新時代の業務用モバイルRIAを考える 特集:新時代の業務用モバイルRIAを考える(前篇)

業務用途で本当に“使える”モバイル端末はどれだ?


アクシスソフト株式会社
永井 一美
2009/2/26

UMPC/ネットブック

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 ノートPCとスマートフォンの間といった端末であり、マイクロソフトが定めたUMPCの基本仕様だと、以下のようになっている。

  • 重さ:0.9kg以下
  • スクリーンサイズ:7インチ
  • タッチパネル、無線LAN、Bluetoothをサポート
  • バッテリー駆動時間:2.5時間以上
  • ハードディスク容量:30〜60Gbytes
  • など

 しかし、概念は広がっておりハードスペックでなく「小型でモバイルに適したパソコン」と考えてもよいが、ハードディスクでなく「SSD」と呼ばれるフラッシュメディアを搭載しているものも多い。UMPCにはWindows Vistaを搭載している機種、ネットブックにはいまもWindows XP搭載機種があるが、UMPCやネットブックが想定する用途ならば「立ち上げに時間のかかるOSを搭載してほしくはない」「すぐに立ち上がってほしい」と思うのは筆者だけだろうか。

 UMPC/ネットブックは現状では簡易な作業(インターネットでの情報閲覧、メールチェックなど)での利用に向いている。しかし、ハードの進歩でノートPCに近づくことになるだろう。現時点での選択ポイントは、そのままノートPCとの比較論になる。

ノートPC

 小型で持ち運びできるだけで、基本的にデスクトップパソコンと同様である。業務用途でモバイル利用する場合は、携帯やスマートフォンの画面サイズでは事足りない場合があるだろう。対面でお客さまに画面を見せながら説明するなどといったシーンが典型的だ。

 なお、音声通話は考えられていない。携帯やスマートフォンとは筺体サイズが異なり、立ったままで使う人はいない。パソコンであるから情報の蓄積もできるため、情報漏えい事件の一方の元凶(もう1つは、ファイル共有ソフト)のように思われている。

 このことで、シンクライアントへのシフトが検討されるが、情報の制御においてはシンクライアントと反対側と思われているRIA(Rich Internet Application)/リッチクライアントもローカルに情報は持たないため、セキュアである。シンクライアントはクライアント管理や統合の手法であり、RIA/リッチクライアントはエンドユーザーに対するアプリケーションの生産性を高めるためにある。両極で比較される技術ではない。

 情報漏えいはハードディスクなどでの情報管理の問題であり、USBなどの外部デバイス制御も含めてソフトウェアで防ぐことは可能だ。

コラム 「何のための個人情報保護法なのか?」

話がそれてしまうが、個人情報保護法の根本の思想は、「個人の情報はその個人のものである」という原則と、「個人へのサービスのため情報を有効利用する」ものと理解している。しかし、そのために筆者がいいたいのは「情報に対するルールを決めましょう」ということだ。情報漏えいを起こした場合、悪意がなければ“過失”だが、過失の結果、悪用されるか否か不明な時点でも企業が存続できなくなったケースを筆者は知っている。

企業は個人の情報を有効に使うことで、きめ細かいサービスを提供できる。 企業は意味を持った情報を分割して管理するといった努力もしている。しかし、情報漏えいにおいては、「過失」に対する社会的制裁が、「悪用されるか否か」でなく「紛失時」に行われており、モバイルの有効活用に企業が及び腰になっている。ひいては、個人へのサービスの低下につながったり、企業の戦略的な生産性を落としている面があるように思う。もちろん、個人に被害が及ぶことは絶対になくさなければいけないが、一方でサービスの向上は個人のメリットになるわけなので、バランスの良い運用が望まれる。

ノートPC、UMPC/ネットブックをモバイルで活用する場合、企業は上記の情報漏えいやセキュリティの議論なくして、選択することはできないのが現状だ。これは本来、携帯でもスマートフォンでも同様だが、個人にとって携帯は必須アイテムのため風潮としては携帯やスマートフォンに対する意識はノートPCより低いように思う。

しかし、いずれの端末においても現在の技術やサービスにより情報が悪用されることを防ぐことは可能だ。

HT(ハンディ・ターミナル)


 「モバイル」の範疇だがほかの端末と異なり、より業務に密着している。入出庫や検品、受発注などでの利用が多く、商品や荷物を取り扱う業務に使われることからバーコードリーダが標準装備だったり、サーマルプリンタが付いている端末もある。利用シーンや環境に合わせた機能として、落下強度や防水など堅牢性も必要となることが多い。

 数年前からWindows CEやWindows Mobileといった汎用OSを搭載している端末も増え、開発環境は改善されている。従来は、組み込み系の技術者しか開発はできなかったが、現在ではデスクトップアプリケーション開発者が参加可能となっている。

 端末コストの削減から、携帯やスマートフォンを利用してHTを代替するケースもあるが、機能面での「完全代替」はできないと考える方がよい。業務に特化して進化してきた端末と音声通話をメインにしている端末では、操作性や環境対応など比較にならない。

 HTは過酷な環境での利用ニーズやその業務に従事する作業者の人間工学的なものも吸い上げて進化してきている。コストを追うのみでは本来の目的である利用者の作業生産性や確実性を落としてしまうから注意が必要だ。

モバイルの活用なくしてユビキタス社会は語れない

 このように今回は、「業務用途で本当に“使える”モバイル端末はどれだ?」をテーマに各端末を検証してみたが、いかがだっただろうか。最後に、「ユビキタス社会」の視点から“モバイル”というものを考えてみよう。

 「ユビキタス」という言葉が現れてから久しいが、いまは「いつでも、どこでも」という単一方向のイメージを越え、利用者がネットワークに参加し双方向とも違う「参加者の知」を皆が利用/共有する時代になっている。

 少し古いが、以下は「モバイル社会白書2007」(NTT出版)の記述となる。

「……ビジネスパーソンのワークスタイルは定型ワークと非定型ワーク、ロケーションフリーとロケーションフィックスに分けて考えられる。モバイルの活用が想定される「非定形ワーク/ロケーションフリー」は14.5%、「定型ワーク/ロケーションフリー」は1.6%。「非定形ワーク/ロケーションフリー」のワーカー層は20代後半から40代の中堅が多い。企業の中核を担っているこの層がモバイルを有効に活用すること、創造性を発揮することは企業戦略に直結する……」

 非定型ワーク/ロケーションフリーで仕事をしている人々は、専門性を持った営業活動やスキルを必要とするプレイングマネージャーなど、知的生産活動で競争を勝ち抜こうとしている層であり、その層が「モバイル」という道具を利用し使いこなすことは企業の成長にとって非常に重要な価値を生み出すことになるだろう。

 次回は、Androidに触れるとともに、業務用モバイルRIAを考える際のもう1つのポイントである“モバイルにおけるUI”について考察してみたい。

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プロフィール:永井 一美(ナガイ カズミ)

アクシスソフトにて、RIA/リッチクライアント製品である「Biz/Browser」、プリント製品である「PrintStream CORE」の開発、販売に入社当初より深くかかわり、大手企業への導入を推進してきた。2006年より代表取締役社長に就任。「エンドユーザーの生産性を高めることが企業の生産性向上に寄与する」と、フロントに対する思いは強い。

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 INDEX
特集:新時代の業務用モバイルRIAを考える(前篇)
業務用途で本当に“使える”モバイル端末はどれだ?
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新時代が始まった日本の「ケータイ」
業務用途におけるモバイル端末の選択肢
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携帯電話
スマートフォン
携帯電話とスマートフォン
iPhone
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UMPC/ネットブック
ノートPC
コラム 「何のための個人情報保護法なのか?」
HT(ハンディ・ターミナル)
モバイルの活用なくしてユビキタス社会は語れない



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