICタグからEPCを読み取り、ALE Service(Application Level Events Service)に転送する役割を担います。ALE Serviceは送られた情報を分別して必要な情報だけをEPC ISに送ります。EPCISは送られてきたモノの情報を、保存するとともに、問い合わせ要求があった場合には結果を返します。
ONSはEPCからEPCISのURIを返します。これは、DNSがドメイン名からIPアドレスを返すのに似た仕組みです。EPC DSは、検索エンジンのようなもので、EPCやそれにひも付く属性状況から、検索したいモノの情報が保存されたEPCISの情報を検索します。
最後に業務システムですが、これは実際にモノの情報が格納されたEPCISより適宜情報を取り出して実際にサービスを提供するシステムです。ちなみに本連載ではこの業務システムを実際に実装するまでを連載の最終目的としています。
EPCタグ | モノを一意に識別するためのEPCが格納されたICタグ |
リーダ/ライタ | EPCタグからEPCを読み取る制御機器 |
RFIDミドルウェア | EPCタグの情報を操作するためのリーダ/ライタを制御する。また、ALE ServiceにEPCタグの情報を送信する |
ALE Service | RFIDミドルウェアを通じて送信されたEPCデータを分別収集し、グループ化や集計を行い上位のアプリケーションに送信する |
EPCIS | ALE Serviceより送信されてきたICタグの情報とイベント情報を保存するとともに、ほかのアプリケーションからの要求を受け付けて情報を引き渡す |
EPC DS | EPCもしくはEPCの属性情報から保存されているEPCISを検索し、URIを返す |
ONS | EPCからEPCISのURIを返す |
業務システム | EPCISより情報を取り出して業務処理を行う業務システム |
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Index | |
RDSC Framework for Logisticsとは何か | |
Page1 EPCglobalネットワークシステムで未来のSCMはどうなる? |
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Page2 モノを個品として認識するEPC EPCglobalネットワークシステムを構成するコンポーネント |
Page3 RDSC Framework for logisticsとは何か |
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RDSC Frameworkで体験するEPCglobal 連載インデックス |
- 人と地域を結ぶリレーションデザイン (2008/9/2)
無人駅に息づく独特の温かさ。IT技術を駆使して、ユーザーが中心となる無人駅の新たな形を模索する - パラメータを組み合わせるアクセス制御術 (2008/8/26)
富士通製RFIDシステムの特徴である「EdgeBase」。VBのサンプルコードでアクセス制御の一端に触れてみよう - テーブルを介したコミュニケーションデザイン (2008/7/23)
人々が集まる「場」の中心にある「テーブル」。それにRFID技術を組み込むとコミュニケーションに変化が現れる - “新電波法”でRFIDビジネスは新たなステージへ (2008/7/16)
電波法改正によりミラーサブキャリア方式の展開が柔軟になった。950MHz帯パッシブタグはRFID普及を促進できるのか
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