マンスリー・レポートIntelがデスクトップPC向けプラットフォームを強化した1カ月(2002年6月号)デジタルアドバンテージ |
今回もIT業界の企業動向から、5月を振り返ってみよう。連休中の5月3日、Hewlett-PackardとCompaq Computerは無事合併を完了、7日より新生Hewlett-Packardとして業務を開始した。製品ラインアップなどについては、「解説:HPとの合併で名を捨てて実を取ったCompaq」を参照していただきたい。
また、前回のマンスリー・レポートで解説した「Hynix Semiconductorのメモリ事業の売却」は、4月30日のHynix Semiconductorの取締役会(理事会)でMicron Technologyとの覚書を否決してしまったため振り出しに戻ってしまった。5月9日には、改めて債権団が外部のコンサルタントに依頼して、新たな事業再編を行うと発表が行われており、メモリ事業の再売却についての検討が行われているものと思われる。ただし、Micron Technologyは、度重なる売却条件の変更などに嫌気して、Hynix Semiconductorとの話し合いを中止すると述べている。Hynix Semiconductorの取締役会と労働組合、韓国政府は、海外の企業への事業売却に反対する姿勢を見せており、今後は同じ韓国の半導体ベンダであるSamsung Electronicsへの売却への道を探ることになるかもしれない。とはいえ、Samsung Electronicsは、Hynix Semiconductorのメモリ事業を買収するつもりはないようなので、売却先が見つかるかどうか、先行きは不透明だ。
5月16日には、日本電気が半導体事業を分社化することを発表した。DRAM事業については、すでにエルピーダメモリ(日立製作所との合弁会社)として分離しており、今回分社化されるのはシステムLSI分野となる。「頭脳放談:第23回 正しい半導体業界再編の組み合わせ」で解説しているように、システムLSI分野は、日立製作所と三菱電機、富士通と東芝が事業統合を発表している。日本電気には、他社との事業統合を行う予定はない模様だが、半導体事業をコンピュータ/ネットワークを中心とした日本電気本体と分離、「変動性の高い半導体事業特性に適した資金調達の実施とバランスシートの構築により、ロジック半導体専業会社としてグローバルな発展を目指す」としている。つまり、当たれば利益が大きいが、一方で投資も莫大になるギャンブル性の高い半導体ビジネスを、日本電気本体と分離して早い意思決定のもとで事業を行おうということのようだ。ただ、事業がうまくいかず、外資系企業へ売却ということにならないことを願いたい。
5月30日には、日立製作所が2001年7月から休止していたLCD(液晶ディスプレイ)用ICを製造する山梨の甲府工場の稼働を再開した。一方で、セイコーエプソンは日本TIより買収した埼玉県の鳩ヶ谷工場(エプソン鳩ヶ谷)の事業を終結させることを発表している。同工場も、携帯電話向けLCD用ICを製造しており、需要の低下から事業の集約を行うということだ。半導体市場は徐々に持ち直しつつあるが、次世代プロセスへの投資を考えると、強い分野への投資の集中が避けられないところなのかもしれない。今後も半導体関連企業の再編が行われることになるだろう。
IntelからクライアントPC向けチップセットが発表
5月は、「Intel月間」とも呼べるほど、Intelからの製品発表が続いた。連休明けの5月7日には、533MHzのFSBに対応したPentium 4-2.53GHzとIntel 850Eチップセットが発表となり、5月16日にはPentium 4が採用するNetBurstアーキテクチャのCeleron-1.70GHz、5月21日にはDDR SDRAMに対応しグラフィックス機能を内蔵したIntel 845Gチップセット、という具合にデスクトップPC向け製品を立て続けに投入した。Celeron-1.7GHzとIntel 845Gの組み合わせは、10万円以下で購入可能であるため、企業に大量導入されるクライアントPCとしては最適な組み合わせとなる。コストパフォーマンスも高く、2002年後半の目玉となるだろう。
さらにIntelは、5月26日にPentium 4の大幅な値下げを発表した。対抗するように、AMDもAthlon XPを最大52%値下げしている。
動作クロック | FSB | 製造プロセス | 5月12日付け価格 | 5月26日付価格 | 値下げ率 |
Pentium 4 | |||||
2.53GHz | 533MHz | 0.13μm | 637ドル | 637ドル | − |
2.40GHz | 533MHz | 0.13μm | 562ドル | 400ドル | 29% |
2.40GHz | 400MHz | 0.13μm | 562ドル | 400ドル | 29% |
2.26GHz | 533MHz | 0.13μm | 423ドル | 241ドル | 43% |
2.20GHz | 400MHz | 0.13μm | 423ドル | 241ドル | 43% |
2A GHz | 400MHz | 0.13μm | 284ドル | 193ドル | 32% |
2GHz | 400MHz | 0.18μm | 262ドル | 193ドル | 26% |
1.90GHz | 400MHz | 0.18μm | 225ドル | 173ドル | 23% |
1.80GHz | 400MHz | 0.18μm | 193ドル | 163ドル | 16% |
1.70GHz | 400MHz | 0.18μm | 163ドル | 143ドル | 12% |
モバイルPentium 4-M | |||||
1.80GHz | 400MHz | 0.13μm | 637ドル | 348ドル | 45% |
1.70GHz | 400MHz | 0.13μm | 508ドル | 241ドル | 53% |
1.60GHz | 400MHz | 0.13μm | 401ドル | 198ドル | 51% |
1.50GHz | 400MHz | 0.13μm | 268ドル | 198ドル | 26% |
1.40GHz | 400MHz | 0.13μm | 198ドル | 198ドル | − |
モバイルPentium III-M | |||||
1.20GHz | 133MHz | 0.13μm | 401ドル | 348ドル | 13% |
1.13GHz | 133MHz | 0.13μm | 294ドル | 268ドル | 9% |
1.06GHz | 133MHz | 0.13μm | 241ドル | 198ドル | 18% |
1GHz | 133MHz | 0.13μm | 198ドル | 198ドル | − |
Intel Xeon | |||||
2.40GHz | 400MHz | 0.13μm | 615ドル | 615ドル | − |
2.20GHz | 400MHz | 0.13μm | 465ドル | 262ドル | 44% |
2A GHz | 400MHz | 0.13μm | 305ドル | 224ドル | 27% |
2GHz | 400MHz | 0.18μm | 316ドル | 256ドル | 19% |
1.80GHz | 400MHz | 0.18μm | 224ドル | 192ドル | 14% |
1.70GHz | 400MHz | 0.18μm | 224ドル | 202ドル | 10% |
1.50GHz | 400MHz | 0.18μm | 192ドル | 192ドル | − |
Intelの主なプロセッサ価格 |
モデルナンバー | 価格 |
AMD Athlon XP | |
2100+ | 224ドル |
2000+ | 193ドル |
1900+ | 172ドル |
1800+ | 160ドル |
1700+ | 140ドル |
1600+ | 130ドル |
AMD Athlon MP | |
2000+ | 224ドル |
1900+ | 214ドル |
1800+ | 192ドル |
1600+ | 154ドル |
モバイルAMD Athlon XP | |
1700+ | 235ドル |
1600+ | 192ドル |
1500+ | 175ドル |
1400+ | 150ドル |
モバイルAMD Athlon 4 | |
1600+ | 192ドル |
1500+ | 175ドル |
1.2GHz | 150ドル |
1.1GHz | 125ドル |
1GHz | 125ドル |
モバイルAMD Duron | |
1.2GHz | 120ドル |
1.1GHz | 89ドル |
1GHz | 69ドル |
AMD Duron | |
1.3.GHz | 72ドル |
1.2GHz | 68ドル |
AMDの主なプロセッサ価格 |
魅力的なサーバが登場
サーバ関連では、5月28日に発表された富士通のブレード・サーバ「PRIMERGY BX300」に注目したい。4月下旬に開催されたIDF Japan 2002 Springで参考出展されていたものだが、3Uサイズのエンクロージャ(電源ユニットなどが搭載されたケース)に20枚のブレード・サーバが搭載できるものとしては、最もハイスペックなものである。デュアルプロセッサに対応し、さらにハードディスクも2.5インチながら2台の搭載が可能など、アプリケーション・サーバとしても利用できそうな仕様となっている。現在、ブレード・サーバはどちらかというと、性能は多少低くても、3Uサイズに大量のサーバを搭載することを目標に開発されているが、富士通がこうしたハイスペックな製品を投入してきたことから、各社とも性能・機能競争に入ることが予想される。今後の各社の展開が気になるところだ。
富士通のブレード・サーバ「PRIMERGY BX300」 |
3Uサイズのエンクロージャに最大20枚のブレード・サーバが搭載可能。ブレード・サーバは、デュアルプロセッサに対応しており、2.5インチ・ハードディスクながら2台の搭載が行えるのが特徴である。 |
もう1機種、ホットプラグ対応ミラー・メモリ機能を初めて搭載したコンパックの「ProLiant DL580 G2」にも注目したい。ホットプラグ対応ミラー・メモリ機能とは、メモリ障害を起こした場合でも、サーバが稼働した状態で正常なメモリに交換可能とするものだ。ほかのコンポーネントの信頼性が向上する一方、サーバの搭載メモリ容量が大幅に増えたことなどから、相対的にメモリ関連の障害によるダウンタイムが増えてきているという。この技術は、そのダウンタイムを解消する目的で開発されたものだ。価格競争が激しいエントリ・サーバでは、ホットプラグ対応ミラー・メモリに対応するのは難しいと思われるが、ミッドレンジ以上のサーバではこうした信頼性を向上する機能が搭載されていくことになるだろう。
Pick Up Online Document――注目のオンライン・ドキュメント |
新たな挑戦-Compaqアドバンスト メモリ プロテクション ストラテジの推進 (コンパックコンピュータ 2001/03) 搭載メモリの大容量化に伴って、メモリ・エラーの発生率も上昇している。そのメモリ・エラーの発生するメカニズムや、エラー対策としてコンパックが提供しているオンライン スペア メモリ、ホットプラグ ミラー メモリ、ホットプラグRAIDメモリの仕組みや効果について解説されている。 |
オンライン・ドキュメントは「Online DOC Watcher」へ
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