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第3回 スゴイFlash地図マッシュアップとRIAの御三家

須賀正明
ベンチャーキャピタリスト
2007/6/5


ついにそろい踏みしたRIAの御三家。時代を制するのは果たしてどこなのか!? さらに、Flashを使った地図マッシュアップをいくつか紹介する

 地図をベースにしたFlashマッシュアップはこんなにある

 今回はまず、Flashの表現力を生かした地図をベースにしたFlashマッシュアップアプリケーションを紹介していきます。実は、AjaxのようにXMLやSOAPを使った非同期のデータ通信はFlashの得意技でもあります。

 Yahoo、Diggや先日ActionScript APIを公開開始したMapQuestなど、Flash用APIを公開しているウェブサービスも続々登場し、さらに容易にさまざまなデータをマッシュアップできるようになってきました。

FlashでもTwitterを使ったマッシュアップ - Twittervision 3D


Twittervision 3D

 世界中から更新されているTwitterを3Dの地球儀上に表示してくれるFlashアプリケーションです。時間帯によっては、日本からのTwitterが多いが、時々ベネズエラとか南アフリカからのTwitterもあり、見ていて飽きません。地球儀が回転する加速度など芸も細かいです。

 また、Flickrを使った同じコンセプトのサイトにFlickrvision 3Dがあり、Twitter APIから投稿者の緯度と経度、都市を引き出しマッピングしています。Twitterには、ActionScript 2.0、ActionScript 3.0用のライブラリも用意されていて、cellyのようなFlashアプリケーションの開発が可能です。

CO2削減問題に肌で感じられる - Breathing Earth


Breathing Earth

 世界各国の二酸化炭素の排出量、死亡率、出生率のデータを基に、年間のCO2の排出量をシミュレーションしているFlashアプリケーションです。国の上にマウスオーバーすると、1000トンのCO2を排出するのに要した時間や人1人が出生/死亡する時間のデータが表示されます。

GPSでリアルタイムにコースを表示 - The Amgen Tour of California

 The Amgen Tour of Californiaという自転車レースの模様を中継するアプリケーションです。すでにレース自体は終了してしまいましたが、それでも取り上げるのに値するFlex/Flashアプリケーションだと思いました。Adobeが開発しているだけあって気合の入れ方は相当です。

The Amgen Tour of California

 自転車に取り付けられたGPSで各選手がどこを走っているかがリアルタイムにトラッキングされるだけでなく、Yahoo! Mapsの衛星写真を使ったコース上に、各選手の位置が表示されます。Flickrにアップされている写真(GPS付きのカメラで撮影された写真)も撮影された位置にどんぴしゃりとオーバーレイされます。レース開催日程中は、Flash Media Serverを使って、アプリケーションの中でライブビデオも配信されていました。

ニューヨークの映画ロケ地を紹介 - New York City Mayor's Office of Film, Theatre & Broadcasting - 40th Anniversary Map

 映画やテレビの撮影のロケ地として使われることの多いニューヨーク市には、映画、劇場、放送を担当する市長執務室があります。その発足40周年を記念して作られたFlashアプリケーションを紹介しましょう。

New York City Mayor's Office of Film, Theatre & Broadcasting - 40th Anniversary Map

 ニューヨーク市で撮影されたロケ地のデータを作品タイトル、監督、シーンのタイプなどからナビゲーションできるインターフェイスを提供しています。撮影に使われたロケ地のマーカーには、実際にニューヨークの風景が使われたシーンのイメージが見られます。地図データのAPIはYahoo! Mapsとなっています。

 こんなに数多く映画の撮影に使われている魅力的な街ニューヨークを、あらためて市民と共有することによって、街へのロイヤリティを高めるアプリケーションといえるでしょう。

日本のFlash地図マッシュアップもスゴイ- スゴイ地図

 北米の新しい街のようにシンプルな東西、南北に走っている道ばかりではない日本では、地図情報によるデータの提供は非常に有効性が高いはずです。カーナビに始まり、乗り換え案内、Navitime、EZナビウォークなど数々のアプリケーションがリリースされていることからも地図アプリケーションの有効性は明らかです。

 その中でも、昨年9月にリクルートからリリースされた「スゴイ地図」は「ドコイク?」と連携させて地図上に店舗情報を表示するFlashアプリケーションです。

スゴイ地図

 ドラッグ&ドロップでスクロールできる地図、場所、街や目的、テーマからの検索機能、気に入った店をブックマークしておく「とりあえずキープ」機能など、情報発信だけでなく、インタラクティブ性を付加している“スゴイ”アプリケーションです。

 実は、RIAはサーバサイドでのメリットも大きい

 非同期データ通信を実現し、ページのリロードを削減することで、アプリケーションの体感パフォーマンスを向上したRIAにおいては、クライアントサイドのUI回りだけでなく、実はサーバサイドでのメリットも大きいと思います。リクエストごとにHTMLページを生成しないことで、サーバの処理能力、ネットワークの帯域、クライアントサイドでのブラウザのレンダリングタイムを短縮することも可能です。

AjaxとFlexはどっちがはやいのか?- Census - RIA Data Loading Benchmarks

 実際、非同期の通信を実現するテクノロジーはAjaxやFlash/Flexを使うにしても、さまざまな組み合わせが考えられますが、一般的に、どのくらいパフォーマンスが出るのかよく分からないことが多いものです。そこで、Ajax、Flash/Flexをクライアントサイド、サーバサイド(プロトコル)にXML、JSON、SOAP、AMFなどを使って同じデータを扱う際のパフォーマンスの比較をまとめているサイト、Census - RIA Data Loading Benchmarksをお勧めします。

Census - RIA Data Loading Benchmarks

 このサイトでは、Ajax、FlexとサーバサイドAPIの組み合わせでサーバの実行速度、データ通信時間、パース時間、レンダリング時間、ネットワーク帯域が棒グラフで表示されそれぞれの組み合わせで比較できます。

 御三家そろい踏みで加速するか、RIA

 さて、ここからはRIA全般に関する最近の動きを紹介しましょう。

 5月は何かとRIA(リッチインターネットアプリケーション)関連のテクノロジーの動きが活発な1カ月でした。Adobe Apollo、Microsoft Silverlightの発表があった4月以降、Adobe Media Playerの発表、Flex SDKのオープンソース化に加え、“Write once, run anywhere”の元祖、Sun MicrosystemsからもRIAのプラットフォームであるJavaFXファミリーの発表がありました。

 JavaFX Scriptと呼ばれるコンテンツ制作者向け開発言語とその実行環境(デスクトップ、モバイル)のアナウンスがあり、これでメジャーなRIAテクノロジーでMicrosoft、Adobe、Sun Microsystemsと役者がそろった感じです。

デザイナーに向けてJavaの敷居を下げる

 JavaOneでのエクゼクティブバイスプレジデントRich Green氏の発表(Sun Launches JavaFX)では、FX Scriptによってコンテンツ制作者でもJavaのプラットフォームを使ってリッチなコンテンツを開発、デリバリー可能であるとうたっています。デザイナーにとってJavaの敷居は低いとはいえず、それを理解したSun MicrosystemsがJavaFX Scriptというスクリプティング環境をリリースする運びになったということのようです。

 RIA開発、実行環境では、後発組となるJavaFXの今後の見どころは、SwingやJava 2Dを利用するJavaFX Scriptがコンテンツ制作者にどう受け入れられるのか、JavaFX Scriptがコンテンツ開発者、UIデザイナーに使われる言語になるかどうか、という点にあると感じました。今後リリースされるJavaFX Scriptのビジュアルツールに期待が寄せられるところです。

JavaFXの狙いとは?

 しかし、JavaFX Scriptは前述の2つのプラットフォームと比べると、デスクトップでの実行環境となるJREの普及率、起動パフォーマンス、インストールの利便性という点で、自分の両親が快適に使用している場面を想像し難いのは、否定できません。

 例えば、YouTubeはFlashを採用したことで、ご存じのように誰でも見られるビデオサイトになりました。もし、Silverlightが当時存在していて、Flashの代わりにYouTubeに採用されていたとしても、同じように爆発的に普及していたと想像できます。しかし、YouTubeがJREを採用していたとしたら、ここまで普及していたかどうかは疑問が残ります。

 また、Silverlightが発表されたときには、CBS、Brightcove、Netflix、Eyeblaster、メジャーリーグベースボールなどのビデオ系の配信サイトやビデオコンテンツホルダーがこぞってサポートを表明しましたが、JavaFXのリリースにはそういうアナウンスがなかったのが、ちょっと残念です。

 JavaFXのアナウンスの裏には、Flashキラー、Silverlightキラーとなるよりは、エンタープライズを中心に600万人いるといわれているJava開発者が、RIAのトレンドに乗ってSilverlightやFlexへくら替えしないようにという配慮が伝わってきます。Javaの世界でも、RIAのロードマップを見せることでJava開発者のJava言語へのコミットメントを維持する狙いもあるのではないでしょうか。

RIAはEnterprise2.0へ適用される

 いずれにしても、Ajaxによって切り開かれたRIAは、これで確実にエンタープライズの世界にも浸透していくでしょう。Ajaxの功績はRIA、非同期のデータ通信、ページ遷移のないWebアプリケーションの世界をより多くのユーザーに体験してもらうことができたということでしょう。

 Web2.0、Ajaxというキーワードで始まった次世代へ向けてのインターネットの進化は、HTML、CSS、JavaScriptという最初の10年を支えたテクノロジーから、XAML、MXML、JavaFX Scriptなどの登場によって、コンシューマからエンタープライズの世界へとシフトしていきそうです。

 とはいえ、Flex、Silverlight、JavaFXも登場したばかりです。どのテクノロジーでもキラーアプリケーションが登場していないことを考えると、今後は売れるキラーアプリケーションがどこに登場するかを各社が模索する時代がしばらく続いていくのではないでしょうか。

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