第6回
RFIDの本質的価値:
「コンテクスト・アウェアネス」の実現へ
河西 謙治
株式会社NTTデータ
ビジネスイノベーション本部
ビジネス推進部
課長
2006年11月25日
WebがWeb2.0へとシフトするのと同様に、RFIDもRFID2.0へと進化する可能性を秘めている。標準化されたRFIDの仕様や開発事例を引きながらRFID2.0のポテンシャルを探る(編集部)
これまで5回の連載で、RFID2.0と定義する次世代のRFIDシステムの姿について、現在のICタグ、ミドルウェア、プラットフォーム、ソリューションの開発への取り組みを通じて考察を行ってきた。最終回となる今回は、あらためてRFIDがもたらす本質的な価値とは何かを考えることにより、RFID2.0の方向性を考えることとしたい。
ユビキタスコンピューティングとRFIDの関係
RFIDは、しばしばユビキタスコンピューティング(もしくはユビキタスネットワーキング)の文脈の中で語られる。これはユビキタスコンピューティングの定義が、「目に見えないような形であらゆる環境に埋め込まれたコンピュータが、自律的に連携することにより、利用者がコンピュータの使用を意識することなく、生活や仕事において、いつでも、どこでも、パーソナライズされたサービスが享受できる」といったものであるため、この「あらゆる環境に埋め込まれたコンピュータ」を実現するためのキーデバイスとして、RFIDが位置付けられているからと考えられる。
ユビキタスコンピューティングは、ビジネスコンピューティングから始まったコンピューティング環境が、モバイルコンピューティングの発達により移動性を増し、パーベイシブコンピューティングにより埋め込み性と動性を獲得した、その先の概念である。
RFID1.0から2.0への進化も、ある意味ではこのコンピューティングの進化と同じプロセスをたどると思われる。すなわち、クローズドな環境において限定的な対象物に対して使用され始めるRFIDが、より粒度を上げつつエンベデッドになり、かつ適用領域が拡大していき、最終的には多様な情報連携がなされるというものである。
「いつでも、どこでも、誰でも、何でも」というユビキタスコンピューティングの概念は、裏返せば「いま、ここで、私だけに、必要な情報やサービス」を提供することである。これはRFIDによる情報取得が「いつでも、どこでも、誰でも、何でも」可能になっていき、それは「いま、ここで、私だけが、必要としている情報」をリアルタイムに取得できるということと同義と考えることができる。従って、RFIDの本質的価値を考えるうえでは、近年RFIDのメリットとして取り上げられる「ビジビリティ(可視性)」にとどまるものではなく、この「ユビキタスコンピューティング」の裏返しの概念を実現し得るデバイスとして認識する必要がある。
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Index | |
RFIDの本質的価値:「コンテクスト・アウェアネス」の実現へ | |
Page1 ユビキタスコンピューティングとRFIDの関係 |
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Page2 RFIDの本質とは? アウェアネス・エクセレンスへ |
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Page3 アウェアネス・エクセレンスの先鞭(せんべん)をつける RFID2.0へ向けた取り組みが普及を後押しする |
RFID2.0時代に備えるRFID入門 連載インデックス |
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