第8回 読者調査結果 アットマーク・アイティ マーケティングサービス担当 |
長引く不況は、IT業界、特にハードウェア産業に大きな影響を与えている。そんな中、今後はどのようなサーバ製品/ベンダの成長が見込まれるのだろうか? System Insider フォーラムが実施した「第8回 読者調査」から、その可能性を占ってみよう。
ハードウェア導入予定:IAサーバへのシフトは加速するか?
まず、System Insider読者がかかわる情報システム内のハードウェア使用状況/導入予定を確認しておこう。主にサーバとその周辺機器について聞いた結果はグラフ1のとおりである。現在のところ、サーバでは「IAサーバ」および「UNIXサーバ」、周辺機器では「UPS(無停電電源装置)」「磁気テープ装置」「RAIDサブシステム」の使用率が高くなっている。一方、読者が「今後導入を予定/検討している」製品を見ると、「IAサーバ」のポイントの高さが目立つ。現在の使用率と比べると、今後はほかのプラットフォームからIAサーバへのシフトが、いっそう進んでいくことになりそうだ。
グラフ1 情報システム内のハードウェア使用状況/導入予定(複数回答 N=303) |
タイプ別IAサーバの導入予定:高密度集積型に注目
上記で現在使用率/導入予定率ともに高かったIAサーバについて、そのタイプ別動向を集計した結果がグラフ2だ。現在のところは「タワー型(ペデスタル型)」の使用率がトップであるが、「ラックマウント型」の普及も進んできていることが分かる。一方で今後の導入予定を見ると、ラックマウント型と並んで「ブレード・サーバ」への関心が高まっている。ブレード・サーバについては、中心顧客層と見られる通信事業者/データセンターの需要動向やコストパフォーマンスの点などから、本格的な市場立ち上がり時期は不透明だ。しかしながら、ラックマウント/ブレードのいずれにせよ、「IAサーバを高密度に集積する」スタイルのシステム構築が注目を集めているのは間違いない。
グラフ2 タイプ別IAサーバの使用状況/導入予定(複数回答 N=303) |
今後のサーバ製品/ベンダ選びの2大要件:信頼性+コスト
では、企業システムでサーバ製品/ベンダを選択する際、今後はどのような要素が重視されるのだろうか? 読者に3つまで選んでいただいたところ、「品質/信頼性」および「コストパフォーマンス」の2点に、7割以上の回答が集中する結果となった(グラフ3)。「インターネット時代のビジネスに必要な信頼性の確保と、設備投資の抑制」といった困難な課題にチャレンジする、現在のシステム管理者の状況が表れているようだ。
グラフ3 サーバ製品/ベンダ選択時の重視点(3つまでの複数回答 N=303) |
サーバ製品ベンダのイメージ:NEC/富士通
今回の調査では、上述したサーバ製品/ベンダ選択要件と同じ項目を使い、代表的なベンダのイメージを調査した。後半は、その結果を紹介していこう。
まず、国内サーバ・ベンダを代表して、NEC/富士通の2社のイメージを聞いてみた(グラフ4)。両社に共通しているのは「PDAから大型機まで、総合的に製品提供ができる」、つまり「総合力」のイメージだ。しかしグラフ3を振り返ると、今後の製品/ベンダ選択にあたって、総合力を重視する読者は2%に過ぎなかった。逆に「信頼性」「コスト」「性能」といった製品/ベンダ選択の上位項目については、両社ともに目立ったポイントを上げているとはいい難い。国内ベンダには、現在の総花的イメージを脱し、独自の競争優位性を明らかにすることが求められそうだ。
グラフ4 サーバ製品/ベンダのイメージ【NEC/富士通】(複数回答 N=303) |
サーバ製品ベンダのイメージ:日本IBM/サン/デル
次に日本IBM/サン・マイクロシステムズ/デルコンピュータの外資系3社のイメージ状況を見てみよう。グラフ5のとおり、日本IBMとサン・マイクロシステムズは、「信頼性」「性能」の2項目でともに高いポイントを獲得しており、「プロダクト力」イメージの強さが光っている。しかしほかの項目を見ると、「総合力」「Linux対応」「サービス力(コンサルティング/SI/サポートなど)」の3点で、日本IBMがサン・マイクロシステムズを大きくリードしている。サービス力とLinux対応については、グラフ3で各20%前後の読者が製品選択の要件として挙げているだけに、この3社では日本IBMが先行していることが分かる。サン・マイクロシステムズも、Linux対応のラックマウント型IAサーバを2002年に投入するなど、キャッチアップする姿勢を見せており、今後の同社の対応が注目される。
グラフ5 サーバ製品/ベンダのイメージ【日本IBM/サン・マイクロシステムズ/デルコンピュータ】(複数回答 N=303) |
一方、デルコンピュータのイメージは、今回比較したすべてのベンダをとおして極めてユニークなものとなっている。日本IBM/サン・マイクロシステムズの強みである「信頼性」「性能」といったイメージは特別高くない代わりに、「コストパフォーマンス」項目においてダントツのポイントを獲得しているからだ。機能的には成熟したIAサーバ分野で、最強のコストパフォーマンス・イメージを持っていることが、「Dell独り勝ち」と呼ばれる状況の主因であることは間違いない。
サーバ製品ベンダのイメージ:日本HP/コンパック
最後に2002年IT業界再編の目玉であった、日本HP/コンパックコンピュータ両社のイメージ差異を検証しよう。グラフ6で見られるように、「性能/信頼性の日本HP」対「コストパフォーマンスのコンパック」となり、両社は対照的な印象を持たれていたことが明らかになった。
グラフ6 サーバ製品/ベンダのイメージ【日本HP/コンパックコンピュータ】(複数回答 N=303) |
新生日本HPは、2002年11月1日に発足し、すでに動き出しているが、合併により信頼性とコストパフォーマンスを「バランスよく兼ね備えた」ベンダとなることができれば、同社は市場における理想的なポジションを得ることが可能だろう。逆に両イメージが混乱/相殺することになれば、これまでのシェアを確保し続けることも難しくなるかもしれない。System Insiderの読者に両社合併についての考えを聞いたところ、全体の60%が「合併後の製品や組織体制を見極めた上で、取引を考えたい」と慎重な姿勢を見せている。最適なイメージ形成のためにも、新生日本HPの方向性を明確にするメッセージの提示を期待したい。
調査概要 | |
調査方法
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System InsiderフォーラムからリンクしたWebアンケート |
調査期間
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2002年11月5日〜11月29日 |
有効回答数
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381件(うちハードウェア導入/管理者303件を集計) |
関連記事 | |
Dellはいつまで勝ち続けるのか?(2002年12月号) | |
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「System Insider 資料」 |
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