解説

最新Pentium 4-2.53GHzに見るPCの買い替え時

2. Pentium 4-2.53GHzの性能を測る

元麻布春男
2002/05/08


400MHzから533MHzへのFSB変更の効果は?

 さて、ここでは400MHzと533MHz、両方のFSBクロックに対応したIntel 850Eを用いたD850EMV2マザーボードで、新しいPentium 4の性能を確かめてみることにしよう。用意したPentium 4プロセッサは、今回発表されたものの中から2.40B GHzと2.53GHzの2種、そしてFSB 400MHzの2.40GHzの合計3種だ。メモリも含めて周辺機器類はすべて同じで、プロセッサのみを差し替えてベンチマーク・テストを実行した。用いたシステムのハードウェア構成は下表のとおりである。OSはWindows XP Professionalで、テストとして3DMark2001 SE、SYSMark2002、PCMark2002の3つを実行した(テストはすべて1024×768ドット、32bitカラー、リフレッシュレート85Hzの設定で実施した)。

マザーボード Intel製D850EMV2
メモリ 512Mbytes PC800 RDRAM
グラフィックス・カード ATI Technologies製ATI RADEON 8500 64Mbytes
ハードディスク Seagete Technology製ST360021A (Barracuda ATA IV)
イーサネット・カード Intel製EtherExpress PRO/100+
サウンド・カード AC'97 CODEC(オンボード)
ベンチマーク・テストを実施したハードウェア構成

 その結果の一部をグラフにまとめておいた(すべての結果とベンチマーク・テストの概要は次ページの「ベンチマーク・テストの結果」を参照のこと)。これを見て注目したいのは、FSBを400MHzから533MHzに引き上げた効果が出ているということだ。P6コアのプロセッサ(Pentium Pro〜Pentium III)では、当初の66MHzから100MHz、そして133MHzへとプロセッサのFSBが引き上げられてきたが、FSBの引き上げは一般的なアプリケーションにおける性能向上に必ずしもつながらなかった。それに対して、Pentium 4では、同じ動作クロック2.4GHzのプロセッサ同士の比較においても、明確な違いが見てとれる。しかもその差は、プロセッサ・クロックのグレードが1つ上がったくらいの効果がある。Pentium 4-2.40B GHzのベンチマーク・テスト結果は、おおむねPentium 4-2.40GHzとPentium 4-2.53GHzの中間、という結果になっている。

大きなグラフへ
SYSmark2002の結果
 
大きなグラフへ
PCMark2002の結果

 個別のテストについてだが、3DMark2001 SEは、ここではデフォルトの状態、すなわちRADEON 8500のジオメトリエンジンを使う設定で実行してあり、Pentium 4がサポートするSIMD命令を使う設定(ソフトウェアT&L)には設定していない(3Dmark2001 SEについては「ベンチマーク・テストの結果」を参照のこと)。それでも、プロセッサの性能が上がると、やはり3Dグラフィックス性能も向上する。SYSMark2002は、トータル性能を示すRatingが6刻みで並んでおり、FSBを引き上げた効果がかなりハッキリしている。また今回の結果では、プロセッサ・クロックを上げて効果があるのはInternet Content Creationの分野、FSBを引き上げて効果が高いのはOffice Productivity、ということもいえるだろう。

 PCMark2002は、テスト結果として「CPU」と「Memory」のほか、ハードディスクの性能も提示するが、ここではハードディスク性能の結果については割愛した。「CPU」については、2.40GHzと2.40B GHzの差が極めて小さいが、プロセッサ・コアの動作クロックが本来は同じであることを考えれば、妥当な結果といえるだろう。

 その一方で「Memory」については、同じPC800 RDRAMを用いながら、プロセッサの性能向上に伴い、大きくスコアが上昇している。ただし、これをメイン・メモリに対するアクセス帯域が拡大していると単純に解釈することはできない。PCMark2002のメモリ・テストには、グラフィックス・カードのメモリ・アクセスも含まれており、メモリ・テストのスコアの向上は、この影響を受けている可能性が高い。下表は、グラフィックス・カードをGeForce3に変えた場合のPCMark2002のテスト結果だが、ここでも「CPU」のテスト結果がRADEON 8500の場合と同じような傾向で向上する反面、「Memory」のテスト結果の伸びは小さくなっている。つまり「Memory」のテスト結果は、プロセッサやFSB、メイン・メモリよりも、グラフィックス・カードが大きく影響していると考えた方がよいだろう。

Pentium 4-2.40GHz Pentium 4-2.40B GHz Pentium 4-2.53GHz
CPU RADEON 8500
5802
5883
6187
GeForce3
5767
5775
6074
Memory RADEON 8500
5344
5859
6119
GeForce3
5014
5136
5302
グラフィックス・カードの違いによるPCMark2002の結果

3年前のPCとの性能差を考える

 いずれにしても、P6コアの世代と異なり、Pentium 4ではFSBクロックを引き上げたことによる性能向上が期待できそうだ。また、現時点で最高動作クロックとなる2.53GHzのPentium 4は、最も高い性能を期待できるプロセッサと考えてよいだろう。では、過去のシステムに比べてどれくらい性能が向上しているのだろうか。そう思い、比較のために下表のようなシステムを用意し、テスト結果を比較した。表のシステムを構成するにあたり考えたのは、だいたい3年前、1999年ごろのパフォーマンスPCセグメントのマシンにスペックを近づける、ということだ。これは、いわゆる2000年問題を前に、企業のクライアントPCが大量に入れ替えられた時期にも一致する。例えば、使われているプロセッサのPentium III-450MHzは1999年2月26日に発表されたものだし、これと組み合わせるパフォーマンスPCセグメントのチップセットは、当時定番であったIntel 440BXである。

プロセッサ Pentium III-450MHz
マザーボード Intel製SE440BX
メモリ 512Mbytes PC100 SDRAM
グラフィックス・カード ATI Technologies製3D RAGE PRO AGP 2X
ハードディスク IBM製Deskstar 60GXP 40Gbytes
イーサネット・カード 3Com製3C905-TX
サウンド・カード ヤマハ製YMF724
3年前の環境を想定したハードウェア構成

 1999年に発表されたグラフィックス・チップとなると、本来ならばNVIDIAのRIVA TNT2が該当するのだろうが、ビジネス・クライアントでの導入率は決して高くなかったハズだ。そこで、ここでは若干古いものの、ATI Technologiesの3D RAGE PRO AGP 2Xを組み合わせてみた。イーサネット・カードやサウンド・カードは、当時、広く使われていたものを採用した。メイン・メモリは当時の平均よりかなり多くなっているが、これはWindows XPという当時存在しなかったOSを使うためでもある(この程度の拡張は多くのPCが行っているだろう)。ハードディスクだけは、当時のものが用意できず、少し新しいものになってしまった。

 この参考システムと最新のPentium 4システムの性能差は、思った以上のものだった。ほとんどのテストで6倍程度、テストによっては性能差が8倍近いものもある。3DMark2001 SEについては、3D RAGE PRO AGP 2Xでは、まともに実行することもできなかった。とりあえず、最初のテストだけは16bitカラーに設定することで実行できたが、テクスチャの貼り込みに失敗しているうえ、フレーム・レートも2〜3frames/s程度で、とてもアプリケーションが実行できる状態ではなかった。

3年前のPCはそろそろ更新時

 ここで取り上げたスペックに近いマシンは、おそらくいまでもかなりの数が現役で使われていると思う。使っているユーザーも、このマシンで何も困らない、と考えているかもしれない。確かに、当時のアプリケーションを当時のOS上で使い続ける分にはそのとおりだろうが、最新のOSやアプリケーションを使うには、かなり辛くなってきているハズだ(6倍というのはそういう差だと思う)。実際、Windows XPの起動時間ひとつとっても、明らかに待たされる気がする。ACPIへの対応やハードディスクの容量なども含め、そろそろ更新すべきときが近づいてきている。

 FSBを533MHzに引き上げたPentium 4は、現時点で最も高い性能が期待できるプロセッサであり、3〜4年前に導入したシステムを更新するのに(新しく導入するシステムを同じように3〜4年使うのであれば)最も相応しい。ただ、現時点ではサポートするプラットフォームがIntel 850Eしかないことが気がかりである。現時点で、DDR SDRAMベースのシステムよりIntel 850EのようなDirect RDRAMベースのシステムの方が、絶対的な性能で優位にあることは間違いないが、これまで流通していないtRACが40nsのモジュール(RIMM)を要求されること、ICH2が使われ続けるなどプラットフォームの更新が最小限に留められていること、などを考えると、Intel 850Eのプラットフォームをストレートにすすめにくいのが実情だ。

 上述したとおり、Intelはすでに、DDR SDRAMをサポートしたIntel 845EならびにIntel 845G(Intel 845Eをベースにグラフィックス機能を内蔵したもの)を用いたマザーボードの展示を行っている。出荷時期もこの第2四半期中であることが明らかにされている。FSBを533MHzに引き上げたPentium 4がDDR SDRAMのプラットフォームでどう振舞うのか(Direct RDRAMベースのプラットフォームとの性能差がどうなるのか)は、実際に発表されるまで分からないが、非常に気になる存在であることは間違いない。間もなく登場すると予想されているNetBurstマイクロアーキテクチャ・ベースのCeleronも含め、すべてが出揃う第2四半期末までじっくりと検討するのがよいかもしれない。

 なお、今回実施したベンマーク・テストの結果と概要については、次ページにまとめてあるので参照していただきたい。

 
 INDEX
  最新Pentium 4-2.53GHzに見るPCの買い替え時
    1.533MHz FSB対応のPentium 4発表
  2.Pentium 4-2.53GHzの性能を測る
    3. ベンチマーク・テストの結果
 
 「System Insiderの解説」


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