Stage3DでコンソールクオリティのWebコンテンツを実現
スクウェア・エニックスは、Stage3Dを利用してコンソールゲームと同等のクオリティを持ったWebコンテンツを実現する試みを行っている。この日は、まず同社月岡伸博氏が、この研究開発の概要を説明した。
sipo.jp 尾野政樹氏(左)とスクウェア・エニックス オンライン事業部テクニカルプランナー 月岡伸博氏(右) |
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まず、このようなチャレンジを必要とした背景としては、ブラウザゲームのユーザー数の増加があるという。PCゲームの市場はそれほど大きくはないが、ソーシャルネットワーク/SNSの普及などによってブラウザゲームには、まだ大きな可能性がある。そこに同社の強みである高いグラフィッククオリティを再現できれば、これまでにない新しい価値を提供できると考えたということだ。
鍵になるのは、もちろんStage3Dである。月岡氏は、Stage3Dの利点として次の3つを挙げた。
- 普及率が高い―過去の統計からFlash Player 11の普及率はリリース後4カ月で65%と想定できる
- 3D表示性能が高い―Flash Player 11では60FPSで約10万ポリゴン
- マルチデバイス展開に強い―AIRによってスマートフォンやタブレットへの展開も可能
目標として挙げた実現項目は、30FPS、短いロード時間、モデルに対する陰影、リアリティのある影、背景の空気感など。検証は、PlayStation 2版のファイナルファンタジー XIIおよびWii版のファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル クリスタルベアラーから、モンスターとフィールドマップの3Dモデルを読み込んで作成したデモゲーム「BARTS」によって行われた。
Ineternet Explorerで動くStage3Dのデモ「BARTS」動画 |
なお、3Dライブラリは「Alternative3D」を採用し、Alternative社もこの研究開発に協力しているとのことだ。
開発に当たっては、Web業界におけるFlash開発のノウハウが不可欠ということで、社外からも何名かのFlash開発者に協力を依頼した。講演ではその1人である尾野正樹氏から、技術的な解説が行われた。
尾野氏によると、まず問題になったのが3Dデータの扱いだという。3Dデータのフォーマットとしては「Collada」(.daeファイル)を採用しているが、Colladaはツールによる方言の多さや、ファイル容量の大きさ、変換速度の遅さ、テクスチャなどがファイルの複数化など、多くの欠点を抱えている。特にファイル容量や変換速度は、快適なゲーム性を実現するうえでは大きな問題だったという。
ColladaファイルをFlashに読み込む流れ(尾野氏の講演資料より) |
そこでBIRTSでは、変換後のインスタンス化時点のデータを独自形式のファイルとして持つことによって、この問題を解決した。これによって、ファイルサイズや、アニメーション展開時間は現実的なレベルまで縮小でき、フレーム数も1体の表示で60FPS、5体でも30FPS以上を実現できたとのことだ。
展開したインスタンスを独自ファイルとして保持することで解決(尾野氏の講演資料より) |
ただし、このようなコンテンツ独自の形式を採用する場合、各ライブラリの内部構造にまで踏み込んだ理解が必須になるとも語っていた。
独自ファイルとColladaの比較(尾野氏の講演資料より) |
また尾野氏は、実現したリッチな3D表現として、ミップマップやフォグ、反射表現、スペキュラハイライト、バンプマップの利用例や、丸影のつなぎ合わせによる自然かつ計算負荷の小さい影表現などを紹介した。
左半分が未処理、右半分がミップマップを効かせた画像(尾野氏の講演資料より) |
フォグの利用で遠くの背景がリアルに(尾野氏の講演資料より) |
丸影チェインを利用して軽い処理でリアルな影を実現(尾野氏の講演資料より) |
なお、CPU側の加工処理は速くないため、パフォーマンスの細かなチューニングには「AGAL(Adobe Graphics Assembly Language)」を使う必要があるとのことだった。
尾野氏は、上記のようなFlash技術の利用に関するノウハウに、ゲーム会社の持つノウハウを組み合わせることで、さまざまな表現が可能になり、最終的にはPlayStation 2レベルの表現力が可能になると語った。
さらに、モバイル端末にもテクスチャレベルを落とすことで、モバイル端末での動作も可能とのことで、実際にタブレットで実行するデモも行った。モバイル対応にはテクスチャやポリゴンを最適化するためのノウハウが必要であり、ゲーム会社の持つスキルが重要になると指摘した。
モバイル端末で動くStage3Dのデモ「BARTS」動画 |
月岡氏によれば、今回の研究開発によって、プレイヤー1人、NPC(Non Player Character)4人くらいまでであれば、30FPSで遊べることが確認できたという。ただし、まだ研究を続けている段階であり、リリース時期は未定とのことなので、今後の展開に期待したいところだ。
各種端末による検証結果。ドライバを最新にすることで、いずれも30FPSを実現(月岡氏の講演資料より) |
世界的ヒットゲーム「Angry Birds」でもFlashを採用
Rovio Entertainment Business Development, Japan Antti Sonninen氏 |
大ヒットゲームAngry Birdsの提供元であるフィンランドのRovio Entertainmentからは、日本代表のAntti Sonninen氏が来日し、2月14日にリリースしたばかりのFacebook版Angry Birdsについて紹介した。
このAngry Birds FacebookはすべてFlashテクノロジーによって開発されている。また、同氏はAngry Birdsの今後の展開についても言及した。
Sonninen氏には講演後にインタビューする機会があったため、講演の様子も併せて別途レポートしたい。
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「ADC MEETUP 04 Social Gaming」レポート ソーシャルゲームのUI開発はAdobe AIR/Flashが主役になるか |
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