Pentium Pro
【ペンティアム・プロ】
Intel社が1995年に発表・出荷した、Pentiumに続く、第6世代のx86アーキテクチャのプロセッサ。開発コード名はP6であり、「6」にちなんだ製品名が付けられると目されていたが、当時すでに広く認知されていた「Pentium」というブランド名を活かすために、「Pentium Pro」と名付けられた。
Pentium Pro 写真提供:Intel |
Pentium Proは、一般ユーザーの視点から見た命令セットアーキテクチャはあまり拡張されていない(条件付きデータ移動命令が追加された程度)。システムプログラムの視点から見ると、拡張割り込みフラグ機能(Windowsオペレーティングシステムなどで使われる仮想8086モードでの割り込み処理を高速化する機能)、4Mbytesラージページをサポートした仮想記憶機能(従来はページサイズは4Kbytesのみ)、36bitアドレスライン(最大64Gbytesの物理アドレス空間)などが新しくサポートされている。
内部マイクロアーキテクチャ的に見ると、Pentium Proでは、他のRISCプロセッサ的な、アウトオブオーダー実行機能を取り入れたスーパースカラーアーキテクチャを採用している(P6マイクロアーキテクチャと呼ぶ)。命令キャッシュからフェッチされたx86命令コードは、まず最初にRISCふうの単純なマイクロコードに分解され、以後の実行はこのマイクロコードをベースに行われる。分解されたマイクロコードはスーパースカラー実行コアに送られ、実行の準備が整った(リソースの準備ができた)ものから、順不同で実行が行われる。従来のPentiumでは、2つの命令が2本のパイプライン上でペアで実行されていたが、このとき片方の命令がリソースの競合などで停止した場合は、パイプライン全体がストールし(停止し)、それによってパフォーマンスが制限されていた。Pentium Proでは、各命令はリソースの競合が発生しない限り、同時に独立して実行されるようになっている。ただし、命令の発行と実行はアウトオブオーダー(順不同)であるが、命令の完了処理(リタイヤ)は、インオーダー(命令コードの並び順)で行われる。これは、書き込みの順番などを保証するためである。なお、最初にx86命令をマイクロコードに分解するオーバーヘッドやx86命令セットのペナルティなどのため、同程度のクロックで動作するスーパースカラーRISCプロセッサと比べると、1、2割程度性能が低くなる傾向がある。
Pentium Proでは、オンチップの8Kbytesのコード/データ用1次キャッシュ、レジスタリネーミング機能、高度な2レベル分岐予測機能、12段という深い実行パイプライン、ノンブロッキングのキャッシュアクセス機能(先行するキャッシュアクセスが完了しなくても、次の次のアクセス命令をオーバーラップして発行できる)、5つの実行ファンクションユニットなどを備えている。1次キャッシュはCPUダイ上にあるが、256Kbytesの2次キャッシュは、セラミックPGAのCPUパッケージ上に同梱し、高速なアクセスを実現している(ただし、2次キャッシュのアクセス速度は、1次キャッシュの半分の速度)。
発表当初のPentirum Proは、0.5μのBiCMOSプロセスで実装され、外部バスクロック66MHz、内部クロック133MHzであったが、後に200MHzまでの製品が作られた。その後は、MMX機能が追加されパッケージ形状も変更されたPentium IIや、Streaming SIMD Extension機能が追加されたPentium III、およびサーバ向けのキャッシュ機能の強化が図られたPentium II Xeon/Pentium III Xeon、128Kbytesの2次キャッシュがダイ上に集積されたCeleronなども開発されている。
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