プロトタイプ機能を備えた“本物”のデザイナーのツールExpression Blend 3+SketchFlowを使ってみた

プロトタイプ機能を備えた
“本物”のデザイナーのツール


Expression Blend 3+SketchFlowを使ってみた

インフラジスティックス・ジャパン株式会社
デベロッパー エバンジェリスト 山田 達也
2009/7/27

SketchFlowを使ってみよう

 SketchFlowでプロトタイプを作るときは、[New Project]のテンプレートから[Silverlight 3 SketchFlow Application]を選択してください(図11)。

図11 [Silverlight 3 SketchFlow Application]を選択
図11 [Silverlight 3 SketchFlow Application]を選択

 プロジェクトが作成されると、ワークスペース内に[SketchFlow Map]タブが表示されていると思います。もし見当たらない場合は、[Window]メニューから[SketchFlow Map]を有効にするか、ショートカット([Shift]+[F12]キー)を利用して表示してください。

 初期状態では、「Screen1」という空の画面が追加されおり、ここにマウスを重ねると、図12のような機能ショートカットが表示されると思います。基本的に、紙芝居に必要な画面の追加と関連性は、この[SketchFlow Map]上で編集できます。

図 12 [SketchFlow Map]の機能ショートカットで画面間遷移をデザイン
図 12 [SketchFlow Map]の機能ショートカットで画面間遷移をデザイン(画像をクリックすると、拡大します)

 ここでは、まずログイン画面を作成するイメージで、Screen1の名前を「ログイン画面」に変更します。さらに[アートボード]上で、ログイン画面に必要な画面要素を追加します。これまでSilverlightアプリケーションを作成するときは、TextBlockやButtonといったユーザーコントロールを追加していましたが、SketchFlowではよりラフ・スケッチ感のある「スケッチスタイル」を追加できます。

図13 [Assets]パネルの[SketchStyles]一覧
図13 [Assets]パネルの[SketchStyles]一覧

 [Assets]パネルで[SketchStyles]を選択し、ここからログイン画面に必要な要素であるボタンやテキストボックスのスケッチ要素を[アートボード]に追加してみましょう。

図14 [アートボード]上にスケッチスタイルを追加してログイン画面を作成する
図14 [アートボード]上にスケッチスタイルを追加してログイン画面を作成する(画像をクリックすると、拡大します)

 このように、[SketchFlow Map]を基に各画面のスケッチを行って紙芝居を組み立てていきます。複数の画面間で共通する画面要素は、「Component Screen」として作成することで共有もできます。図15は、よくありがちなECサイトのスケッチ例ですが、画面最上部のグローバルナビゲーションに当たる部分を「共通ナビゲーション」として独立し、複数画面で使用しています。

図15 作成中のECサイトっぽいSkecthFlow
図15 作成中のECサイトっぽいSkecthFlow(画像をクリックすると、拡大します)

Expression Blend 3はサンプルデータを手軽に作成

 もう1つ、プロトタイプ作成のうえで便利な機能を紹介します。Expression Blend 3では、画面に表示するサンプルデータを手軽に作成できるようになっています。サンプルデータを定義するときは、ワークスペース上の[Data]タブを使用し、新しくサンプルデータを作成する[Define New Sample Data]を選択してサンプルデータ用のスキーマを作成します。

図16 サンプルデータを作成
図16 サンプルデータを作成

 ここから各列のプロパティを指定するだけで、文字列や数値、イメージなどの用意されたデフォルトデータを適用できます(図17)。もちろん、よりリアルなサンプルデータを表示するためにサンプルデータ自体の編集も可能です。

図17 サンプルデータのスキーマを編集
図17 サンプルデータのスキーマを編集

 サンプルデータのスキーマが定義できたら、後は画面上のリストボックスやデータグリッドなどに直接ドラッグ&ドロップすることでバインドできます。

図17 サンプルデータのスキーマを編集
図18 作成したサンプルデータスキーマを画面要素にバインド(画像をクリックすると、拡大します)

作成したSketchFlowを動かす

 作成したSketchFlowは「SketchFlow Player」という形式のSliverlightアプリケーション上で実際に動かせます。

図19 「SketchFlow Player」で実行。直接コメントやフィードバックを取り込むことも
図19 「SketchFlow Player」で実行。直接コメントやフィードバックを取り込むことも(画像をクリックすると、拡大します)

 SketchFlow Playerでは、各画面のナビゲーションやアニメーションを確認できるほか、得たフィードバックを直接書き込んでExpression Blendのプロジェクトに取り込むこともできます。後は、フィードバックを基にスケッチを改良して効果的なプロトタイプを作成し、そのまま実際のSilverlightアプリケーションとして肉付けできます。

Expression Blend 3は“本物”のデザイナー向けツール

 ざっとExpression Blend 3の新機能を紹介してきましたが、従来「デザイナー向けのツール」と考えられていたExpression Blendのイメージがかなり変わったかと思います。

 そもそもシステム開発において「デザイナー」という言葉は広くとらえられがちで、日本ではユーザーインターフェイスアニメーションといった「見た目」の部分のスタイリングを担当する人、と見なすことが多いと思いますが、欧米では「デザイン=設計」という語源に忠実に、システム自体の設計を担当する人ととらえるのが主流です。

 スタイリング作業における機能と効率性の向上に加え、SketchFlowなどの効果的なプロトタイピング・ツールとしても活躍するこのExpression Blend 3は、本当の意味での「デザイナー」の幅広いニーズに応えるツールとして大きく進化したといえるのではないでしょうか。

@IT関連記事

Silverlightコントロールの「デザイン力」
Expression Blendで体験しよう 
Microsoft Expression Blend 2.5を使ったSilverlightコントロールのデザイン方法を学習しながら、その「デザイン力」を実感してみよう
リッチクライアント & 帳票」フ ォーラム 2008/7/24
Expression Blend 2でTwitterアプリのスタイル化
連載:ScottGu氏のブログより
 Silverlight 2で作成されたTwitter用フロントエンドを取り上げ、コードに手を加えることなくExpression Blend 2により外観を変更する方法を紹介
Insider.NET」フォーラム 2008/11/21
Vista時代のWindowsアプリ・デザイン・ツール
特集:Expression Blendで始めるWPFアプリ(前半)
 Vistaに搭載されているWPFにより、Windowsアプリケーションが大きく変わる。その設計ツールがExpression Blendだ
Insider.NET」フォーラム 2007/3/30
.NETを知らない人でも分かるSilverlight入門
「マイクロソフトの技術は.NETを知らないと学習できないのでは?」という読者にこそ読んでもらいたい、リッチクライアント技術Silverlightの入門連載。 もちろん、知っている人も大歓迎!
FlexとSilverlightで同じアプリを作って比較してみた
結局、RIAはどれを使うべきなのか?(最終回) 業務用で定番のマスタメンテナンスの簡単なアプリを作成。RIA技術を比較検証する際の1つの手段として参考にしてほしい
リッチクライアント & 帳票」フ ォーラム 2009/2/24
Silverlight vs. jQuery+ASP.NET AJAX
VB研公開ゼミ:テクノロジーバトル 開発者の選択(1)
 2大技術をバトル形式で議論するセミナーの議事録。RIAの大本命「Silverlight」と定評のある「Ajax」の対決結果とは?
Insider.NET」フォーラム 2009/7/1

プロフィール
山田 達也(やまだ たつや)(Blog

インフラジスティックス・ジャパンでテクニカルエバンジェリストとデベロッパー・サポートエンジニアを兼任し、主にWindows FormsとSilverlightを担当している。
趣味はラーメン屋めぐりと温泉旅行で、各地で開催しているインフラジスティックスの無料セミナー「DevDays」と「アカデミア」の全国行脚も楽しみの1つ。イベントの最新情報はこちらをチェック!

3/3  

 INDEX
Expression Blend 3+SketchFlowを使ってみた
プロトタイプ機能を備えた“本物”のデザイナーのツール
  Page1
Silverlight 3とExpression Blend 3の正式版がリリース
Expression Blend 3評価版をインストール
  Page2
Expression Blend 3の主な新機能6つ
プロトタイプ開発を促進するSketchFlowとは
Page3
Expression Blend 3は“本物”のデザイナー向けツール


「デザインハック」コーナーへ



HTML5 + UX フォーラム 新着記事
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)

注目のテーマ

デザインハック 記事ランキング

本日 月間