CS6で一層パワーアップしたデザインツール群
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アドビはCreative Cloudによって「クラウド統合」という新しい分野に大きく踏み出した。Creative Suiteとして提供され、長い期間をかけて洗練されてきたクリエイティブツールの数々は、その中核をなす存在である。Creative Cloudと同時にリリースされるCS6は、その特徴として以下のような項目が挙げられている。
- ミッションクリティカルなツールすべてがバージョンアップ
- 簡素化されたワークフローや64bit化製品の拡張、さらなる最適化、GPUの活用などによって、すべてのツールのパフォーマンスが大幅に向上
- iPadや各種デバイスに対応した制作機能を強化
- 印刷ならびにデジタルパブリッシング制作双方の効率性を強化
- HTML5/CSSなど、最新のWeb標準サポートをさらに強化
- 洗練されたモダンUIによりクリエイティビティを向上
Adobe CS6の価値 |
CS6は、Creative Cloudのメンバーとして利用するほか、従来通りの統合製品としてで購入することもできる。CS6では、「Master Collection」「Design Standard」「Production Premium」「Design & Web Premium」の4種類の統合製品が提供される。
従来と大きく異なるのは、Design PremiumおよびWeb Premiumが統合された点である。以下の表には、それぞれの統合製品に含まれるツールの内容がまとめられている。
CS6の4つの統合製品に含まれるツール |
また、アドビストアでの提供価格は下図のようになるという。製品ごとの個別の提供価格については、プレスリリースを参照していただきたい。
CS6の価格一覧 |
Creative Cloudで何が変わるのか
アドビ システムズ マーケティング本部 古村秀幸氏 |
古村氏は、Creative Cloudを選ぶ理由を次のように説明している。
「Creative Cloudによって、洗練されたクリエイティブツールをすべて入手できる。CS6製品とTouch Appsを組み合わせて使うことで、どこでもデザイン・制作が可能になり、あらゆるメディアのデザインと開発が誰でも行える。また、Webやスマートフォン、タブレットへの配信も簡単にできる。コミュニティとつながることもでき、クラウドベースの同期サービスやストレージによって、共同制作やアイデアの共有が可能になる。さらに、追加コストを支払うことなく、最新の技術やバージョン、新製品をすぐに利用できる」
ここにも挙げられているように、クラウドを利用することによって、PCやモバイル端末上の各種ツールを連携させ、出来上がった制作物をシームレスに配信までつなげることがCreative Cloudの強みといえる。
これを活用すれば、例えばアイデアを思いついた瞬間にTouch Appsでプロトタイプ化し、それを基にデスクトップ上で加工して精度を高め、クラウドサービスを利用して配信するといったワークフローも実現できるという。
Creative Cloudで実現するワークフローの例 |
WebツールはHTML5のサポートをさらに強化
CS6の登場は、Webコンテンツの制作者にも大きな影響を与えることになる。CS6に与えられたテーマには、HTML5/CSS/JavaScriptといったWeb標準技術のサポート強化が含まれている。それを象徴しているのが、Flash Professional CS6に追加されたHTML5サポート機能だ。Flash Pro CS6では、FLAファイルの出力だけでなく、HTML5用アセットの書き出し機能が提供される。
Flash Pro CS6ではHTML5用アセットの書き出しをサポート |
この機能は、「Toolkit for CreateJS」という無償エクステンションとして提供され、別途ダウンロードして追加することで利用できるという。
これによって、アニメーションやイメージ、ベクタ画像、音声/音楽、インタラクションといったコンテンツをHTML5向けに作成できる。つまり、Flash Proを使うデザイナや開発者は、これからは用途に応じてFlashとHTML5のどちらを対象とするのか自由に選択できるようになるということだ。
アドビのデベロッパーマーケティングスペシャリストを務める轟啓介氏は、「HTML5の書き出しをサポートしたことで、Flash Pro CS6はFlashオーサリングツールからWeb用のクリエイティブツールに進化した」と語っている。
轟氏による、Flash Pro CS6からHTML5アセットを書きだすデモ動画 |
なお、HTML5アセットの書き出しには、クリエイティブなHTML5コンテンツを作成するための「CreateJS」というフレームワークを利用しているそうだ。著名なFlashのエンジニアであるGrant Skinner氏がアドビの支援の下で開発しており、Flashの技法をできるだけ変えないで使えるという点が大きな特徴だという。
HTML5アセットの書き出しを実現するToolkit for CreateJS |
またCreateJSにより、従来のDreamweaverだけではなく「Flash ProからPhoneGapを使って、スマートフォン向けアプリを作る」ワークフローも可能だという。
Flash Proだけではなく、WebサイトやWebアプリケーション用のデザインツールであるDreamweaver CS6およびFireworks CS6でも、HTML5/CSS3のサポート機能が強化されている。
例えば、Dreamweaver CS6ではマルチスクリーン対応のWebサイト制作をサポートするための機能として可変グリッドレイアウトや、GUIによるCSS3トランジションの設定機能、jQuery MobileテーマやFireworksで作ったテーマをスウォッチから指定する機能などが提供される。
アドビ システムズ デベロッパーマーケティングスペシャリスト 轟啓介氏 |
またFireworks CS6では、jQuery Mobileテーマの作成、作成したオブジェクトからCSSプロパティを自動で作成する機能や、CSSスプライトの自動生成といった機能が提供される。CSSスプライトとは、複数の画像部品を1枚の画像ファイルにまとめてCSSで表示範囲を指定する機能である。轟氏は「この機能でFireworksが手放せなくなった」と強調していた。
Webコンテンツを制作するデザイナや開発者にとって、HTML5やCSS3、JavaScriptは必ず押さえておくべき必須技術になっている。しかしながら、HTML5自体の仕様はまだフィックスしておらず、ベンダプレフィックスなどの存在によってデザイナ・開発者に負担が掛かっているというのが現状だ。「この状況をツールの力で何とかできないか、というのがツールベンダとしてのアドビのアプローチ」だと轟氏はいう。CS6には、そのような同社の姿勢が強く現れている。
アドビ、そしてデザイナ・開発者の挑戦の行方は
Creative CloudおよびCS6の登場は、デザイナや開発者に対して極めて大きなインパクトを与えるものだ。
特にCreative Cloudについては、発表当初はライセンス体系の変更に対する批判的な意見が多かった。しかし現実問題として、時期を決めたうえでスイート製品のすべてを一斉にアップデートするという従来のようなリリースサイクルでは、昨今の市場の変化に対応することは難しい。そのサイクルから脱却し、継続的で素早い価値の提供を行うという、アドビにとって極めて大きな挑戦だといえる。
そして、それと同時にデザイナ・開発者に対しても次なる挑戦への踏み出しを望んでいるサービスでもある。クラウドを利用した連携、マルチデバイス対応、そしてWeb標準技術のサポートなど、新しい要素を使った魅力的なサービスやコンテンツが生み出されることを期待したい。
Creative Cloudで継続的な価値の提供を目指す |
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Adobe CS6/Creative Cloudは現場の負担を減らすか CreateJSでFlash ProからHTML5の書き出しも |
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Page1 開発者/デザイナ向けCS6とCreative Cloudの全容 CS6では、ついに単体製品のサブスクリプション版も Creative Cloudは月額5000円 クラウドを生かしたWebサービス、Creative Service CS6+デザイナ向けスマホアプリ群、Creative Apps アイデア/制作物をクラウドで共有、Creative Community |
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