新時代の業務用モバイルRIAを考える 特集:新時代の業務用モバイルRIAを考える(前篇)

業務用途で本当に“使える”モバイル端末はどれだ?


アクシスソフト株式会社
永井 一美
2009/2/26

携帯電話

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 現状では、携帯電話(以降、携帯)をデータ通信端末としても利用するケースが多いように思う。「慣れている端末」であるから操作に対する壁がないことや、回線料を法人と個人に料金分けができるサービスなど、通信キャリアの「法人サービス」がある程度整っていることも要因として大きいだろう。携帯利用は、そのままスマートフォンの伸びがない点に連動しているとも思われる。

 通常の携帯UIはWindowsのUIにはるかに劣るが、最近の携帯は「QWERTYキー」「フルタッチパネル」などスマートフォン化しており、外見は差がなくなっている。しかし、キャリア主導であることは変わらず、オープンな環境ではなくアプリケーション搭載における自由度がない。

 開発面では、デスクトップアプリケーション開発者の言語スキルではなく携帯での開発技術が必要となり、開発生産性の問題や技術者が特定される問題がある。また、通信キャリアの特定から機種も特定される。そのため、システムの運用期間と端末のリプレイス時期など数年先の考慮が必要だろう。

 2008年にソフトバンクより販売されたiPhoneは、既存のキャリア主導の仕組みと異なる初のケースで、モバイルにおけるプロプライエタリとなるのかもしれない。

 なお、日本の携帯が「ガラパゴス」とやゆされるクローズ性に対しての「オープン」というキーワードだが、ソースが開示されていることがオープンなのか、自由に企業が参加できることがオープンなのか。

 完全オープンには弊害もある。誰が品質を担保するのか? 参加型で品質が高めるものの信頼をどう考えるのか? 以前はコンピュータシステムにおいても、Linuxを金融など重要なシステムで利用することが懸念されていた。一方で、企業主導の場合には一定の品質が保たれるメリットがある。よって、ある面では品質を担保するための仕組みを持ち、そのうえでさまざまな企業が参加できたり、イノベーションを受け入れることができるといったものが「望まれるオープン性」だろう。

スマートフォン

 スマートフォンは、日本の携帯のような「垂直統合型」でなく「水平分業型」である。現行では完全SIMロックフリーにはなっていないが、ハード/回線/アプリケーションベンダがそれぞれを分業するデスクトップパソコンと同じオープンな世界であり、ユーザーは自由にアプリケーションを選んで利用できる。企業側から望まれるオープン環境の(「オープン」のとらえ方は前述)「モバイルPC」だが、ノートPCなどと異なり音声通話機能を有している。

 しかし、冒頭のように「業務用モバイルはスマートフォン」ということにはなっていない。やはり、まだまだ市場の初期段階である。阻害要因としては、ユーザーが携帯の操作性(親指入力)に慣れていることや、汎用OSが搭載されているため、かえって画面サイズや筺体(きょうたい)サイズを考慮したヒューマンインターフェイスがないことも根本的な要因だ。「デスクトップパソコンの一部用途をスマートフォンにて代替する」という“夢”と実態とに乖離があり、それが導入をちゅうちょさせていることもあるのではないか。

 日本においては、「日本語変換」という欧米にない余分な操作が必要であり、アルファベットのみの入力とは異なり手間が掛かる。これについてのUIは、「汎用OS」での弊害で未成熟な端末が多い。

携帯電話とスマートフォン

 一方、携帯は最初からいまの画面サイズであり、そのUIはプラットフォームの機能制限の中で構築され、考えられている。スマートフォンは「モバイルPC」であり、デスクトップパソコンと比較されてしまう。画面サイズの差はそのまま表現力の差であり、同じことはできない。フルキーボードも“慣れ”ということがあるにしても万人が使いこなせるものでもない。指の大きな人や爪を伸ばしている女性など入力者の差を吸収できるサイズを持てない。本来、これは携帯でも同様であるが(長い爪の女性が指の腹の部分で、器用に文字入力しているのを見るが、あれは「神業」)。

 携帯にしてもスマートフォンにしても、“携帯性/サイズ”は“使いやすさ”と相反する。この阻害要因を「用途とのバランス」として受け入れないと企業導入は進まない。この部分は、ハード/ソフト/運用でのバランスでカバーできればよい。

 また、最近ではネットブックのような携帯性を持つ「Mobile Companion(モバイルコンパニオン)」といわれる端末も出ている。ハードディスクを持たないシンクライアントだが、実行部をつないだスマートフォンであり、PCのようにディスプレイやキーボードを利用したい場合に便利である。シーンによってスマートフォン単体との使い分けができるだろう。

 なお、端末の環境がオープンになった場合は、携帯電話とスマートフォンの概念もなくなるだろう。音声通話に主軸を置けばいまの携帯であるし、データ通信に主軸を置けばいまのスマートフォンである。それが、同じプラットフォームの上で用途に合わせて作られることになる。

iPhone

 携帯や従来のスマートフォンと一線を画す「さすがにアップル」といえるものがiPhoneだ。iPod同様に画面サイズを筐体いっぱいにし、音声通話端末でありながらテンキーを排除するという思い切りと斬新な画面UIを持ち、スマートフォンともPDAとも表現される。

 最近は、iPhoneの指でのスライドインターフェイスを持つ端末が、ほかのベンダからも出ている。「Mobile World Congress 2009」で発表されたWindows Mobile 6.5も、このUIを搭載しているようだ。業務利用として考えるとき、画像を必要とする業務にはiPhoneの画面の大きさとUIは非常に有効である。

 iPhoneは一方で、アップル主導での端末であり垂直統合といってもよい。OSの汎用性の問題やFlashを載せないなどのクローズ性もあるため、企業での導入は慎重になるものと思われる。また操作性という面では、キーを排除していることやUIの独創性からも両手を使うことが多く、利用シーンに配慮しなければいけないだろう。

 しかし、日本での閉じた業務利用を別にして、iPhoneが日本市場にもたらしたものは、絵文字が使えないといった日本の携帯との比較ではなく、「世界中に流通している端末がありApp Storeという流通経路をすでに備えている」魅力であり、コンテンツ・プロバイダにとっては世界を市場に考えられる端末といってよい。

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 INDEX
特集:新時代の業務用モバイルRIAを考える(前篇)
業務用途で本当に“使える”モバイル端末はどれだ?
  Page1
新時代が始まった日本の「ケータイ」
業務用途におけるモバイル端末の選択肢
Page2
携帯電話
スマートフォン
携帯電話とスマートフォン
iPhone
  Page3
UMPC/ネットブック
ノートPC
コラム 「何のための個人情報保護法なのか?」
HT(ハンディ・ターミナル)
モバイルの活用なくしてユビキタス社会は語れない



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