元麻布春男の焦点

2002年に登場する6種類のIntel製チップセットを予想する

元麻布春男
2002/04/26


 

キーノート・スピーチのトム・マクドナルド氏
IBM製のMcKinley搭載サーバのデモを交えながら、Intelの目指すエンタープライズ・コンピューティングの世界について講演した。

 2002年4月16日から3日間、千葉県浦安市の舞浜でインテル主催のIDF Japanが開催された。前回(2001年秋)は、テロ事件の影響で米国からのスピーカーが来日できず、寂しいものとなったが、今回はその分を取り戻すかのように、多くのスピーカーが来日し、力の入ったものとなった。こうした大規模なイベントは、日頃接することの少ないスピーカーに直接話を聞く絶好の機会となる。ここではエンタープライズ・プラットフォーム事業本部アドバンスド・コンポーネント事業部長であるトム・マクドナルド(Tom Macdonald)氏から聞いた内容を中心に、Intelのサーバ/ワークステーション向けチップセットについて取り上げたい。

 2001年はサーバ向けチップセットの遅れからIntel Xeon MPが投入できなかったIntelだが、その遅れを取り戻すかのように2002年は多くのチップセットの投入を予定している。チップセットの動向は、サーバのロードマップに大きく影響を与えるだけに、常にチェックしておきたいものだ。

サーバの分化について
トム・マクドナルド氏のキーノート・スピーチで語られたサーバの分化についてのスライド。このようにこれまでのサーバから用途によって分化していくという。

名称ルールが変更されるサーバ向けチップセット

 2002年2月25日、米国で開催されたIDF Spring 2002の初日に、Intelはデュアルプロセッサ・サーバ向けのIntel Xeonプロセッサを発表した。Intel Xeon自体は、すでにワークステーション向けとして発表済みだが、サーバ・アプリケーション向けのバリデーション(検証)が済んで、サーバ用プロセッサとして正式発表となった。また、サーバ向けIntel Xeonと同時に、対応するチップセットとしてIntel E7500も発表された。これまでIntelのチップセットは82860といった5ケタの数字(あるいは略称として下Intel+3ケタの数字)を名前に用いていたが、ここでネーミング・ルールが変更されたわけだ。

 この名称変更の理由は、「サーバ用途などエンタープライズ向けのチップセットには、それに相応しい名称を用いたい」ということ。Intel E7500の「E」は、「Enterprise」クラスのサーバ向けに設計され、バリデーションが行われたチップセット、ということらしい。今後リリースされるサーバ向けのチップセットは、このネーミングに準じるということだから、McKinley対応のIntel 870(後述)と現在呼ばれているチップセットも、正式発表時にはEで始まる4ケタの数字に正式名称が改められるハズだ。なお、こうした名称変更が、デスクトップPC向けのチップセットについても行う予定があるのか、デスクトップ・プラットフォーム事業本部長であるウィリアム・スー(William Siu)副社長にもたずねてみたが、その予定はないとのことであった。どうやらチップセットの名称変更は、エンタープライズ・プラットフォーム事業本部が扱うチップセットだけが対象のようである。

Intel E7500の位置付け

 さて、このところIntelが自らサーバ用に提供するチップセットは、Pentium III Xeonの8ウェイ構成をサポートしたProfusionや、Itanium向けのIntel 460GXなど、ハイエンドに偏っており、数量の出るボリューム・サーバ向けのチップセットはサードパーティに依存していた。Intel自身が販売するサーバ・ボード(サーバ向けマザーボード)もServerWorks(Broadcomのチップセット部門)製チップセットを採用していたし、PCベンダの中にはVIA Technologiesなどのチップセットを採用する例も見られた。そういう意味でIntel Xeonに対応したIntel E7500は、Intelにとって久しぶりのボリューム・サーバ向けのチップセットということになり、当然、マーケティングにも力が入る。

 となると、逆にこれまで共存してきたサードパーティ、特にServerWorksとの関係が気になるところだ。競合製品をリリースするのだから、ServerWorksが好ましく思っているわけはないのだが、サーバ市場は2社がチップセットを供給するくらいの規模はある、というのがIntelの基本的なスタンスらしい。

ServerWorks製のGrand Champion SL搭載のマザーボード
ServerWorksはGrand Championシリーズにシングル・チャネルのメモリ・バスしか持たないエントリ・サーバ向けのチップセット「Grand Champion SL」を搭載したマザーボードをIDFの会場に展示していた。担当者によれば「4月15日に発表した」というものの、同社のホームページには一切情報がない。

 Intel Xeon/Intel E7500の発表に際し、Intelは向こう1年間に6種類のエンタープライズ向けチップセットをリリースする計画を明らかにしたが、これでもすべての市場セグメントをカバーすることはできない。例えば、Intel Xeon MPの4ウェイ構成に対応したチップセットは、6種類の中には含まれておらず、このセグメントではServerWorksが引き続き主要なチップセットベンダであり続ける、ということであった(1年以上先には計画があるようだが)。実際、展示会場のServerWorks担当者に話を聞いたところでも、「Grand Champion(Intel Xeon向けチップセット)とIntel E7500では機能が異なるので共存可能だ」と述べていた。

2002年に登場する6種類のチップセット

 さて、Intelが2002年にリリースする6種類のチップセットだが、1つがIntel E7500であることはすでに分かっている。現時点でIntel E7500が対応するIntel XeonのFSBは400MHzだが、間もなくデスクトップPC向けのPentium 4のFSBが533MHzに引き上げられるといわれている。ならば、Intel XeonのFSBも引き上げられないハズがない。Intel E7500がすでにこの引き上げられたFSBに対応していない限り、新しいFSBに対応したIntel E7500が必要になる。これを2つ目と数えると、残りはあと4つだ。

 夏ごろに登場するといわれている開発コード名「McKinley(マッキンリー)」で呼ばれる第2世代のItanium用にも、新たなチップセットとしてIntel 870(上述のように正式名称は変更されるものと思われる)が提供されることは、2月の段階で公表されている。Intel 870は、いわゆるノースブリッジに相当するSNC(Scalable Node Controller)と呼ばれるチップと、サウスブリッジに相当するI/O Hubの間をScalability Port(SP)と呼ばれる40bit幅のインターフェイスで接続する。SNCにI/O Hubを直結した最小構成で、4ウェイのマルチプロセッサをサポートしているが、SNCとI/O Hubの間にスイッチ(SPS)を介することで最大16プロセッサ構成のサポートが可能だ。このスイッチを含んだ構成と含まない構成を2つに数えると、残るはあと2つ、ということになる(Intel 870の詳細は「ニュース解説:エンタープライズ重視のIntelを示したIDF Spring 2002 2. サーバ向けプロセッサの動向」を参照)。

 なお、PCベンダの中にはSNCを用いた32プロセッサ構成のサーバを企画しているところがあるようだ。となると、上の最大16プロセッサ構成という制約は、SPSによるものと考えるべきなのかもしれない。またSPはIntel独自の技術で、詳細について公開しないとしているが、32プロセッサ構成のサーバの例からいって、絶対にライセンスしない、というわけでもないようだ(ただ極めて限られたOEMに限定されるのだろう)。SPは、PCI Express(3GIO)やInfiniBandが登場したあとも、マルチプロセッサ用のインターフェイスとして、使われ続けるということであった(HubLinkは恐らくPCI Expressによって置き換えられる)。

 いよいよ残り2つとなったが、どうやらIntelはIntel Xeonに対応したチップセットを準備しているようだ。1つはシングルプロセッサ対応、もう1つがデュアルプロセッサ対応で、後者の開発コード名は「Placer(プレイサー)」という。いずれもDDR SDRAMメモリとAGP 8xに対応したワークステーション向けチップセットだが、64bit PCIやPCI-Xのサポートがある点がデスクトップPC向けとは異なる。このチップセットの登場で、デスクトップ、モバイル、サーバ、ワークステーションの全エリアでDDR SDRAMメモリ対応が完了すると同時に、以上の全エリアに対してNetBurstマイクロアーキテクチャが主流の座につく。

 残るのは現在Pentium III-Sや低電圧版Pentium IIIが使われている高密度サーバだが、この後継がBaniasになることはすでに明らかにされている。対応するチップセットが気になるところだが、最も開発の進んでいるOdem(開発コード名:オーデム)は、ECCメモリをサポートしていない、ということであった。現行のサーバ・ボードに、ECCメモリをサポートしていないIntel 815ベースのものがあるとはいえ、Odemはサーバ用に適したチップセットとはいえない。公表されていないチップセットがあることはまず間違いないだろう。今回取り上げた6つのチップセットにしても、無理やり辻褄を合わせたところもある。引き続き注目していく必要がありそうだ。

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攻撃的なIntelのサーバ向けプロセッサ・ロードマップ
さまざまな新技術が注ぎ込まれたミッドレンジIAサーバ「eserver xSeries 360」
エンタープライズ重視のIntelを示したIDF Spring 2002 2. サーバ向けプロセッサの動向

  関連リンク
Intel Xeon向けチップセット「Intel E7500」の製品情報ページENGLISH
「Grand Champion」などのサーバ/ワークステーション向けチップセットの製品情報ページENGLISH

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