ユーザビリティのヒント(2)

「メールが送信されました」
伝えるのなら、控えめに
「Yahoo!メール vs Gmail」

ソシオメディア 上野 学

2006/7/28

 可逆的な操作に対していちいち確認を取らない

 「本当に○○してもよろしいですか?」という問い掛けのダイアログは、ユーザーの操作ミスから大切なデータを守るために編み出された画期的なインタラクションデザインだと思います。しかしあらゆる操作に対してこういった確認ダイアログが表示されると、ユーザーはそのたびに「はい」なり「OK」なりのボタンをクリックしなければならず、どんどん手間が増えてしまいます。「ユーザーが間違えても間違えなくてもエラーは回避せよ」にも書いたとおり、ユーザーは常に正しい操作をしようとしているわけですから、エラーが起きるというのは基本的にシステム側に改善の余地があることを意味します。確認ダイアログさえ出しておけば責任を免れるわけではありませんので、これを免罪符のようにとらえて多用するのは考えものです。

 特に不要といえる確認ダイアログは、可逆的な操作に対するものです。例えば、デスクトップにあるファイルをごみ箱にドロップすると「ファイルをごみ箱に移動してもよろしいですか?」という確認ダイアログが表示されることがありますが、そもそもデスクトップのごみ箱は「後で再び取り出せる」ために存在するわけですから、わざわざここで確認する必要はないわけです。

 同様に、自分のユーザーアカウントを編集するような画面で、変更した内容をサブミットしようとすると「本当にこの内容で保存しますか?」といったことを聞かれることがありますが、もし後で再編集できるのであれば、これは可逆的な操作といえますから、いちいち確認する必要はありません。

 一方、確認があった方がよいのは、データの恒久的な削除、決済の発生、多人数にメールを一斉送信するといった、不可逆的な操作かつその操作がミスだった場合のネガティブインパクトが非常に大きい場合です。

 しかし、ユーザーのある操作が「意図しないミス」である可能性は、「意図したもの」であるよりも低いと考えられるため、ユーザーは多くの場合、確認ダイアログにおいて「はい、本当に○○します」という回答をすることになります。すると確認ダイアログで「OK」や「はい」のボタンを押すことは習慣化され、半ば自動化された動作になります。人にとって、一度自動化された動作を意図的に止めることは難しいため、結局、肝心なときに確認ダイアログで「間違った回答をしてしまう」恐れが出てきます。つまり、確認ダイアログはエラー回避の万能薬ではないということをよく認識しておく必要があります。

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 INDEX

ユーザビリティのヒント(2) 
  Page1<できるだけウィンドウオブジェクトを制御しない>
  Page2<正常であることを報告するためにダイアログを使わない>
Page3<可逆的な操作に対していちいち確認を取らない>
  Page4<コモンケースにいちいち確認を取らない>
  Page5<フリップフロップを使わない>
  Page6<基本コントロールの振る舞いを変えない>

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